24時間365日、最新の気象・防災情報を発信し続ける「ウェザーニュースLiVE」。YouTubeの登録者数は92万人を超え、日々の生活を支えるコンテンツとしてますます多くの人に愛されています。この番組を毎日生放送でお届けしているのが気象キャスターたち。GetNavi webではそんな皆さんの活動を紹介するとともに、それぞれのプライベートな一面に迫った連載「夕虹は晴れ! ウェザーニュースキャスター」を展開中! 第8回は特別編として、読者の皆さんからの要望も多かった気象解説員の山口剛央さんと白井ゆかりキャスターとの特別対談を実施。白井キャスターに聞き役になっていただき、底の知れない山口さんのいろんな面を引き出していただきました。
<ウェザーニュースLiVE×GetNavi web連載>
第8回・山口剛央解説員&白井ゆかりキャスター/特別編≪前編≫
【山口剛央さん、白井ゆかりさん撮り下ろし写真はこちら】
きっと多くの方が、“この人、何にもないんだな”と感じていると思います(苦笑)
白井 僭越ながら私から山口さんの紹介をさせていただきますと、ひと言でいえば、1を質問したら10以上の答えが返ってくる方です。特に地震と台風に関する知識量が日本一、いや世界一と言っても過言ではなく、いつも詳しく、そして分かりやすく気象の解説をしてくださるので、私たちキャスターはすごく助けられています。
山口 いえいえ、とんでもございません。
白井 しかも気象のことに限らず、他愛のない日常会話でも10以上のことを返してくださる。それも、ちゃんとオチをつけて。そこには関西魂があるのかなぁって勝手に思っていますけど……ありますよね?(笑)
山口 ありますね。話を落とさないと気がすまないんですよ(笑)。でも、さすがに10以上の答えを返すというのは言いすぎです。せいぜい、プラス0.5程度です。
白井 いやいや、その0.5の深みが違うんですって。だからこそ、聞き手のこちらとしてはいつも大満足な気持ちになるんです。
山口 それでも、全部が全部プラスアルファの答えができているとは思っていませんよ。やはり気象以外の話題を振られると、腕を組んで“う〜ん……”って悩むことがありますから。
白井 あ、それはきっとわざとです(笑)。本番中の私たちは、むしろそうやって困らせて楽しんでいるところもあるんです。“なんでも答えられる知識豊富な山口さんでも分からないことがあるのかな?”って。そうしたところも含めて番組を一緒に盛り上げてくださっているので、私たちキャスターは本当にいつも感謝しています。
山口 ……恐縮です。
白井 山口さんとしっかりお話をしたのって、多分2018年に山口さんが「ウェザーニュースLiVE」の解説員になられてからですよね。
山口 それぐらいですね。
白井 お話をするまでは、物静かで、ちょっと固い方なのかなという印象を持っていました。でも、どなたに対しても必ず敬語でお話をされていて。それが意識してのことなのか、それとも元からそういう性格なのか、どちらなんだろうと思っていたら、ふとした時に関西弁が出ていたので、“あ、これがきっと素の山口さんなんだろうな”と思ったのを覚えています。
山口 私、出身が京都なものですから、普段の言葉でしゃべろうとすると関西弁になってしまうんです。ですから、誰に対しても敬語で話すようにしているんです。
白井 そういうことなんですね。それからもよく観察していると、目上の方にはもちろん、キャスターや全スタッフさんに敬語で話されていて。しかも物腰が柔らかくて、ものすごく接しやすい方なんだなと当時は思っていました。
山口 当時は? 今は印象が変わっちゃいましたか?(笑)
白井 (笑)。もちろん、いい意味でですよ。しゃべればしゃべるほど、いろんなネタがどんどんと出てくるし、本当に楽しい方だなと思っています。私の印象はどうですか? 変わりました?
山口 初めてOAでお仕事をさせていただいた時からすごく話しやすくて、回を重ねるごとに、親しみやすさも増していきましたから、昔も今もずっと私の中ではやりやすい方という印象ですよ。
白井 お〜、嬉しいです!(笑)
山口 だからといって、やりづらいキャスターさんがいらっしゃるわけでもないんですが、本番では2人だけで画面に映ることがありますから、まだ打ち解けていないとぎこちない空気が視聴者にも伝わってしまう気がして。そうしたことが白井さんとは、最初からなかったですね。
白井 良かったです。でもそれはきっと、山口さんがブリーフィングの時から気さくに話してくださるからというのもあると思います。というか、山口さんはブリーフィングの間、ずーっとしゃべってますよね(笑)。
山口 話のネタがある時にはそうですね。ただ、私の場合はネタといっても、ちょっと変わっているじゃないですか。ですから、自分でもどうかなと思うこともあるんですが……。
白井 セミやダンゴムシの観察と記録ですよね。虫以外にも、地震計といった自作の製作物のお話だとか。それも、すっごく嬉しそうにお話しされていて。「聞いてくださいよ。実はですね……」って。そのお姿を見て、“あ〜、きたきた!”といつも思っています(笑)。
山口 ……マジですか。めっちゃ、恥ずかしい(笑)。
白井 ああいった話題はどのキャスターにもされているんですか?
