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2023/4/23 20:00

東武鉄道フラッグシップ特急「スペーシアX」がお披露目! 独自の車体・豪華な車内を詳細レポート

〜〜南栗橋車両管区でN100系「スペーシア X」を公開(埼玉県)〜〜

 

今年の7月15日に運転を開始する東武新特急「SPACIA X(スペーシア エックス)」。100系スペーシア以来、約33年ぶりに東武のフラッグシップ特急として登場する。2023年度までに6両×4編成が導入される予定だ。

 

先日、東武鉄道の南栗橋車両管区でN100系スペーシア Xが報道陣にお披露目された。新しい特急電車らしく魅力はふんだんにあり、さらにとっておきの秘密を見つけることができた。

*取材協力:東武鉄道株式会社

 

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【新型特急の秘密①】1号&6号車の窓はXのデザイン!

まずは新特急の外観をじっくり見ることにしよう。

 

車体カラーは日光東照宮陽明門に塗られた「胡粉(ごふん)」に着想を得たとされる青みのかかった「白」。訪れた日は晴天に恵まれ、大空の下、空の色が反射しているのか、薄い水色に見えた。雲が多少かかると、薄い紫色といったイメージに。高級感あふれる美しい車体だった。

 

外観では窓枠の造りがおもしろい。1号車と6号車は六角形のガラス窓が並び、窓周りのデザインはXに見える。

↑浅草側の先頭車・6号車。正面にかけて流れるような曲線と運転席周りの造作が良くマッチしている

 

この窓枠は東武スカイツリーラインや東武日光線沿線の鹿沼組子、江戸の竹編み細工を連想させるもの、と東武鉄道では解説している。これまでにないおしゃれなデザインだ。この模様は車内にも多く組み込まれている。

↑1・6号車の側面窓は六角形。加えられたX模様がユニークだ。運転席の横と後ろの窓は〝不等辺な〟三角形、五角形なのが目を引く

 

↑スペーシア X のロゴが5〜6号車の間に入る。5号車から先の窓部分を見ると、パンダの黒白模様にも見えてしまった

 

2号車から5号車は四角い小さめの窓で、これには実は理由があった(詳細後述)。

 

正面のライトのデザインもユニークだ。運転席のガラス窓の下に装着されたLEDライトは39のドットで構成されている。ロービームの場合は光が台形の形をしているが、ハイビームにすると「T」字型になる。これは東武の「T」をイメージしたもの。ライト一つにしてもお洒落心が加えられているわけだ。

↑LEDライト39個で構成された正面ライト。左がハイビーム状態で「T」の字に見える。右はロービームの状態で台形の形だ

 

↑真正面からヘッドライトとテールライトを写す。左のハイビーム状態は意外に明るい。右はテールライト点灯時のもの

 

車外表示器はスペーシア X の列車番号、行き先等が表示されていた。実はこちらはLCDディスプレイ(東武鉄道ではLCD搭載ガラスサイネージと表現)が使われる。一般的な電車にはLED表示器がよく使われているが、どこが違うのだろう。

 

LCDとは液晶ディスプレイのこと。つまりこの車外表示器は私たちが日常的に使っているものに近い。文字がくっきり見やすいだけでなく多彩な映像演出もできる。このLCDディスプレイがスペーシア X 車内の意外なところで使われていた。

↑側面の車外表示器にはLCDディスプレイが使われている。映像なども流すことが可能だ

 

【新型特急の秘密②】1号車の運転席後ろの席は超激戦となる!?

ここからは車内の紹介をしていこう。まずは1号車「コックピットラウンジ」から。東武日光側の運転席の後ろに設けられた指定席で、1人、2人、4人用に各種ソファとテーブルが用意される。

↑2人用ソファと4人用ソファが通路をはさんで設けられる。運転席の後ろには1人用のソファを左右に備えている

 

1号車の「コックピットラウンジ」は、日光の老舗リゾートホテル「日光金谷ホテル」や大使館の別荘などがモチーフにされたそうだ。

 

