近距離の移動手段として、特定小型原動機付自転車(特定小型原付)への注目が高まっています。2023年7月に新設されたこの車両区分は、16歳以上であれば運転免許が不要。その手軽さから、通勤や買い物など日常の足として関心を持つ人が増えています。そんな特定小型原付の中で、ひときわユニークな設計で登場したのが「WONKEY(ウォンキー)」です。
オーストラリアに生息するウォンバットから着想を得て開発されたモデルで、企画・設計を手がけるのは、eモビリティブランド「WO BIKES(ダブルオーバイクス)」を展開する株式会社ダイナー。代表の清水淳さんに話を聞きながら、実際に試乗してきました。
“便利より先にかっこいい”という、はっきりした方向性
WONKEYのコンセプトについて、清水さんは「eモビリティはまず便利さに注目されることが多いのですが、WONKEYは『かっこいい』から入って、その上で便利であればいいという方向性です。乗っていて『かっこいいよね』って言ってもらえるものを作りました」と話します。
企画・設計は自社で行い、中国の工場で製造。ギアやチェーン、サスペンションをあえて省略し、ペダルをこぐ必要もない大胆な設計がWONKEYの特徴です。チェーンがないぶん服が汚れる心配もなく、パーツが少ないためメンテナンスも容易となっています。

激坂アタックで判明した、コンパクトな車体に秘められた正体
WONKEYのフォルムはかなり異質です。一見すると子ども用のペダルなしキックバイクを思わせる超小柄なサイズ感。走行は右手のアクセルレバー操作のみで、体力に関係なく運転できます。特定小型原付のため、最高速度は時速20km。さらに歩道モード(時速6km)も備えており、「特例特定小型原動機付自転車」にも対応しています。
シート高は56cmと極端に低く、身長130cmから乗車可能とのことで、足つきに不安がある人でも安心感があります。実際に試乗してまず感じたのは、“気軽さ”でした。車体サイズがコンパクトで重心が低く、両足の膝を曲げた状態で地面に付くため転倒の不安がありません。太めのブロックタイヤによる安定感も高く、荒れた舗装でもフラつきにくく、車道から歩道への段差に斜めに進入しても、ハンドルを取られる不安はありませんでした。



都内有数の急坂として知られる中目黒にある「別所坂」に持ち込みアタックしてみました。試乗したのは48Vモデルで、筆者の体重は約62kg。ホイールベースが短いため、斜度のきつい坂の途中で不用意にアクセルを開けると、フロントが浮きそうになるほどのトルクを見せましたが、失速することなく平然と激坂を登りきりました。その愛らしい見た目から想像する以上に、登坂性能のポテンシャルは高いという印象です。

パワーユニットは36Vと48Vを用意。どちらを選ぶべきか?
WONKEYのバッテリーは36Vと48V、2つのラインナップを用意します。単純にパワーの違いだけでなく、モーター・コントローラー・バッテリーがすべて別仕様で、互換性はなく充電器も専用品です。
「体重が70kg未満の方には36Vでも大丈夫ですが、70kg以上の方や坂道が多い地域の方には48Vをおすすめしています」と清水さんは話します。
電力の消費特性については、「ガソリン車と違って、ストップ&ゴーより、重いものを乗せたり高速走行したりすると消費が早いのです。36Vで高速走行するとがんばりすぎて消費が早くなる感じがありますが、48Vだと体重による差はそれほどありません」とのこと。
航続可能距離についてはバッテリー容量(Ah)に依存し、36Vは最大21Ahまで選択でき、48Vの最大容量は17.5Ahまでです。


“都市型モビリティ”のはずが、牧場や離島で人気?
当初ターゲットとして想定していたのは目黒・世田谷・渋谷・港区といった都市エリア。しかし実際には予想外の使われ方が広がっているそうです。「北海道や九州の牧場で免許を持っていない若いスタッフが移動に使っていたり、キャンピングカーに1台積んでいたりする方もいます。渡嘉敷島では10台を観光客用のレンタルバイクとして使っていただいています。離島はアップダウンが多いので、レンタルサイクルよりも電動モビリティとの相性が良いのです」。
都市型モビリティとして設計したものが、農場・離島・観光地といったまったく異なる文脈でも受け入れられているのは興味深い展開です。25kgと軽量コンパクトでシート高が低いので、老若男女問わず扱いやすく、いろいろな使い方ができそうです。

購入前に知っておきたい、“e-Bike感覚”では乗れない義務と注意点

WONKEYは特定小型原付のため、一般的な電動アシスト自転車とは異なり、購入後にはいくつか必要な手続きがあります。
まず、16歳以上であれば運転免許は不要ですが、年齢確認が必要。さらに、公道を走行するにはナンバープレートの取得と自賠責保険(1年間6,650円、5年間1万2,040円※沖縄除く)への加入が必須で、毎年、軽自動車税(2,000円)もかかります。
ヘルメットについては自転車と同様に努力義務ですが、安全面を考えると着用しておいたほうが安心でしょう。また、交通ルールも基本的には自転車に近い感覚ですが、当然ながら信号無視や一時停止無視は道路交通法違反。飲酒運転、スマートフォンを操作しながらの“ながら運転”、イヤホンで音楽を聴きながらの走行などもNGです。
歩道モード(6km/h)を搭載しているため、道路交通法上の条件を満たしていれば歩道走行もできますが、歩行者優先が大前提。
購入は通販で全国に配送可能で、中目黒にある旗艦店「WO STORE直営店」では販売だけでなく試乗や整備も対応しています。いままでにない地面に近い視点、最大でも20km/hという速度から見える景色は、自転車でもバイクでもない、“低速で街を楽しむモビリティ”という新しいジャンルを体験している感覚でした。
【WONKEY 製品スペック】
全長:138cm
シート高:56cm
ハンドル幅:60cm
車両重量:25kg
上限速度:時速20km
走行可能距離:約25-50km(10.4Ah)/約40km~80km(21Ah/17.5Ah)
バッテリー 36V10.4Ah/36V21Ah/48V10.4Ah/48V17.5Ah
充電時間:4~6時間
モーター:250W
定格出力:0.25kw
ブレーキ:機械式ディスクブレーキ
タイヤ:16インチ×4.0
カラー:MatteBLACK/MattePISTACHIO/MatteWHITE/MARIGOLD/MatteSILVER
税込価格:176,000円(36V10.4Ah)/192,500円(36V13Ah)/247,500円(36V21Ah)/209,000円(48V10.4Ah)/280,500円(48V17.5Ah)