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2021/11/6 6:00

九州最南端を走る「指宿枕崎線」−−究極のローカル線珍道中の巻

【最南路線の旅⑤】早朝に山川駅で乗り換え西大山駅を目指した

指宿駅の一つ先の駅が山川駅だ。進行左手に山川港が見えてきてまもなく同列車の終点、山川駅に到着した。ちなみに、山川駅はJRの路線では最南端の有人駅でもある(ただし全時間が有人ではなく、時間・曜日限定ではあるのだが)。

 

乗った列車は山川駅の駅舎側の1番線ホームに到着、2番線ホームにすでにキハ40系1両が停車していた。到着してから3分後、山川駅発の西頴娃駅(にしえいえき)行き列車となって出発する。乗り換えは地上の構内踏切を渡ればすぐなので、手間いらずだが、何ともこのあたり慌ただしい。また興味深い車両の変更である。

↑鹿児島中央駅から山川駅まで乗車したキハ200系(右側)。山川駅から西大山駅までは左のキハ40系に乗り継いだ

 

キハ200系は2両で運行、そして乗り継ぐキハ40系は1両での運行となる。要はこの先の区間は乗車する人がそれだけ減るということなのだろう。でも他に理由があるのではと推測したのだが、そのあたりの話はのちほど。

 

筆者が乗車したのは日曜日のせいか乗客が少なく、地元の利用者は皆無だった。観光客が数人、残りは〝乗り鉄〟といった具合だった。少なめの乗客を乗せて走り始める。キハ200系よりも、古い国鉄時代生まれのキハ40系。次の大山駅の手前には勾配区間があり、ディーゼルエンジンを高らかに奏でながらゆっくり勾配を登っていく。車両の必死さが伝わってくるようだ。それでもスピードは上がらず……。このあたり鉄道好きにとって、たまらなく楽しいところでもある。

 

大山駅を過ぎると、畑地が見渡す限り広がるようになる。そして朝の7時48分、この日の最初の目的地、西大山駅に到着した。

↑西大山駅を入口から見る。小さな入口の階段と屋根が一つ。対して駐車場は広い。案内板にはPRと注意事項がかかれていた

 

西大山駅はJR最南端の駅で、ホームに「JR日本最南端の駅」という標柱が立っている。鉄道最南端の駅というと、現在は沖縄県の沖縄都市モノレール線の赤嶺駅となるのだが、2本レールの鉄道ならば、ここが正真正銘の最南端の駅と言って良いだろう。

 

筆者は西大山駅に訪れたのは3回目だったが、列車で来たのは今回が初めてだった。車ならば、鹿児島市から1時間ちょっとの距離。ところが列車を使うと1時間30分〜50分かかる。この先に行こうとなるとさらに大変だ。

 

駅前には大きな駐車場がある。列車利用の人向けではなく車利用の観光客向けのものだ。多くの人が薩摩半島を巡るドライブの一つの目的地として西大山駅を訪れて〝最果て感〟を楽しむ。さらに魅力なのが、ホームの先から秀麗な開聞岳が望めることであろう。この開聞岳が、同駅のアクセントにもなっている。美景がなければ、ここまで観光客に人気にはならなかったように思う。

↑西大山駅前には土産物屋(右上)がある。ここでは地元マンゴー商品が人気。指宿観光協会が発行する「駅到着証明書」も販売されている

 

さて、西大山駅へ降りたのはいいのだが、次に乗る枕崎駅行きの列車は4時間待ちになる。何をして過ごそうか、とても悩んでしまうのであった。

 

【最南路線の旅⑥】これぞ正真正銘の日本最南端の踏切へ

4時間の合間に、まずは2本の上り列車を撮影することにした。8時36分と、9時11分の2本が西大山駅へ到着する。どこで撮るかを悩みつつ選んだのが、西大山駅の西側にある西大山踏切という遮断機付きの踏切。この踏切は正真正銘、日本の鉄道最南端の踏切となる。

↑日本最南端の踏切となる西大山踏切をキハ40系が通過する。背景に開聞岳が望める立地だ。やや雑草が多いことが難点だった

 

もう一か所は、西大山駅の東側にある中学校踏切付近。ここから開聞岳を背景に走る列車を撮影してみた。中学校の名がつく踏切だが、現在、付近には中学校がない。昔あったことからこの名がついたのであろう。よく知られている撮影地としては、他に駅の東側、徒歩20分のところに県道242号の大山跨線橋がある。青春18きっぷの2010年夏用ポスターがここで撮影された。スケール感のある景色が魅力だが、こちらは開聞岳側に歩道がなく、危険と隣り合わせのため、あまりお勧めできない。