山口 番組中に話題が出たことのあるキャスターさんだけです。何も知らない人にいきなり話し始めても戸惑われるだけですから。
白井 そうか。そうですよね。いきなりダンゴムシとか地震計の話をされても、「……え? あ、はい」ってなりますもんね(笑)。
山口 もちろん、天気が荒れている日のブリーフィングではしませんよ。その時は天候の話だけになりますから。でも、天気が落ち着いていて、時間がある時はしゃべりたいことを一方的に話してしまいますね。しかも、それを真剣に聞いてくださるので、私としてもありがたくて。どうでもいい話題ばかりですが、趣味を誰かに聞いてもらえるって、すごく幸せなことですから。
白井 いえいえ、私たちも楽しんで聞いていますよ。それに、番組で話せる話題を提供していただいているようなところもありますからすごく助かっています。きっと、山口さんの趣味の話を楽しみにされている視聴者も多いと思いますし。
山口 そうですか?
白井 たくさんいますよ。山口さんがどんなことに興味を持って普段どんな生活をされているのか、キャスターたちもみんな興味津々ですから。私の勝手なイメージですけど、山口さんって日々黙々とお仕事をされ、家に帰ったら製作物に没頭されている感じなのかなと思っているんです。
山口 全くそのとおりですね。ほぼ、それが全てです。きっと多くの方が、“この人、何にもないんだな”と感じていると思いますが(苦笑)、本当に何もない男です。ただ、私としては、そろそろそういうのから多少は脱却して、皆さんと同じ目線の会話ができるように頑張りたいなと思っていまして。
白井 え、どういうことですか?
山口 たまにはしてみたいんです。「今、流行っているあれ、私も食べましたよ」といった話とか。
白井 多分無理だと思います(笑)。
山口 せめて、「皆さんが話題にしていたあそこ、仕事帰りに昨日行ってきましたよ」くらいのことが言えるようになりたいなと(笑)。
白井 たしかに、それはそれで興味をそそられますけど。「どうしたんですか、山口さん!」って(笑)。でも、私たちとしては山口さんに「こういうの興味あります?」と聞いて、「いえ、ないです」って即答されるのを期待しているところがあって。そこは裏切らないでいてほしい気持ちもあります(笑)。
山口 そうか、裏切りになってしまうんですか(苦笑)。なるほど。では、今後も変わらずこのままでいるように務めます。
季節感を表す言葉で悩むと、いつも山口さんを頼っています
──山口さんは気象予報センターの解説員として番組に出演されていますが、番組以外では普段、どういったことをされているのでしょう?
山口 仕事の流れを簡単に説明しますと、まず出社してから、その日の気象の解析をします。具体的には、ウェザーニューズの気象予報センターでは毎日その日の全国の天気の傾向を表した図を作っていますので、それを確認しつつ、自分のほうでも予測モデルを作成し、それぞれを比較しながら、実際にどういう雨の降り方をしそうかといった予測をしていきます。予測図にはいろいろあり、絶対にブレ幅が出るんですね。Aの予測モデルだと雨が降ると出ているけど、Bは降らないと予測している、といった感じで。そんな時、どちらの予測に重きを置き、番組ではどう伝えていこうかということを本番の約1時間前に考えています。
白井 伝えるのが難しい季節や時期のようなものはあるんですか? 例えば、冬場は何日も同じような天気が続くから、その変化をいかに伝えていくかに苦労されたり。
山口 一番難しくて、予報を外すと大きな影響が出てしまうのはやはり梅雨ですね。予想とは違って大雨に直結してしまったりするとものすごく落ち込みます。
白井 今年(2022年)は梅雨明け発表がいつ頃なのかで随分悩まれていましたよね。
山口 そうでしたね。気象庁も相当悩んでいたようでした。あとになって「梅雨は明けていなかった」と修正が入りましたから。私も気象に興味を持って随分と長い年月で天気を見続けていますが、梅雨が明けたあとに、もう一度梅雨入りして、再び梅雨明けしたというような天候の変化はあまり記憶にないです。それぐらい2022年は不思議な梅雨でした。
──キャスターの皆さんは本番前、どのような準備をされているのでしょう?