デッキ側にはカフェカウンターもある。カウンター内にはコーヒーの豆を挽くコーヒーミルに、ドリップ式のコーヒーメーカーを設置。さらにビールサーバーが設けられている。こちらでは挽きたて入れたてのクラフトコーヒー「日光珈琲」に、クリーミーな泡が楽しめるクラフトビール(日光地元産に加えて全国各地の厳選クラフトビールを用意)を味わいつつ、運転室の背後からの展望や、移り行く景色を楽しむことができるわけだ。

 

同列車では特急券+座席を指定しての着席となる(料金は後述)。ちなみに1号車運転席のすぐ後ろ左右には1人用のソファが2つある。東武日光側の先頭車とあって、この2席は高倍率の人気席となりそうだ。

 

ちなみに4月現在、カフェカウンターの細かなサービス内容は決まっていない。1号車以外への車内サービスもお願いしたいところだ。

↑什器備品が調えられたカフェカウンター。コーヒーミルも設置されていた。またビールサーバーも備えている(右下)

 

【新型特急の秘密③】デッキ&通路といえども侮れない!

1号車から移動しようとデッキに出て驚いた。天井部分に42インチLCDガラスサイネージ「天窓表示器」(LCDディスプレイ)が付けられている。車体側面に付いたディスプレイよりもかなり大きい。そこには青空、雲の流れ、樹林、星空の映像が流されている。列車のデッキにもかかわらず、まるでオープンカーから空を眺めるような映像が楽しめるわけだ。

↑東武沿線の林間を走るような映像がディスプレイに映される。まるで木漏れ日を受けて走るような感覚だ

 

加えてデッキにはアロマディフューザーが設置され、心地よさが感じられる。デッキの車内案内の上に細かい穴が設けられていたが、ここから香りが放たれていたのだ。

 

【新型特急の秘密④】シンプル&快適に旅が楽しめる2号車

2号車はグリーン席にあたる「プレミアムシート」となる。1列と2列並びのシートがダークグレーのじゅうたんの上に配置されていた。

 

シートピッチは1200mmと広く、横幅もゆったりしている。さらに、バックシェル構造の座席を採用したこともあり、後ろに座る人へ配慮せずとも、席をリクライニングさせることができる。

↑通路をはさみ1席と2席が並ぶプレミアムシート。足を置くスペース、シートピッチもたっぷりしたサイズが確保される

 

↑プレミアムシートのシートを目一杯に倒してみた様子。バックシェル構造のため、後ろの席を気にせず利用できる。右下はボタン類

 

↑ひじ掛け内にインアームテーブルが内装され、開くとこの形に。ほかボトルスペースとコンセント(右下)、読書灯が付く(右上)

 

【新型特急の秘密⑤】スタンダードシートで粋なデザインを発見!

3号車から5号車は普通車にあたる「スタンダードシート」が設けられる。中央の通路の左右に2席ずつ連なる形だ。淡いグレーの座席で座り心地はなかなか上質だった。

↑2席が横並びに並ぶスタンダードシート。3・4号車と5号車の半室がスタンダードシートとなる

 

シートを倒してみると意外に倒すことができる。例えば、4人グループが利用する時に対面する位置に向きを変え、シートを倒しても後ろの席にぶつかることのないスペースが確保されている。東武鉄道の特急「500系Revaty(リバティ)」と比較してシートピッチは100mmも広がっているそうだ。さらに秘密が隠されていた。

↑スタンダードシートには2つの折畳みテーブルがある。前のイスの背面と、さらにひじ掛け部分には折畳み小テーブル(左下)を内装

 

車外から見ると、スタンダードシートの車両の窓が意外に小さめに見えたのだが、実は、これが座席にぴったり合わせたサイズになっていた。広い窓は景色がよくみえる長所があるものの、シェードやカーテンを閉めるとき、前後に座る人への配慮が必要になる。個々に合わせたサイズならば気遣いをせずにすむわけだ。

 

スタンダードシートにはまだ秘密が隠されていた。それはテーブルだ。前の座席の背面に折り畳まれた大きめのテーブルが1個設けらていれる。さらにひじ掛け部分に小テーブルが収納されているおり、使い分けができるわけだ。小テーブルのデザインは六角形で、スペーシア X の多くの箇所で見られる鹿沼組子の紋様が使われていた。

 

