本・書籍
2020/6/17 21:45

これは、恋愛の「サバイバルキット」だ!——『モテたいわけではないのだが』

テレビを見る時間が日に日に長くなっている。ニュースや情報バラエティー番組はもちろんカバーしていて、最近は新しいドラマがないので、過去の海外ドラマを見直している。筆者が好きなのは『ビバリーヒルズ青春白書』とか『メルローズ・プレイス』、そして『OC』などに代表される、アメリカ西海岸を舞台に繰り広げられる恋愛要素が強めのソープオペラ系青春ドラマだ。

 

 

モテたい気持ち

男たちの「モテたい」という気持ちは昭和の日本映画であれインドのぶっ飛んだミュージカル映画であれ、もちろん筆者が愛してやまないアメリカ青春ドラマであれ変わらない。それと同時に、男たちの気持ちをかわしたりいなしたりする女子たちの立ち居振る舞いも変わらない。

 

こうした世代に関係なく盛り上がれるだろう話題を正面からとらえたのが『モテたいわけではないのだが』(トイアンナ・著/イースト・プレス・刊)という一冊だ。必要以上にモテたくはないけど、一応彼女は欲しい。でも、うっかりガツガツしてそういうオーラを出したくない。そうあるための心得を女子目線からつまびらかにしてくれる男子のためのサバイバルキットだ。

 

 

恋愛における足切り

サバイバルキットと言ったことには理由がある。著者のトイアンナさんが“足切り”という言葉を印象的に使っているからだ。恋愛においても、ある一定の基準を満たしていない場合は足切りに遭い、それが続いてしまうと、あっという間に彼女いない歴十数年というラベルが貼られてしまう。大切なのは、“男子”という呼ばれ方の響きが自然なうちに、プロアクティブな姿勢で足切りに遭わないようにする準備を整えておくことだ。まずは章立てを見てみよう。

 

はじめに

・ファッションをととのえる

・メンタルを整える

・コミュニケーションをする

・深いお付き合いをする

 

「はじめに」の最初の部分で紹介されるのは、この本が出版された2018年現在での男子たちのアベレージな恋愛観だ。

 

漫画やアニメなどのコンテンツで「モテる」設定は大量に登場します。バリエーション豊かな女性たちが都合よく登場し、主人公を好きになる作品は今も健在です。しかしそれを「絶対に実現したい」あるいは「実現するために努力してもいい」と思える男性はそこまで多くなさそうです。

「モテることはいいことだ。けれども、そこまで頑張るほどじゃない」

これが20代男性のリアルとしてしっくりくる言葉ではないでしょうか。 

「モテたいわけではないのだが」より引用

 

 

圧倒的な量の聞き取り調査から浮かび上がるもの

著者のトイアンナさんは、外資系企業でマーケティングを担当後ライターとして独立し、800名を超える相談実績から導き出した恋愛・婚活分析論を展開している。ローデータの部分がしっかりしていることをうかがわせるキャリアだと思う。この本は、そういうローデータを収集するための丁寧なヒアリング調査の上に成り立っている。

 

自分と大して変わらない男がそつなく彼女を作り、そのままそつなく結婚に進んでいくプロセスに対して、男が感じる嫉妬と疑問を明らかにすること。こう言うと、本書の方向性がさらに明確になるだろう。そしてその方向性は、とても具体的な基準の上に成り立っている。

 

ひとくくりに「女性」と言っても、好みは人それぞれです。男性に「スレンダー好き」「グラマラス好き」がいるように、外見ひとつ取っても「こうすれば誰からもモテる」という方程式はありません。しかし「女性が無意識に男性を足切りする際、基準にしているポイント」には共通項が存在します。

                      「モテたいわけではないのだが」より引用

 

その共通項を皮膚感覚で理解できるかできないか。それが大きな分岐点となるのかもしれない。

 

 

自分について推し量るチェックリストとして

ファッション、メンタル、コミュニケーション。すべて言い尽くされている感が否めないとする人もいるだろう。しかし、である。言い尽くされているのを自覚しているのに、実践できていないことがあまりにも多すぎるからいまだに分岐点が存在し、そこを踏み間違えた結果として足切りに遭ってしまうのだ。

 

夕方のニュースで6時ちょっと過ぎから始まる特集コーナーの“結婚相談所定点観測シリーズ”を思い浮かべた。20回以上お見合いを重ねて結婚に至らなかった男性に対し、カリスマ婚活アドバイザーが行う熱血指導を追う、あれだ。取り上げられるのは極端なケースばかりかもしれないが、女性が抱く“足切り”の基準ポイントと共通項の数々が端的に切り取られ、呑み込みやすく示される。

 

筆者が『ホットドッグプレス』や『ポパイ』そして『週刊プレイボーイ』の恋愛講座を読み倒していた時代と今とではライフスタイルも恋愛観もかなり変わっているが、基準ポイントの一番プリミティブな部分はずっと同じなのだろう。ならばこの本は、冒頭ではサバイバルキットと形容したけれど、むしろチェックリストとしての働きが優先されるべきかもしれない。

 

【書籍紹介】

モテたいわけではないのだが

著者:トイアンナ
発行:イーストプレス

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