白井 私は午後の時間帯の番組を担当させていただくことが多いので、最初にその日の天気がどのような流れできているのかを確認するところから始めます。そのあとで、午後のこれからの天気の動向や週間の予報を、当日一緒に番組を担当される解説員の方にブリーフィングで教えていただきます。特に山口さんの場合は細かい数字を教えてくださるんです。気温の変化や雨量など、いろんな情報を詳細に教えてくださるので、それが番組内で自分がトークをする時の材料にもなっていて本当にありがたいです。
山口 いえ、滅相もないです。
白井 でも、こうしたブリーフィングが行われるようになったのって、実は『ウェザーニュースLiVE』になってからなんです。以前の番組(『SOLiVE24』/2009〜2018年)ではしていませんでしたから。
山口 そうだったんですか? それは知りませんでした。
白井 解説員の方が作成されたメッセージシートを本番前に確認したり、自分が担当する前の時間の放送を見て天気の流れを知っておくということはしていましたが、基本的には本番で解説員の皆さんが中心となって天気のことを語ってくださっていたので、私たちはあくまで聞き役という感じでした。ですから、こうして必ず本番前にブリーフィングをするようになってからは、キャスターだけで天気をお伝えする時間も以前と比べてかなり精度が上がっているんじゃないかという気がします。
山口 私は今のやり方しか経験していないのですが、白井さんに限らず、キャスターの皆さんは、事前にご自身でその日の天気の流れを調べて、その上でブリーフィングに来られますよね。それは、皆さんが番組の中で発言する天気の話題にしっかりとした根拠をもたせることにも繋がっていますし、いろんな情報を的確に自分の中で咀嚼されて、それを視聴者に届けることにもなっている。皆さん、本当に勉強熱心なので、そこはいつも頭が下がる思いです。
白井 いえ、私たちは解説員の皆さんがいないと本当に何もできませんから。特に私は言葉の使い方に苦労していて、原稿を書く際も季節感をどう表現すればいいのかで悩んでしまうので、いつも山口さんに頼ってしまっているなって思っています。
山口 季節感や体感の表現は難しいですよね。“ひんやり”と“肌寒い”では、言葉から受け取る印象って人によってそれぞれですし。
白井 そうなんです。不特定多数の方に対して同じように“これぐらいの気温なんだな”ということをどうやったらうまく伝えられるんだろうと、毎回悩んでいます。
山口 どうしても多少は主観が入ってしまいますしね。ウェザーニューズ社には全国の放送局に向けてそれぞれの地元の天気予報の情報を出す「放送気象」という部署がありまして。私はそこに7年くらいいたので、その時に随分と鍛えられました。といっても、まだまだ怪しいところがあるんじゃないかと気を張っていますけど。
──そうしたお話を聞くと、番組内で行われている「キーワードランキング(※)」は一般の方々がその日の気温などに対してどのような表現をされているのかを知れる機会になっているのかなと思います。
※ 視聴者から送られてくるリポートの中から多く使われているワードをキャスターがクイズ形式で当てるコーナー
白井 たしかにそうですね。皆さんが普段、どういう言葉を使っているのかがよく分かりますから。あのランキング、なかなか正解が読めなくて大変なんですけど(苦笑)。
山口 たまに、ものすごく難しい時がありますよね。
白井 だから楽しいんですけどね。私、かなり本気でやっていますし(笑)。それに、あそこで正解を出せると、残りの放送時間もいいテンション感でこなしていける気がするんです。
山口 そういうバロメーターにもなっているんですか。だからか、皆さんが外したあとに結構本気で悔しがっているのをよく隣で見かけます(笑)。
何を聞いてもらって構いませんよ。全力で答えますから
白井 山口さんは普段の放送で情報を伝える際に、気をつけていることはありますか?