 

さて、中学校踏切の横から撮った開聞岳が下記の写真。撮ってはみたものの、西大山駅の上に電柱と電線があって今ひとつだなと思った。

↑中学校踏切(左上)から撮影した開聞岳とキハ40系。右下に西大山駅がある。電信柱がかなり気になる場所だった

 

とはいえ、先の西大山踏切が日本最南端の踏切ならば、この中学校踏切は日本で2位となる南にある踏切ということで、記憶には残るように思った。

 

【最南路線の旅⑦】次の列車までの4時間空きはさすがに辛い

2本目の上り列車が9時11分に通りすぎ、次の枕崎駅への下り列車の発車は11時54分と時間が大きく空いてしまった。さてどうしたら良いのだろう。

 

まずは西大山駅前の土産物店で、指宿名物のマンゴープリンとマンゴーサイダーを店内でいただいた。さらに指宿観光協会が発行しているJR日本最南端の「駅到着証明書」を購入。同土産物店にはトイレもあるので、休憩に最適だ。ただ、店の人たちと会話をしつつも、小一時間の滞在時間が精いっぱい。とりあえず動こうと、店を出たのだった。

 

向かったのは西大山駅の一つ先の薩摩川尻駅(さつまかわしりえき)。地図で調べてみると、距離にして1.6km、約20分で着けるとあって、ちょうど暇つぶしには最適だなと思って歩き出した。

↑西大山駅から隣の薩摩川尻駅まで歩く途中に出会った光景。広々した畑と美しい開聞岳の組み合わせが絵になった

 

西大山駅から薩摩川尻駅まで歩いたのは正解だった。前述した西大山踏切から畑の中に伸びる道をのんびりと歩く。畑には整然とキャベツが植えられ、その畑ごしに海が見えた。歩くにつれ、畑の先にそびえる開聞岳がよりきれいに見えるようになる。何ともすがすがしい光景に出会ったのだった。とはいっても、のんびり歩いても、30分ほどで隣の駅の薩摩川尻駅に着いてしまった。

 

西大山駅がJR最南端駅ならば、この薩摩川尻駅がJRで2番目の南の駅となる。ただ、何もない駅なので、観光客は皆無だった。2番目というのはそれほど魅力にはならないようだ。また、薩摩川尻駅からは、近いにもかかわらず開聞岳があまり見えない。美景が見えたら、観光客も訪れるのだろうが。

 

ちなみに、指宿市川尻という大きな町が駅から2kmほど南、太平洋に面した場所にあり、この地名から駅名が付けられたと推測される。とはいえ、川尻の人は指宿枕崎線を使わず、ほぼ100%が車利用となるようだ。駅に隣接する踏切を通る車はそれなりにあるのだが、駅にいる人は皆無だった。これから1時間半、列車が来るまでどうしたら良いのだろう。

↑JRで2番目に南にある薩摩川尻駅。指宿市川尻から遠いため利用者はほぼいない。なぜかきれいな電話ボックスが設けられていた

 

仕方なく駅のベンチに座って、しばらくうたた寝。朝早く起きた眠気を取り去る。それでも時間がもたずに駅付近をぶらぶら。軌道用の重機が置かれていたり、人がいない駅なのにきれいな電話ボックスがあったり、ちょっと不思議な駅でもあった。そんな時に農家の男性が通りかかった。

 

駅の裏手にあるハウスで野菜づくりをしている方だった。日中、この駅で列車待ちをする人はほとんどいないそうだ。利用は朝夕に乗降する学生ぐらいなのだろう。

 

この日は日曜日だったので、「仕事はいいんだ」と長い間、世間話に熱中してしまう。いろいろ話をするうちに、薩摩半島のこのあたりは「意外に雨が降らない」と聞いた。それでも山の上に池田湖があって、この付近は水不足にならないそうだ。九州はここ数年、集中豪雨の被害にあった地区も多い。同じ鹿児島県、隣県の宮崎県を走る日南線が、豪雨災害のため運休となっている。ただ、夏はかなり暑い地区だそうで、「このあたりでは、夏は北海道へ行って、向こうで野菜づくりをする人がいるね。で、冬はこちらに戻ってきて野菜をつくるんだ」そうだ。

 

冬でも温暖な気候の薩摩半島の夏はさすがに暑い。一方、北海道では冬には農作業はできない。日本列島の南北を行き来するという思いきったことをする農家の人たちが出現していることを初めて知った。そんな会話を楽しんでいるうちに時間が過ぎていく。暇だったものの、男性の出現で有効な時が過ごせたのだった。

 

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