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2017/11/15 16:00

「やわらかご飯は食べやすい」は間違った常識だった! タイガーの戦略発表会で判明した「本当に食べやすいご飯」とは

筆者のように50歳を超えるとやはり健康が気になります。最近、仕事先や友人・知人の中に生活習慣病にかかっている人が相次いで現れ(自分より年下の人も!)、「他人事ではない」と戦々恐々としています。生活習慣病を予防するにはやはり食事が大切なので、最近は糖質制限をしたり、食べ過ぎ・飲み過ぎないようにしたりと、少しずつ食生活の見直しを始めました。そんな折、タイガー魔法瓶から炊飯器やホームベーカリーを使った健康分野の新戦略発表会を開催するとの案内が。ただでさえ病気の恐怖におののく年齢だけに、健康と聞いて参加してみないわけにはいきません。

 

タイガーが健康ソリューション事業の強化を発表

発表会の冒頭、あいさつに立ったタイガー魔法瓶の菊池嘉聡社長は、産官学連携によるヘルスケア領域での健康ソリューション「Magical Solutions of Wellness」と名付けたタイガーの新しい試みについて次のように説明しました。

↑タイガー魔法瓶の菊池嘉聡社長
↑タイガー魔法瓶の菊池嘉聡社長

 

「厚生労働省の調査によると、健康を意識している人のうち、食事・栄養に気を配っている人は7割。しかし、健康・美容のために美味しい食事を我慢する人も多い。そこで、産官学連携により、調理家電によって美味しさを犠牲にすることなく健康・美容に配慮した提案をしていくことにしました。タイガーだからこそできるこの健康ソリューション事業は、2018年度に売上高108億円、創業100周年となる2023年には200億円の規模まで育てたいです」(菊池社長)

 

タイガーの新しい成長戦略として、単に家電製品というハードを作って売り出すだけではなく、「健康」をキーワードとした食材・食べ方の提案も同時に行っていくとのことです。今回、具体的には次の3種類の提案を示しました。「さらっとご飯」「麦めし」「無添加グルテンフリー米粉100%食パン」です。

↑今回発表した産官学連携の健康ソリューション
↑今回発表した産官学連携の健康ソリューション

 

高齢者でも食べやすい「さらっとご飯」を炊く技術を開発

まず、ひとつめの「さらっとご飯」とは何でしょうか。「老化によりのどの筋力が低下して食べ物が飲み込みにくくなる。さらに、反射神経の低下で気管と食道の切り替えがうまくいかずに誤嚥しやすくなります。70歳以上の肺炎の約80%が誤嚥性肺炎が原因と言われていますが、高齢者にいつまでも安心して美味しいご飯をたべてほしい。そんな思いで開発したのが、『さらっとご飯』です」と、開発本部統括マネージャーの金丸 等氏。

↑金丸均マネージャー
↑金丸 等マネージャー

 

ご飯はやわらかければ食べやすくなるわけではない

タイガーでは、ご飯の飲み込みにくさはベタつきにあると突き止め、ベタつきのもととなる炊飯時の“おねば”を取り除く技術の開発に、このほど成功したのです。「さらっとご飯」を共同開発したのが兵庫県立大学環境人間学部の坂本薫教授。

 

「高齢者は口の動きが悪くなり、唾液の分泌が減少することで飲み込みづらくなります。口の中に食べ物が残り、口の中を衛生的に保ちにくくなると誤嚥性肺炎の原因にもなる。高齢者にとっては、口の中に残りにくく、ほどよくまとまって飲み込みやすいご飯が良いのです。ところが、一般的な高齢者向けご飯は、水加減を増やしてやわらかめに炊いてしまう。すると、お米が胴割れ状態になり、中からでんぷんが流出してベタベタした糊状のご飯になってしまうのです。これでは、くっついて口の中に残りやすくなるし、味も美味しくありません」。

↑兵庫県立大学環境人間学部の坂本薫教授
↑兵庫県立大学環境人間学部の坂本薫教授

 

目からウロコが落ちました。我々はいままで、「高齢者のため」と思って真逆のことをしていたのです。だったら、もっと水加減を増やしてお粥にすれば飲み込みやすくなって良いのではと思う方もいるのでは? でも実は、お粥にも大きな問題があるとのこと。水分量が多いため必要な栄養量が確保しにくいく、必要な栄養量を確保するために大量に食べなければいけないといいます。これも現実的ではありません。

 