山口 やはり、いかに分かりやすい言葉で話すかということですね。難しいことを難しいまま話すのは簡単なんです。頭の中にある知識をそのまま話せばいいだけですから。でも、それだと伝わりませんし、見ている方が理解できなければ情報の意味がないですよね。ですから、難しいことをいかに簡単に、簡単なことはより深く、深いことは面白く、ということを常に意識しています。
白井 おっしゃるように、解説員の皆さんはいつも分かりやすく噛み砕いて説明してくださるので、私も本番中に勉強をさせてもらっているような感覚になることが多いんです。その点は、ある意味で、自分のことを視聴者代表みたいに思っているところがあって。解説を聞きながら分からないことがあれば詳しく説明を伺い、視聴者さんからリアルタイムで送られてくる疑問に、“そうそう、私も気になる!”ということがあれば、その場で質問する。そうやって、視聴者さんと解説員の皆さんとの架け橋みたいな役割になれたらいいなといつも思っています。
山口 私にとってもキャスターさんはすごくありがたい存在です。一人で解説をしていると、それこそ独りよがりの内容になってしまいますから。分かりづらいこと、疑問に思っていることなどをキャスターさんから質問していただくことで助けられているところがあります。
白井 本番中に急に質問されるのは苦じゃないですか? むしろ、質問されたほうがやりやすかったりしますか?
山口 天気に関することであれば、全く苦じゃないです。それはどの解説員も同じだと思います。
白井 そうなんですね。私は、「これってどういうことですか?」とか、「じゃあ、これは?」って重箱の隅をつつくように何度も聞くと嫌がられるかなと思って、いつもまとめて1つか2つくらいに絞るように意識しているんです。あまり深く掘り下げすぎると、時間も足りなくなってしまいますし。
山口 いや、時間さえあれば、何を聞いてもらって構いませんよ。全力で答えますから。
白井 頼もしい! やはり、“1を聞くと10以上が返ってくる”山口さんですね。ちなみに、先ほど「天気に関することであれば」とおっしゃっていましたが、それ以外の話題に関してはどうですか? 山口さんは心が寛容でいらっしゃるので、結構たくさんのキャスターから思いがけない質問をされることが多いと思うのですが(笑)。
山口 あー、そっちですか……(苦笑)。荒れた天気の日はしっかりと天候をお伝えするというのが大前提としてありますが、穏やかな日は笑いがたくさんある楽しい番組でいいんじゃないかという思いがあります。ですから、何を聞かれても大丈夫ですよ。心の門戸は開きまくってますから。ノーガードで(笑)。
白井 ははははは! たしかにいつもノーガードですよね(笑)。
山口 なので、ぶっこんだ質問をされることにも何も恐れてはいないです。
白井 本当ですか?
山口 もう、どんどん来てもらえればと(笑)。
白井 こういう質問は困るな……というのもないんですか?
山口 ないです。大抵さらけ出しましたから、もう隠しているものも何もないですし。
白井 そう言われると、山口さんが戸惑うような質問を考えたくなりますね(笑)。
──山口さんが応援する阪神タイガースが負けた翌日に、内田侑希キャスターが野球の話題をぶっこんでくることもありますが、あれは……?
山口 あ〜、あれは……たしかにつらい時もありますね(苦笑)。
── 一度、“今日は野球の話をしない”という紳士協定を内田さんが破りそうになったこともありました。
白井 そんなことが?(笑)
山口 ありましたね。でも、あの時は事前にお互いの同意があり、そこはしっかりと守ってくださる方ですから心配はしていなかったんです。まぁ、でも、実際はちょっとだけドキッとしましたけど(笑)。それに、野球の話は来春までないでしょうし、今のところは穏やかですよ。
白井 春になってからのゆっきーからの再開宣言が怖いですね。「山口さん、そろそろやりますか!」って(笑)。
山口 プロ野球の開幕とともに始まるかもしれませんね。そうなったらまたバチバチですよ(笑)。
──では、この流れで聞いてしまいますが、質問で恐怖を感じるキャスターさんはいらっしゃいますか?
山口 えっ?
白井 このキャスターのぶっこみは怖いなぁっていう方、います?(笑)
山口 えぇっ!?(苦笑) ……そうですねぇ、ぶっこみ自体は苦じゃないので、全然平気なんです。ただ、ぶっこみの数が多い方が何人かいらっしゃって、ドキドキすることはあります。
白井 誰とは言わない?
山口 誰とは言いません。午前中の番組によく入られる方のような気がしますが(笑)。
白井 それ、かなり絞られますよ(笑)。
山口 (笑)。でも、全くもって、嫌だとか、困っているということはなく、むしろ本当にありがたく思っています。そうやって番組を盛り上げる中に自分も入れてもらえているというのは嬉しいですよ。
※「山口剛央解説員と白井ゆかりキャスター」による対談は後編へ。後編では山口さんのプライベートのお話も。
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撮影/小澤正朗 取材・文/倉田モトキ