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2021/1/22 20:00

チップからチップが生えてる…!? 次世代ラインマーカーの刺客、サンスター文具「Ninipie(ニニピー)」の仕組みと使い心地をレビュー

もしかすると今、ラインマーカーが新たなステージへ進もうとしているタイミングなのではないだろうか。ちょっと古い言い方をするなら、ラインマーカー2.0の時代が来てるっぽい、と。

 

そもそもラインマーカー(蛍光マーカー)というのは、ノートや書類の「ここを目立たせたい」という部分を、目立つカラーでマーキングするためのもの。つまり、ひとつの情報をその他大勢の中に埋没させずにピン留めする、というのが最大の機能だ。

 

これは結構すごい発明だと思うのだが……欠点もいくつかあるように思う。

 

まず、使いすぎがNG。紙面に何か所もマーキングを行うと、目立たせるはずの部分が、結果的に“その他大勢”になってしまうということ。そしてもうひとつが、マーキングした以外の部分の重要度が極端に下がってしまうこと。見る側が、マーキングされた箇所だけチェックすればいい、という感覚に陥って、他に注意を払えなくなるのである。

 

そこで、そういった欠点を克服しようと作られているのが、いわゆる“新世代”のラインマーカーである、という話だ。とにかく目立つ蛍光色を塗ってたらええねん、という時代は、そろそろ終わりに近づいているのかもしれないぞ。

 

新世代ラインマーカーは情報をコントロールするツールだ!

新世代ラインマーカーとしてまず挙げられるのが、2020年に発売されたコクヨ「マークタス」シリーズである。

 

「マークタス 2トーンカラーマーカー」は、1本のペン先が同じ色の濃/淡に分かれており、マーキングを塗り分けることができる。これにより、「すごく目立つ」と「ちょっと目立つ」を階調で仕分けることができるのだ。

 

目立つ度合いが調整できれば、マーキング部がその他大勢に埋没しにくくなるのは当然だろう。

↑新世代ラインマーカーの先駆け、コクヨ「マークタス」シリーズの「2ウェイカラーマーカー」(左)と「2トーンカラーマーカー」(右)

 

一方、同シリーズの「マークタス 2ウェイカラーマーカー」は、ラインマーカーと細字カラーペンが一体化したもの。

 

ラインによるマーキングと、それよりも目立つ濃色の文字情報(はっきりメモタイプ)、もしくはグレーで軽く目につく程度の補足情報(ひかえめメモ)を書き分けることで、マーキング部以外にも重要度をコントロールした情報を付与できるわけだ。

 

ラインマーカーの新ジャンル誕生!“色”の濃淡で書類を整理するコクヨの2Way「マークタス」
https://getnavi.jp/stationery/544894/

 

これらは非常に画期的なアイデアで、確かに優れた製品と言えるのだが……、残念ながら、こういった次世代ラインマーカーに取り組んでいるのは、現時点でコクヨだけ。他に挑戦するメーカーがなければ、もしかしたらこの流れは立ち消えしてしまうかも、と思っていたのだ。

 

しかし、出てきましたよ、第2の次世代型ラインマーカー! それが、サンスター文具から発売されたペン&マーカー「Ninipie」(ニニピー)である。

サンスター文具
Ninipie(ニニピー)
各200円(税別)

 

↑ラインマーカーのマーキング+カラーペンの文字情報で、紙面がまとめやすい

 

一見するとなんの変哲もないラインマーカーのようで、なによりユニークなのは、そのペン先チップ。

 

なんとラインマーカー用のチップとニードルタイプのカラーペンチップが並んで突き出している。しかも、ニードルがやや斜めに出ているという、恐ろしく独特なスタイルだ。

 

ラインマーカーとして使うときはマーカー用チップを下向けにして、スッと引ける。ペンとして使うなら、くるりと180°回転させればOK。斜めニードルのおかげでマーカーチップと干渉することなく、書き分けができるという仕組みである。

↑初見だと、まず間違いなくギョッとするペン&マーカーチップ

 

ラインナップは、「ライトピンク×ピンク」「ライトイエロー×イエロー」「ライトブルー×ブルー」「ライトグレー×ブラック」「ライトグリーン×ピーチピンク」「ライトバイオレット×ネイビー」の6種類。ライト○○となっている方がラインマーカー、もう片方がカラーペンのインク色を表している。

 

マーカーの方が淡いので、カラーペンで書いた上から重ねてマーキング、という使い方も可能だ。

↑ラインマーカーは、全体的に発色が淡めでアッサリとした印象。ペンを目立たせるための調整か

 

ピンク・イエロー・ブルー・グレーはマーカーとペンが同系色なのに対して、グリーンとバイオレットは別のカラーペンになっている。異なるカラーを1本に搭載した理由は不明だが、これは重ねてマーキングした際の読みやすさを考えてのことだろうか?

 

特にバイオレット用のネイビーは、そのままでも、ラインと重ねても視認性が高く、読みやすい。もちろん地の文字色(黒)とも違う色なので差別化しやすく、情報を追記するのにもオススメだ。

 

↑軸から分解してみた図。ペンとマーカー、それぞれ別の中綿からインクが供給されていることが分かる

 

つまり、方向性としては「マークタス 2ウェイカラーマーカー」と同じで、重要度をコントロールしつつ、情報付与ができるマーカーとして作られているようだ。しかも「2ウェイカラーマーカー」は、マーカーとペンで書き分けるのに持ち替えが必要だが、先述の通り「Ninipie」は180°回転させるだけ。

 

ということは、物理的な機能で言えば「マークタス 2トーンカラーマーカー」の分割チップと同様ということになる。

 

うーん、要するに「いいとこ取りしたフォロワー」ってことかもしれないが、言い方を変えれば「後発の強みでいろいろやってきた」とも言える。

 

↑Ninipieとマークタスの比較。マークタスの「細太の書き分け」「持ち替え不要で濃淡の書き分け」機能が合体すると、Ninipieになる

 

ただ、ペンで書く際にマーカーチップが視界に重なってしまうのは、いささか問題のような気がする。

 

勘の鋭い人なら、チップの写真を見た時点で気付いただろうが、その通り。マーカーのせいでペン先がどこにあるかよく見えず、かなり書きづらいのだ。強めに筆圧をかけて書いていると、ペン先チップを中心にペン軸が傾いてくるし。

↑カラーペンでの筆記を自分視点(右)で見るとこんな感じ。ペン先が見えず書きづらい!

 

本当に正直な話をすれば、現時点ではいろいろと使いづらい部分もあるマーカー、と言わざるを得ない。とはいえ、情報コントロールツールとしての機能は間違いないし、使いこなせばノートの整理などにかなり役立つ気もするのだ。なにより、ラインマーカーの最前線はこんなことになってるぞ、というのを体感して欲しい。

 

さすがに、万人に向けてオススメはしづらいけれど、文房具好きなら一度は触れておくべきアイテムでは? と思う次第だ。

 

 

「きだてたく文房具レビュー」 バックナンバー
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