飲み込みやすくするには「おねば」を絶妙なバランスで取り除くこと

これまで炊飯器メーカーは、「おねば(=炊飯時に出るねばねばした汁)にお米の旨みが凝縮されているので、炊飯時に蒸気に含まれるおねばを途中で釜に戻す」ということをしてきました。そして今回、同社が開発したのは「“おねば”を取り除く技術」。つまり、これまでの主張と正反対のことをやろうとしているのです。これに関して坂本教授は、「おねばを取り除き過ぎると美味しさが半減するだけでなく、口の中でバラバラになって、かえって飲み込みづらくなる。今回、味を損なわず、さらっとして、それでいてまとまりやすい絶妙なバランスでおねばを取り除く方法を確立しました」と説明しました。

↑タイガーが開発したおねば回収プレートと専用炊飯プログラムで「さらっとご飯」が実現
↑「さらっとご飯」を実現する技術。タイガーが開発した「可変おねば回収プレート」と専用炊飯プログラムで「さらっとご飯」が実現

 

↑さらっとご飯はやわらかく、べたべたせず、咀嚼回数・嚥下回数も少なくて済みます。官能評価でも、美味しい、飲み込みやすいなど、基準飯より高い評価を受けています
↑さらっとご飯はやわらかく、べたべたせず、咀嚼回数・嚥下回数も少なくて済みます。官能評価でも、美味しい、飲み込みやすいなど、基準飯より高い評価を受けています

 

発表会のあとに、「さらっとご飯」を試食しましたが、確かにお米の表面がサラっとしています。それでいて食感は硬いわけではなく、適度な噛みごたえで甘みがあり、喉をするっと通っていく、とても食べやすいご飯でした。50歳になると若干、嚥下能力が落ちて飲み込みづらく感じますが、このご飯はとても食べやすく飲み込みやすかったです。

↑試食では、やわらかめに炊いたご飯とさらっとご飯の比較ができたが、やわらかめご飯がベタベタして喉に引っかかる感じがしたのに対し、さらっとご飯は喉ごしがよく、スルッと飲み込めて食べやすい
↑試食では、やわらかめに炊いたご飯とさらっとご飯の比較。やわらかめご飯がベタベタして喉に引っかかる感じがしたのに対し、さらっとご飯は喉ごしがよく、スルッと飲み込めて食べやすいです

 

この機能を搭載した炊飯器は来年半ばに登場する予定ですが、残念なことに、当初は老人施設など業務用モデルからスタートするとのこと。一刻も早い市販化が望まれます。シニアや、ちょっとだけ嚥下能力が落ちた50代だけでなく、べたべたしたご飯が苦手な人にもニーズもありそうですね。

 

独自の「麦めし」メニューでネガティブなイメージを払拭

2つめの「麦めし」ですが、タイガーは数年前から炊飯器に「麦めしメニュー」を搭載してきました。これは、大麦の持つ食物繊維に注目したからです。「日本人の1日当たりの食物繊維摂取量は、この60年間で約7g減少しています。その主要因が穀類からの摂取の減少。大麦は食物繊維が豊富ですが、上手く炊けない、硬い、臭いがするといったネガティブなイメージがあってあまり好まれてきませんでした。そこで、当社独自の麦めしメニューで美味しくやわらかく、臭いをおさえることに成功しました」(金丸氏)。

↑穀類の中でも大麦の食物繊維量は圧倒的に多く、さまざまな健康効果が期待できる

↑穀類の中でも大麦の食物繊維量は圧倒的に多く、「メタボ解消」や「免疫力の向上」などさまざまな健康効果が期待できます

 

この麦めしメニューを共同開発したのが、穀物の加工食品メーカー株式会社はくばく。同社の長澤重俊社長は「大麦は、日本国民の健康ニーズに応える、まさに国民食」と力説。「特に、もち麦は不溶性・水溶性ともに食物繊維量が圧倒的に多い。便通改善から、血糖値上昇の抑制やコレステロール値の抑制などによる生活習慣病改善に役立ちます」と語りました。

 

日本人は特に、炭水化物を好む腸内細菌を多く持っており、この細菌が増えることで腸内環境が正常化するとのこと。大麦は細菌の餌となる水溶性食物繊維を多く含んでおり、腸内環境を整えるのに最適なのです。

↑「日本人をさらに元気にするのが、水溶性食物繊維を多く含んだ大麦だ」と語るはくばくの長澤重俊社長
↑「日本人をさらに元気にするのが、水溶性食物繊維を多く含んだ大麦だ」と語るはくばくの長澤重俊社長

