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2019/1/26 18:00

和歌山の日本最短のローカル私鉄「紀州鉄道」―― つい応援したくなる弱小路線の旅

 

【紀州鉄道の車両1】独特の乗り心地が印象的だったキテツ1形

紀州鉄道は車両を新製する余裕はない。他社で使われなくなった車両を譲り受けて使ってきた。過去に走っていた車両をまず見ていこう。いずれも保存されているので、今も沿線を訪れれば気軽にその姿を見ることができる。

 

◇キハ600形

↑1975年から2009年まで活躍したキハ600形(603号機)。現在は紀州御坊駅に隣接する「ほんまち広場603」で保存されている。車内はたこ焼き屋、軽食店として活かされる

 

キハ600形は1960(昭和35)年に新潟鐵工所で造られた気動車。元大分交通の耶馬渓線(やばけいせん)を走っていた。その後、同線が廃線となったことから1975(昭和50)年に紀州鉄道に譲渡された。国鉄で言えばキハ20系といった全国の路線の無煙化に大きく役立った気動車が同時代に誕生している。

 

そうした年代物の車両だったが、30年以上にわたり親しまれ2009(平成21)年に運行を終了。その後に紀州御坊駅の構内に長い間、静態保存されていたが、2017年12月に駅に隣接する広場に設置され活かされている。

 

◇キテツ1形

↑まさにレールバスといった姿をしていたキテツ1形(写真は1号)。車輪は4つしかない2軸の気動車だった。決して乗り心地は良いとは言えず、横揺れが感じられた

 

2017年5月まで走っていたのがキテツ1形。この車両、富士重工業(現・SUBARU)が、バス車体をベースに開発した気動車だった。1985(昭和60)年に製造され、兵庫県の北条鉄道を走っていた。形もレールバスと呼ばれたスタイルそのものだった。古い貨車(トロッコ列車などに一部残り使われる)のように車輪が4つの2軸という珍しいタイプだった。その車両を2000(平成12)年と2007(平成19)年に2両を譲り受けた。

 

紀州鉄道ではキテツ1形となり1号がオレンジ色、2号がグリーンの帯をまいて紀州路を走った。

 

筆者も数度、乗車したことがあるが、独特な走行音とともにカーブを走る時、線路のつなぎ目を通る時に車体がカクカク動く感覚があり、決して乗り心地が良いとは言えなかった記憶がある。

 

とはいえ、古い時代の鉄道車両の乗り心地は堪能できた。そんな車両も2016年に引退。1号は同じ和歌山県内の有田川町鉄道公園で動態保存され、また2号は紀伊御坊駅の側線に停められている。

 

 

【紀州鉄道の車両2】信楽高原鐵道の気動車2両が譲渡され走る

現在の紀州鉄道を走る車両2両をここで紹介しておこう。いずれも滋賀県を走る信楽高原鐵道(しがらきこうげんてつどう)から譲渡された車両が使われる。

 

◆KR301形

↑富士重工業で1995年に製造された。信楽高原鐵道で20年間、走ったのち紀州鉄道へ譲渡された。2016年1月31日に登録され走行開始。座席はセミクロスシートとなっている

 

KR301形は元信楽高原鐵道のSKR300形。2015年10月に信楽高原鐵道から譲渡された。全長15.5mと短め、やや丸みを帯びたスタイルが特徴となっている。車体には御坊が生誕地とされる藤原宮子(第42代天皇、文武天皇の婦人)をイラスト化した宮子姫(「みーやちゃん」というゆるキャラもあり)が描かれる。

 

◆KR205形

↑信楽高原鐵道から譲渡されたKR205形。2017年2月に登録され、紀伊御坊駅構内にある検修施設で、模様替えされた。写真は信楽高原鐵道当時のイラストが残った状態。後ろに見えるのは引退したキテツ1形の2号車両

 

KR205形はKR301形と同じく富士重工業が製造した気動車。譲渡されたのはKR205形の205号車で、信楽高原鐵道では1992年から走り始めた。紀州鉄道では2017年4月から走り始めている。

 

全長はKR301形と同じ15.5mだが、天井の形が異なり、JR四国を走るキハ32形と同じ車体断面で、正面の形もキハ32形に近い。

↑KR205形の車内。乗降扉は前後に2箇所で、その間にロングシートがずらりと連なる。週末の御坊駅発の列車は、このように閑散としていることが多い

 

【ギャラリーその1】

 

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