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2020/11/8 20:00

えちぜん鉄道「三国芦原線」10の魅力発見の旅

【魅力発見の旅③】2年にわたる運行休止期間を越えて

えちぜん鉄道では、

 

①30分間隔で列車を運行、覚えやすいパターンダイヤを取り入れている。

②日中は女性のアテンダントの乗車している。

③列車の大半を1両で運行させている。

 

というように派手ではないものの、地道な工夫や努力が見えてくる。ローカル線の将来への道筋を示しているようにも感じられた。

 

今でこそ、活路を見いだした三国芦原線だが、ここまで至るまでは苦難の歴史が潜んでいた。同線の歴史に関して触れておこう。

 

同線の計画は大正期に立てられた。まずは1919(大正8)年に加越電気鉄道という会社が路線計画を提出し、鉄道免許がおりている。その後に、加越電気鉄道は吉崎電気鉄道と社名を変更した。だが、資金難のせいだろうか、工事が進められることはなく、1925(大正14)年に免許が失効している。最初から波乱含みだった。1927(昭和2)年に再び鉄道免許がおり、同年に会社名を三国芦原電鉄と改称した。その翌年に福井口駅〜芦原駅(現・あわら湯のまち駅)が開業した。

 

すでに福井駅〜福井口駅間には京都電燈越前電気鉄道線が走っていて、三国芦原電鉄は、1929(昭和4)年にこの区間へ乗り入れている。京都電燈越前電気鉄道は1942(昭和17)年に京福電気鉄道となり、この年に三国芦原電鉄と京福電気鉄道が合併、京福電気鉄道・三国芦原線となった。

↑芦原温泉の玄関口あわら湯のまち駅。京福電気鉄道から2000年にバス事業を引き継いだ京福バスが今も健在で路線バスを走らせている

 

京福電気鉄道は現在も、京都市内で嵐山線を運行している鉄道事業者で、京都と福井に鉄道網を持つことから「京福」と名付けられた。そして同社の福井支社が三国芦原線と越前本線(現・勝山永平寺線)の列車運行を行っていた。

 

京福電気鉄道では1960年代から80年代にかけて合理化を進めていたが、旧態依然とした企業体質が残り、営業姿勢に関しても必ずしも積極的とは言えなかった(あくまで昭和から平成初期のこと=現在は異なる)。1990年台には、すでに両線とも赤字経営が続いていた。そうした後向きの企業体質が影響したのだろうか、2000年と2001年に越前本線で2度の正面衝突事故を起こしてしまう。2000年には運転士が死亡する大事故となった。

 

1度ならまだしも、2度も続き、国土交通省からはすぐに列車の運行停止が求められた。結果、2001(平成13)年に6月25日に両線の電車運行がストップしてしまった。たちゆかなくなった京福電気鉄道は2003(平成15)年には福井鉄道部を廃止、事業をえちぜん鉄道に譲渡した。えちぜん鉄道は福井市、勝山市などの地元自治体が中心になって運営する第三セクター方式の会社である。

 

引き継いだえちぜん鉄道では、早急に安全対策などを施し、同年の8月10日に三国芦原線を、10月19日には勝山永平寺線を営業再開にこぎ着けた。

 

三国芦原線ではまる2年にわたって、鉄道が走らなかった時期があったのである。こうした苦しい時があったからこそ、えちぜん鉄道は地元の人たちに大切にされ、応援され、またそれに応えるべく地道な企業努力をしているように見受けられた。

 

【魅力発見の旅④】福井駅は2年前に高架化されより快適に

さて。ここからは三国芦原線の旅を始めよう。起点は福井口駅だが、列車が発車する福井駅からの行程をたどる。えちぜん鉄道福井駅はJR福井駅の東口にある。現在、東口は新幹線工事が進んでいることもあり、通路は狭く、やや迷路のような状態になっていた。筆者はJRの特急列車からの乗り換え時間がまだ5分あるからと、のんびり駅へ向かった。だが、すでに発車時刻寸前でベルが鳴り響いていた。改札口で整理券を受け取り9分発の電車にあわてて飛び乗った。

