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2020/2/23 19:00

列島最西端を走る鉄道線「松浦鉄道」――興味深い11の真実

【松浦鉄道の真実②】磁器と石炭の輸送用に路線が敷かれた

松浦鉄道の興味深いところは、その生い立ちだろう。有田駅〜伊万里駅間と、佐世保近郊では、路線を設けた理由、そして線路を敷設した会社が異なる。

 

有田駅〜伊万里駅間の開業は1898(明治31)年とかなり古い。伊万里鉄道によって線路が敷かれた。明治時代、外貨を得る役割を果たしたのが、陶磁器だった。中でも有田で生み出される磁器は、海外での評価が高かった。江戸時代に生み出された有田の磁器だが、内陸にあったため、海に面した伊万里まで運ばれて、海外へ輸出された。この磁器の輸送に使われたのが、旧伊万里線(現在の有田駅〜伊万里駅間)だった。

 

一方、佐世保近郊の路線はどのような理由で誕生したのだろうか。

↑佐世保中央駅にある案内。昭和初期に珍しかった高架橋やトンネルで結ばれた路線ということで日本遺産に指定される

 

佐世保近郊の路線は1920(大正9)年3月27日、佐世保軽便鉄道という会社が相浦駅〜大野駅(現・左石駅)〜柚木駅(ゆのきえき/現在は廃駅)に路線を敷設したことにより始まる。当時の路線は軌間762mmと狭い軽便鉄道サイズだった。この鉄道は、この地区に点在する炭田で採掘された石炭を港まで運ぶために設けられた。

 

佐世保軽便鉄道は、名を佐世保鉄道と改めた後の1936(昭和11)年10月1日に国有化された。国鉄の既成路線とそろえるために、1067mmに改軌された。さらに北松浦半島に点在した炭田で採炭された石炭を、軍港の町・佐世保へ送るために、急ピッチで路線の変更と延伸工事が行われた。そして1944(昭和19)年4月13日に現在の松浦線が全通している。

 

戦時色を強めた時代、路線の整備はかなり無理をして進められたようだ。佐世保市内では住宅密集地に鉄道を通すために高架化、トンネルを貫いて路線とした。最後に残った区間の橋には、鉄筋の代わりに竹を利用するなど、今では考えられない工法で造られた橋すらある(詳細後述)。

 

松浦鉄道はそうした時代を生きた人々の思いが詰っている路線なのである。

 

【松浦鉄道の真実③】世知原線などの支線はすべて廃止された

旧松浦線は全通したころ、支線がいくつか設けられていた。肥前吉井駅(現・吉井駅)〜世知原駅(せちばるえき)間を世知原線が、佐々駅〜臼ノ浦間を臼ノ浦線(うすのうらせん)、左石駅〜柚木駅間を柚木線(ゆのきせん)が敷かれていた。みな石炭を運ぶために造られた路線である。

 

この支線はその後、どうなったのだろう。柚木線は1967(昭和42)年に、世知原線、臼ノ浦線は1971(昭和46)年に、いずれも廃線となっている。

 

北松浦半島に広がる松浦郡には多くの炭鉱が点在していた。北松炭田(ほくしょうたんでん)と呼ばれ、1950年代中ごろの最盛期には、炭鉱が98カ所もあった。そして約1万8千人の従業員が採炭に従事していた。そうした炭鉱も、石炭から石油へエネルギー需要が大きく変わっていき、1973(昭和48)年に鹿間町(しかまちょう/現・佐世保市)の本ヶ浦鉱の閉山により北松炭田は消滅している。

 

松浦線の沿線は採炭最盛期から20年もしないうちに、エネルギーの変革の大きな波にのまれていった。当時の地域経済は大変だったに違いない。

↑旧世知原駅構内にあるC11形蒸気機関車の動輪。近くに世知原炭鉱資料館(右下)があり、世知原線や炭鉱の資料を展示している

 

筆者は世知原線が通っていた世知原(現在は佐世保市世知原町)を訪ねてみた。路線跡はほとんどが遊歩道となり、かつてここに線路が敷かれていたことを偲ばせる。世知原駅の跡には蒸気機関車の動輪が置かれていた。旧炭鉱町にかつての賑わいはない。現在の世知原の主力産業は農業で、冷涼な気候を活かし、高級な「世知原茶」の産地となっていた。

 

 

【松浦鉄道の真実④】乗りやすい2人掛け+1人掛けのシート

ここで松浦鉄道を走る車両の紹介をしておこう。松浦鉄道は愛称をMRとしているため、車両の形式名は数字の前にすべてMRが付いている。

 

◇MR-600形

↑ライトグレーの細い帯を巻くMR-600形。ほかに橙の帯の車両が走る。総計で21両が在籍。主力車両として活躍している

 

愛称は「肥前WEST LINER」で、車体の側面に同文字が入る。車体の長さは18m、窓部分はブラック、その下にライトグレーもしくは、橙(だいだい)色の細い帯を巻く。橙色の帯は沿線の西海の海と九十九島(つくもじま)の夕映えをイメージしているとされる。

 

座席はセミクロスシートで、ロングシートと、4人掛け(2列×2)の対面形のボックス席8席と、1人掛けシート4席が並ぶ。ボックス席が通路の左右にある車両と異なり、通路が広く乗りやすい車両だと感じた。なおトイレは備えていない。

 

◇MR-500形

↑レトロな姿のMR-500形はイベント列車として走ることも多い。右上はMR-400形でこちらも1両のみが在籍している

1両のみ在籍するレトロタイプの車両で、愛称は「レトロン号」。座席は転換クロスシートで、松浦鉄道の車両の中で唯一、トイレを備える。通常は普通列車として走るが、カラオケ装置も搭載するために、イベント列車やレンタル列車(団体旅行、歓送迎会などに貸し出す)にも活用されている。

 

◇MR-400形

MR-500形と同じく1両のみ在籍する。松浦鉄道が誕生した頃の白い車体に、赤と紺色の2本の帯を巻く姿が特徴となっている。座席はセミクロスシート、中央部分にボックス席が4組、設けられる。

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