高速道路も走れるのに車格は125cc級? “ちょうどいい”を狙ったヤマハXSR155とは

ink_pen 2026/5/20
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高速道路も走れるのに車格は125cc級? “ちょうどいい”を狙ったヤマハXSR155とは
鈴木博之
すずきひろゆき
鈴木博之

フリーランスエディター/ライター。これまでさまざまなジャンルの雑誌編集に携わり独立。現在はモビリティやガジェット、ライフスタイル分野を中心に雑誌・Web媒体で取材・執筆を行う。メーカー発表会や現地取材をもとに、プロダクトの背景や開発ストーリーを掘り下げた記事を得意とする。

6月30日、ヤマハ発動機販売が「XSR155」を発売します。同社のXSRシリーズはすでに「XSR125」「XSR700」「XSR900」を展開しており、今回の155ccクラスはシリーズ10周年のタイミングで加わる新たなラインアップです。

一見すると”155cc”という排気量は中途半端に感じるかもしれません。しかし実際に発表会で開発陣の話を聞くと、この数字にはかなり明確な狙いがありました。コンセプトとして掲げられたのは、「ファッショナブル」×「乗って楽しい」の二刀流。自分の服装やライフスタイルに合うバイクとして成立させながら、行動範囲も広げるという方向性です。

↑左から商品企画担当の小玉歩氏、プロジェクトリーダーの上田匠氏、エンジン開発担当の藤井勇輔氏、デザイン担当の横溝万莉氏。

125cc級と同じボディサイズで扱いやすさを維持

↑ボディサイズや車両重量までXSR125と同じサイズで、馬力は4psアップしていてパワフルに走れる。

プロジェクトリーダーの上田匠氏は、「日常から少し一歩先のスポーツ走行まで、誰でも気負わず乗れる車体を目指した」と述べました。

XSR155は、従来モデルのXSR125と同じフレームを使用しています。そのため車重137kg、シート高810mmはXSR125と同じスペックです。つまり、125ccクラス並みの取り回しや軽快感を維持しながら、排気量をアップしたことで高速道路や自動車専用道路を走行できるのが155cc化した最大のメリットと言えます。125cc以下では行動範囲が制限される場面もありますが、155ccになることでツーリング先の選択肢が一気に広がるというわけです。

↑オーセンティックな丸型LCDメーター。シンプルなハンドルまわりで、バイクを操ることに専念できる。
↑φ37mmインナーチューブの倒立式サスペンションを採用。ネオレトロなヘッドランプはLED仕様。
↑ネオレトロの要素を強めるLED仕様のハイマウントリアテールランプ。

ネオレトロデザインと“構えなくていい”世界観

デザイン担当の溝越万莉氏の、「乗るために理由を作らなくていい存在」という言葉も印象的でした。大型バイクのように“気合いを入れて乗る”というより、普段着感覚で気軽に付き合えるバイクを目指したといいます。さらに、「レトロとモダン、この相反する二つの価値を組み合わせることで双方の魅力が際立つ」と語りました。

XSRシリーズは、丸形ヘッドライトやタンク形状など、クラシカルなデザインと現代技術を融合した“ネオレトロ”カテゴリーの人気シリーズで、ヤマハではスポーツヘリテージと呼んでいます。今回のXSR155は、エントリーモデルのXSR125よりさもさらに、「ファッショナブルで、自然体で乗れるバイク」をテーマに開発されています。

カラーリングは日本市場向け専用色を採用。同社の2ストスポーツ「RZ250」を彷彿させる「ブラックメタリック12(ブラック)」と、日本初採用となる新塗料「ロハスミント」を採用した、カフェレーサーのような「グリーニッシュグレーメタリック2(グリーン)」、XSR125でも新色採用した「ライトブルーイッシュグレーメタリック9(シルバー)」の3色を展開します。

↑往年のヤマハスポーツモデルを彷彿させる「ブラックメタリック12(ブラック)」。
↑日本初採用となる新塗料「ロハスミント」を採用した「グリーニッシュグレーメタリック2(グリーン)」。

155ccエンジンにはヤマハらしい最新技術を投入

エンジン開発担当の藤井勇輔氏は、「低回転での市街地走行と高回転での伸び、どちらも犠牲にしない設計にこだわった。ライダーが細かい操作を意識しなくても、エンジンが素直に応えてくれる状態を目指した」と説明しました。

エンジンは水冷SOHC155cc単気筒を搭載。単純に排気量を拡大しただけでなく、ヤマハらしい技術も盛り込まれています。一つは、XSR125でも導入済みの可変バルブ機構「VVA(Variable Valve Actuation)」です。約7,000回転付近でバルブ特性が切り替わり、街乗りから高速走行まで幅広く対応します。

もう一つは、アシスト&スリッパークラッチの採用です。クラッチ操作を軽くするだけでなく、急なシフトダウン時のエンジンブレーキを適度に抑え、車体挙動を安定させるもの。

「例えば、マニュアル操作に慣れていない初心者には安心感があり、ベテランライダーにはスムーズで素早いシフトチェンジが楽しめる」と説明。6速ミッションも搭載されており、街乗りだけでなくロングツーリングも視野に入れた構成となっています。

↑2ポッドキャリパーと267mm大径ディスクブレーキにはABSを搭載。

若年層を意識した“入り口”としてのXSR155

商品企画担当の小玉歩氏によると、コロナ禍以降、若年層の二輪免許取得者数は増加傾向にあるといいます。一方で、大型バイク市場は価格やサイズ面でハードルが高く、125ccでは高速道路に乗れないという、この“隙間”を埋める存在として155ccクラスに注目した背景があるようです。

実は、XSR155はすでにインドネシアで販売されています。東南アジアでは150ccクラスは非常に一般的で、日本でも並行輸入車が流通していたことから、正式導入を望む声は以前から少なくありませんでした。

今回、ヤマハが日本市場に投入したXSR155は、排ガス規制対応のため触媒や燃調を変更し、ABSを追加したのが大きな違いで、それ以外の基本構成はインドネシア仕様とほぼ共通とのこと。

日本の免許制度で考えると、155ccはやや不思議な排気量に映るかもしれません。普通自動二輪免許があれば400ccまで乗れるため、「なぜ155ccなのか」と感じる人もいるでしょう。しかし、軽さ、扱いやすさ、高速道路対応という現実的なメリットを考えると、日本の道路事情にはかなりマッチしたカテゴリーともいえそうです。”大型ほど気負わず、125ccより遠くへ行ける”。XSR155は、そんな絶妙な立ち位置を狙った一台でした。

↑2026年のモーターサイクルショーで展示した「XSR155/125USインターカラー外装セット」は、ワイズギアから販売予定。
↑コンセプトモデルとして「HAPPY OUTSIDE BEAMS」が展示された。

スペック】

・本体サイズ:全長2,005×全幅805×全高1,075mm

・シート高:810mm

・車両重量:137kg

・エンジン:単気筒4ストロークSOHC・4バルブ

・総排気量:155cc

・最高出力:14kW(19PS)/10,000r/min

・最大トルク:14Nm(1.4kgf・m)/7,500r/min

・WLTCモード燃費:48.1km/L(クラス2、サブクラス2-2)1名乗車時

・メーカー希望小売価格(税込):539,000円

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