近年の扇風機市場は「高機能モデル」の激戦区。DCモーターによる静音設計や、自然な風を再現する独自の羽根形状など、多くのメーカーが「心地よい風の質」を追求した製品を次々と投入しています。もはや、風がやさしくて静かなことは高機能扇風機として当たり前のなか、掃除機で人気のシャークニンジャ(以下、シャーク)が今までにない形状の扇風機を投入してきました。
それが、「Shark TURBOBLADE ハイパワータワーファン」(以下、TURBOBLADE)です。これまで数多くの高級扇風機を体験している筆者ですが、本製品を実際に使って驚いたのが「睡眠時の心地よさ」。家電のプロをも唸らせたその実力を、自宅での検証をもとに詳しくチェックします。

タワー型ファンの常識を塗り替える可動ギミック
現在、家庭用扇風機の主流は、昔ながらのプロペラ(リビング扇)型と、スリムな「タワー型」の2つに大別されます。なかでもタワー型ファンは、その名の通り細長い形状をした扇風機のこと。一般的な扇風機と比較して高さはありますが、設置面積が少なくて済むため、狭い脱衣所や家具の多いリビングでも邪魔にならないのが魅力です。
このほか、送風口が縦に長いので全身に風を届けやすく、ファンが露出していない構造なので子供やペットがいる家庭での安全性も高く評価されています。今回紹介するTURBOBLADEも、このタワー型ファンに分類される製品。ただし、本製品は複数のパーツが可動することで、本来のタワーファンでは実現できなかった、さまざまな「快適」を実現してくれます。

TURBOBLADEで可動する箇所は大きく4点。ひとつは名前の由来ともなった「ブレード」部分です。タワー型ファンは通常、縦長の送風口が固定されていますが、本機はこの送風口部分を回転させて横長や斜め形状に変更できます。

さらに、ブレード部分にある送風口は3つのユニットに分かれており、左右の吹き出し口ユニットも手動で角度を変更可能です。それぞれの角度を調整することで1方向に風を集中させる以外に、異なる2方向への同時送風も可能。たとえば「食卓とリビング両方に風を送る」といった使い方もできます。

ちなみに、本機は基本的にパーツを手動で動かすのですが、唯一自動で駆動するのが土台部分です。この土台をリモコン操作で左右に回転させられるほか、45度/90度/180度の3段階から選べる自動首振り機能も備えています。ブレードの角度をあらかじめ作り込んでおき、土台の首振りと組み合わせることで、従来のタワーファンでは不可能だった「立体的」な送風が可能なのです。

1台2役の送風で部屋の快適さが格段にアップ
長々と説明しましたが、この「いろいろな場所がバラバラに稼動する」という便利さは実際に使ってみるとよくわかります。我が家ではTURBOBLADEを最初筆者の仕事部屋で利用していましたが、ブレードを縦にすればデスク脇の限られたスペースにも難なくフィット。このとき、下のユニットは自分に直接当たるようにし、上のユニットはエアコン方向へ向けてエアコンの風を拡散させるようにすれば、自分を冷やす扇風機としての役割と、部屋全体の空気を循環させるサーキュレーターの役割を1台で両立できます。送風角度をバラバラに変えられるTURBOBLADEならではの利点です。

しかも、本機はBLDC(ブラシレスDC)モーターを採用で、風の当たり方も非常に滑らか。風量は10段階の細かな調節が可能で、作業に集中したいときでも不自然な風の強弱によるストレスを感じにくかったのが印象的でした。そのうえ、風の勢いもなかなかのもの。たとえば、風量5に設定して約3m離れた場所で風速を計測したところ、2.7km/hをマーク。離れていても心地よいそよ風を感じられます。最大風量の10では、3m先でも4.3km/hと、しっかり涼しさを得ることができました。

ただし、気になったのがユーザーインターフェースの割り切りです。前述したように、本製品は操作のほとんどをリモコンで行うのですが、専用リモコンはテキストによる説明が一切ないアイコンのみの表示。電源や風量の調整は直感的にわかりますが「首振り角度の切り替え(45度/90度/180度)」や「自動切タイマー(1/2/4/8/12時間)」、さらには「モード変更(通常/おやすみ/ブースト/リズム)」といった複数のステップを伴う機能は、どのアイコンが何を指しているのか、最初は説明書を見ないと判断がつきにくいと感じました。

また、本体の状態を示すのは5つのLEDのみのため、現在の風量やモード、タイマーの残り時間、選択している首振り角度といった「現在の設定状況」が把握しにくい点もやや不便に感じました。せめて風量だけでも、数値でパッと判別できるディスプレイがあると便利だったはずです。
身体全体を包み込む、いままで感じたことのない風の感触
TURBOBLADEを1か月利用した筆者が一番おすすめしたいのが寝室での使用。ここで活躍するのが、ブレードを横向きにして風を層のように送り出す「エアブランケット」とよばれる機能です。これはTURBOBLADEをベッドの足元に置き、ブレードを水平にして吹き出し口を微調整することで、風が文字通り毛布のように布団の上を均一に流れるという機能。

そもそも、普通の扇風機ではダブルベッドで「夫婦ふたりに均一に風を当てる」ことも至難の業。そのうえ、普通の扇風機は足元に置くと足だけに風が強く当たり、頭と足の温度差による不快感で目が覚めてしまうことがあります。しかしTURBOBLADEは、これまでにない「面」で送る風で睡眠を邪魔しません。室温が25℃を越えると寝苦しくエアコンをかけたくなる我が家ですが、今年は室温27℃(湿度50%)でもTURBOBLADEだけで心地よく過ごせています。夏になって温度と湿度が上がればエアコンも併用することになりそうですが、それでもTURBOBLADEがあれば快適なままエアコン稼動率を下げて省エネになりそうです。
ちなみに、左右のユニット角度を個別に変えられる点も、夫婦で並んで寝ている際に重宝しました。「全体に風を均一に当てたい」「頭を強めに冷やしたい」といった、個々の好みに合わせた風の分配が1台で完結。お互いの睡眠を妨げずに、自分好みの涼しさを手に入れられるのは、これまでのタワーファンにはなかった大きなメリットです。



気になる点もあるけれど刺さる家庭には唯一無二の製品になりそう
正直に言って、本機を初めて見たときの感想は「デカい」でした。日本の住宅事情を考えると、最初はそのアメリカンなサイズ感に圧倒され「我が家に置けるだろうか」と一瞬怯んだのも事実です。しかし、実際に設置してみると、ブレードを縦にしている限り床の専有面積は一般的なタワーファンと大差ありません。それ以上に、このサイズを許容させるだけの価値が本製品にはあります。
なかでも特に衝撃的だったのは、やはり「エアブランケット」機能でしょう。我が家の寝室は決して広くありませんが、それでもこの快適さが得られるならこのサイズも許容できると夫婦で意見が一致しました。

本体の大きさだけではなく、操作インターフェースの分かりにくさや、多くの調整を手動で行わなければならない点など、本製品は「すべて満点」と言える製品ではありません。しかし、リビングで離れた2地点に同時に風を送る、あるいは自分専用の理想的な気流を構築するなどの、この製品にしかない機能の魅力が不満を上回るという家庭は多いはず。既存の扇風機の風に不満がある場合は、一度チェックしてほしい製品だと思います。