 

現在、福井駅東口の駅構内が改良工事中のため、乗り換え時間は余分に取ったほうが良さそうだ。進行方向左手を北陸新幹線が通る予定で、それに沿うようにえちぜん鉄道の高架線が続く。高架化工事は2018(平成30)年に完成している。福井口駅までは高架路線が続き、新しく快適なルートが続く。

 

ちなみに共通1日フリーきっぷは1000円。福井駅〜三国港駅間は片道770円で、途中下車や往復を考えたら、フリーきっぷの方が断然におトクだ。有人駅や車内乗務員(アテンダントも含む)から購入できる。電車は有人駅以外、一番前のトビラから乗車する。降りる時も運転席後ろの精算機に運賃を入れて前のトビラから下車するシステムとなっている。なお交通系ICカードの利用はできない。

↑福井口駅近くの三国芦原線(右側)と勝山永平寺線の分岐を高架下から見る。左上はその分岐ポイントで、三国芦原線の電車が走る様子

 

福井口駅までは高架線で、福井口駅の先に分岐があり三国芦原線の電車は左の高架線へ進入する。地上へ降りていく途中で注目したいのは左手下だ。JRの路線との間にえちぜん鉄道車両基地があり、検修庫も設けられる。ここには名物となっている凸形電気機関車ML521形も留め置かれている。重連で運転され降雪時には除雪用に使われる機関車だ。こうした高架上の路線から停まる車両をチェックしておきたい。

↑福井口駅近くの車両基地内の検修庫。数両のMC6101形とともに、L形の姿もわずかに確認できた

 

車両基地を左手に眺めつつ路線は左カーブ。新幹線の高架橋をくぐり、JR北陸本線の線路をまたぐ。そして、まつもと町屋駅、西別院駅と福井市街地の中の駅に停まり田原町駅(たわらまちえき)へ向かう。

 

県道30号線の踏切を越えたらまもなく田原町駅だ。この駅では左から近づいてくる福井鉄道福武線の線路に注目したい。

 

【魅力発見の旅⑤】田原町から福井鉄道車両の乗り入れ区間に

福井鉄道福武線は福井市内を通り越前市の越前武雄駅まで走る鉄道路線。福井市街は県道30号線上を走る併用軌道となっている。福武線が田原町駅まで路線が通じたのは1950(昭和25)年のことだった。三国芦原線との接続駅だったが、2013年から相互乗り入れが検討され、その後に駅構内が整備され、2016年からは三国芦原線との相互乗り入れを開始している。

↑田原町駅は三国芦原線と福井鉄道の接続駅。車両が停車するのが乗り入れ用の2番線で、奥に三国芦原線と合流するポイントがある(右下)

 

↑田原町駅に近づく三国芦原線の電車。ホームの案内はユニークな吹き出しふう(左上)。電車を見に来る親子連れや鉄道ファンの姿も目立った

 

筆者は同駅に数度、訪れているが、改修される前の写真を引っ張り出して比べてみた。当時の駅の建物は古風そのもの。福武線のホームは曲線上にあった。停まるのは湘南タイプの正面で人気があった200形が現役時代の姿。路面電車にもかかわらず、乗降口は高い位置にあり、独特な折り畳み式ステップが付いていた。いま思えばユニークな電車だったが、この名物車両は1編成のみ保存され、越前市の福武線・北府駅(きたごえき)近くに整備される北府駅鉄道ミュージアムで展示される予定だとされる。

↑改修前の田原町駅に停車する福井鉄道200形203号車。同車両は越前市の新施設で保存される予定だ 2013年2月10日撮影

 

古い駅舎もなかなか趣があったが、やはり新駅は開放感が感じられ快適だ。隣接地は小さな公園となり、電車好きな親子連れや鉄道ファンが、電車の行き来や撮影を楽しんでいる様子が見られ、ほほ笑ましい。

 

電車の乗換え客は前にもまして増えた様子。以前に訪れた時は無人駅で、静かだったが、現在は有人駅となり華やかな印象の駅に生まれ変わっていた。

 

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