取材当日、3号車では技術スタッフが乗車して、座面を取り除き座席のベース部分を見せて解説をしていた。座面を外したベース部分はメッシュ状の造り。ベースに金属ではなくこうしたメッシュ状の素材を使うことにより、座り心地を改善しているそうだ。

↑座席の向きを変えてシートを倒しても、後ろに触れないスペースを確保。座席のベース部分にはメッシュ状の素材が使われる(左下)

 

↑ボトルケースは折り畳んだ上下の支え部分が一緒に出る仕組み。ボトルケースの上にはコンセントが設けられている

 

【新型特急の秘密⑥】テレワークにもぴったりなボックスシート

次の5号車の連結器側には「ボックスシート」がある。東武鉄道では「向かい合う2シートにより構成した半個室仕様」と解説している。このシートへ入ってしまうと、個室のように他人の目を気にせずに済む。1人、もしくは2人連れにぴったりの席と言っていいだろう。

 

ちなみに、コンセントが装着されているので、東武鉄道では「車窓を眺めながらのテレワークにも対応します」としている。朝晩、通勤・通学で利用する人も多いことを意識してのPRなのかもしれない。

↑ボックスシート部分に合わせたサイズの窓も設けられている。テーブルもあり、テレワークにも使えそうだ

 

↑5号車に設けられた車いすスペース。「新移動等円滑化基準」に準拠したスペースを備える

 

【新型特急の秘密⑦】デッキや通路とはいえお役立ち感が満載!

最終6号車へ移る前に、通路・デッキ部分を見ておこう。5号車の通路部分にはバリアフリートイレ、洗面設備などに加えて東武鉄道初の多目的室が備えられた。多目的室は体調が悪くなった利用者、授乳する人などが自由に使えるスペースとなっている。

 

また来日訪問客の乗車に備え、大型荷物置場が設けられた(車内5か所用意)。こちらは交通系ICカードを利用して盗難防止用のワイヤロックができる仕組みだ。

↑5号車の通路部分に設けられた洗面設備、隣に多目的室(右上)、バリアフリートイレ(右下)が並ぶ

 

↑大型荷物置場用のバゲッジポート。交通系ICカードを利用すれば盗難防止用のワイヤロックを使っての施錠が可能になる

 

【新型特急の秘密⑧】6号車に東武特急定番の〝特上〟個室を用意

浅草駅側の6号車には個室とスイートルームがある。個室の「コンパートメント」は全4室。コの字型にソファーを配置し、大人4人がくつろげる。

 

さらに運転室側は「コックピットスイート」。7名までの利用が可能で大小ソファと、テーブルが用意され、グループや家族向けのスペースとなる。運転室とはガラスで仕切られていて、室内から前面および後方の景色を楽しむことができる贅沢な部屋だ。

↑通路の横に個室「コンパートメント」が4室並ぶ。一番奥がコックピットスイートとなる

 

↑こちらはコンパートメント。4名用にソファとテーブルを備えている

 

↑運転室のすぐ後ろにある「コックピットスイート」。最大7名用で面積は11平方メートルと私鉄では最大級の個室の広さだ

 

最後に料金を確認しておこう。

 

◇特急料金1名(料金は浅草〜東武日光・鬼怒川温泉間の場合・乗車運賃を除く)
スタンダードシート:1940円
プレミアムシート:2520円

◇特別座席料金(スタンダードシート料金にプラス以下の料金が必要)
1号車【コックピットラウンジ】1人用:200円、2人用:400円、4人用:800円
5号車【ボックスシート】(2人定員)1室:400円
6号車【コンパートメント】(4人定員)1室:6040円
6号車【コックピットスイート】(7人定員)1室:1万2180円

 

7月15日からの運転開始ながら、早くも旅行代理店の商品としてスペーシア X のプレミアムシート、コンパートメント、コックピットスイートと旅館・ホテルの宿泊を組み合わせた旅行プランの販売が開始されている。

 

個室はなかなか高額だが、一方でコックピットラウンジは割安感がある。運転開始当初は指定券の購入が難しいプレミアムチケットになりそうだ。沿線をさっそうと駆けるスペーシア X の姿を楽しみにしたい。

↑スペーシア X の運転室。運転台左にL型ワンハンドル式主幹制御器がある。前面ガラスに2次曲線ガラスを採用し、十分な前方視界を確保