 

↑野菜と比較しても大麦の食物繊維量は圧倒的に多く、特にもち麦は水溶性食物繊維が豊富
↑野菜と比較しても大麦の食物繊維量は圧倒的に多く、特にもち麦は水溶性食物繊維が豊富

 

↑水溶性・不水溶性それぞれに食物繊維の働きが異なります
↑水溶性・不水溶性それぞれに食物繊維の働きが異なりますが、大麦は両者の働きを併せ持っています

 

タイガーでは、麦めしメニュー搭載炊飯器の累計販売台数に関して、2017年度末で100万台を見込んでいます。現在、搭載モデルは12機種ありますが、来年度には搭載機種を増やすとともに、押し麦メニュー、持ち麦メニュー、さらに飲み込みやすい麦粥メニューなど、麦めしメニューのバリエーションも増やす考えです。

 

アレルギー対策としてフワフワな米粉パンを焼けるホームベーカリーを開発

最後の3つめ、「無添加グルテンフリー米粉100%食パン」は、タイガー高級ブランド「GRAND X」(グランエックス)のIHホームベーカリー「KBD-X」で実現している機能。グルテンとは小麦に含まれているタンパク質の一種で、その粘着性・弾性により、パンをふっくらと膨らませる役目を持っています。ただ、小麦粉は卵・乳製品とともに3大アレルゲンと言われており、学校給食においても既に70%が米粉パンに切り替えている状況です。しかし、米粉パンの場合、グルテンがないので膨らまないため、増粘剤などの添加物によって膨らませているのが現状です。

↑無添加グルテンフリー食パンが焼けるKBD-X100
↑無添加グルテンフリー食パンが焼けるKBD-X100

 

しかし、タイガーのIHホームベーカリー「KBD-X」では、そうした添加物を使うことなくグルテンフリーの米粉100%食パンが焼けます。それを実現したのが農研機構(国立研究開発法人 農業・食品技術総合研究機構)です。農研機構の矢野裕之氏は以下の通り説明しました。

 

「広島大学との共同研究で開発した米粉生地は、メレンゲのように非常にやわらかく潰れやすい。熱を加えると発酵ガスが発生しますが、一般的なホームベーカリーに使用されているシーズヒーターでは電気のオン/オフを繰り返しで温度を保つため、発酵ガスの泡が発生しては消えてを繰り返して大きく育ちません。その点、IHシステムは温度制御に長けており、温度を一定に保つことができるため、小さな泡を徐々に大きく育てることができ、大きくなったら高火力で一気に焼き上げることができる。IHだからこそ、グルテンフリーなのにフワフワなパンが焼けるんです」。

↑農研機構の矢野裕之氏
↑農研機構の矢野裕之氏

 

米粉パンをあちこち探し回らずに、家庭でいつでも簡単に作れるのはうれしいですね。また、アレルギー体質により、美味しいものをあきらめていた人はたくさんいるはずですが、タイガーではこうした人々に配慮し、今後も健康と美味しさを兼ね備えた商品の開発に力を注いでいく考えです。

 

タイガー魔法瓶の新キャラクター、佐々木 希さんも登場!

最後に、タイガー魔法瓶の新キャラクター、女優の佐々木希さんがゲスト登場し、トークに花を咲かせました。「私もGRAND Xの炊飯器を使っていますが、もっちりご飯やおコゲの調節などができて本当に美味しい」とのこと。さらに「仕事柄、健康と美容には気を使っています。野菜を多めに摂り、お米・納豆・お味噌汁と栄養バランスのよい食事を心がけています。グルテンフリーのパンが大好きなので、お店で見かけるとすぐに買ってしまう。タイガーさんのホームベーカリーの米粉パンはもちもちして本当に美味しいので、私もこれから自宅で作ってみたいです」とニッコリ。

↑女優の佐々木希さん
↑女優の佐々木 希さん

 

実は私も、佐々木さんと同じく健康に気をつけており、生活習慣病を意識して、毎日スーパーフードのチアシードをヨーグルトに混ぜて食べています。50歳を超えるとガンのリスクも増えてくるので、腸内環境やコレステロール、血圧、尿酸値などが気になってしょうがない。でも、やっぱり美味しいものは食べたい…ちょうどそんなことを考えていた折に今回の発表に触れ、とりあえずは麦めしから始めてみようと、さっそくもち麦を買って帰りました。みなさんも他人事と思わず、健康への第一歩を始めてみてはいかがでしょうか?