車の移動が「エンタメを楽しむ時間に」。ソニーの技術が満載の自動運転車を体験してみた

ink_pen 2026/5/21
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車の移動が「エンタメを楽しむ時間に」。ソニーの技術が満載の自動運転車を体験してみた
会田 肇
あいだはじめ
会田 肇

カーライフアドバイザー。カーナビやドライブレコーダーなど身近な車載ITグッズのレポートを行う他、最近はその発展系であるインフォテイメント系の執筆も増えている。海外で開かれるモーターショーや家電ショーにも足を運び、グローバルな視点でのレポートに役立てている。日本自動車ジャーナリスト協会会員。

タクシーアプリを提供するS.RIDEは、横浜のみなとみらい地区で開催された「CENTRAL MUSIC & ENTERTAINMENT FESTIVAL 2026」(以下:CENTRAL)において、自動運転技術と車内エンターテイメントを融合させた特別車両の実証運行を実施。4月2日、その事前体験会をメディア関係者向けに開催しました。

配車システムの精度向上と同時に車内エンタメに注力

このプロジェクトは、将来のロボットタクシー(ロボタク)時代を見据え、新しい移動体験の価値を探ることを目的に、世界的なエンターテイメント企業となったソニーグループと、金沢大学発の自動運転研究スタートアップであるムービーズ、そしてS.RIDEが連携して実現したものです。

↑「自動運転×車内エンタメ」特別車両の出発式にあたって握手をするS.RIDEの橋本洋平代表取締役社長(左)と、ムービーズのエリック・ウェイ代表取締役CEO(右)。

いまやタクシーを呼ぶ手段としてスマートフォンを利用する人は多いのではないでしょうか。S.RIDEが提供するタクシーアプリ「S.RIDE」は、そんな時代に合わせてソニーグループが保有するAIとIT技術を活用して開発され、現在は首都圏の1都3県のほか、宮城県/茨城県/静岡県/愛知県/石川県/大阪府/熊本県でサービスを提供中です。

↑車両を呼び出すために使われたS.RIDEのタクシーアプリ。

さらにS.RIDEは、ビジネス層をメインとしたヘビーユーザー向けサービスの拡充(空港送迎、高級車利用など)のほか、法人契約プラン「S.RIDE Biz」を強化し、法人契約についてはすでに2000社を突破する実績を獲得しています。このようにユーザーを獲得しながら、S.RIDEは配車システムの精度向上による「すぐ呼べる・快適に移動できる」体験の最大化を追求してきたのです。

一方で、S.RIDEは新規領域の開拓も進める戦略を掲げており、その新たな領域としたのが、近い将来訪れる自動運転時代を見据えた、“車内でのエンタメ体験による価値向上”でした。

そのターゲットとしたのは、テクノロジーやアニメなどのコンテンツに興味を持つ層、および訪日外国人(インバウンド)層で、これをベースに将来は「S.RIDE Global Roaming」による海外配車アプリとの連携も視野に入れているということです。

ソニーグループの技術が実現する「動くシアター」

その新規領域の拡大に強く貢献しているのが、S.RIDEの株主となっているソニーグループのAI技術やコンテンツです。すでにS.RIDEでは没入型ホラーツアー「都市伝説タクシー」を展開するなど、コラボタクシーの運行も実現しています。

そうした中で今回の実証実験で目指したのは、ロボタク時代に向けた移動とエンタメの連携により提供されるプライベートな空間で、どんな体験価値を提供できるかという点です。

その実践のために準備された運行車両は、ムービーズが用意したトヨタ「アルファード(先代モデル)」。ここには、体験にふさわしいソニーグループの技術が満載となっていました。

その中でソニーが担当したのは裸眼で立体視が可能な「空間再現ディスプレイ」や立体音響システム。さらに“におい”制御技術「Tensor Valveテクノロジー」を提供し、ソニー・ミュージックソリューションズがIP展開を担当しました。

一方、車内には旅客機のビジネスクラスを彷彿させるような大型のセパレート型シートが用意され、乗員が専用ディスプレイを通して没入感あふれるコンテンツを楽しめる仕掛けとなっていました。

↑車内には裸眼での立体視を可能としたディスプレイが各シートに並ぶ。中央のスマートフォンを使い、降車場所を指定できる。
↑ソニーが開発した“におい”制御技術「Tensor Valveテクノロジー」により、キャラクターに応じた香りを楽しむことができた。
↑アルファードに搭載されたセパレート型シートは、旅客機のビジネスクラスと見まがうようなゆったりとしたもの。

走行にあたってはムービーズが、幅広い車両に取り付け可能となるアドオン型の自動運転技術を提供。安全運行のためにドライバーが乗車するものの、大半をステアリング操作なしで走行できる「自動運転レベル2+」を実現することになりました。

↑実証実験車両のルーフ上に自動運転用センサーを設置。中央にあるのがLiDARで、その周りには360度撮影するカメラが。さらに周囲にはミリ波レーダーが組み合わされる。

「レベル2+」の自動運転でスムーズな快適走行

そして、CENTRALが開催された3日間は、エリア内であれば配車アプリのS.RIDEからこの車両の乗車予約が可能となっていました。ここからCENTRALの会場であるKアリーナ横浜、横浜赤レンガ倉庫・赤レンガパーク、KT Zepp Yokohama、臨港パークへと向かうことができたのです。

↑横浜・みなとみらい地区の試走へ出掛ける実証実験車両。走行中はかなり人目を引く存在となっていた。
↑横浜・みなとみらい地区を試走する『ぼっち・ざ・ろっく!』コラボの「自動運転×車内エンタメ」車両。

この実証実験でコラボしたコンテンツは、音楽アニメとして人気を呼んでいる『ぼっち・ざ・ろっく!』で、これはCENTRALで上演されるコンテンツにも含まれていることから採用されました。アルファードの外装には、そのキャラクターがカッティングシートで貼られ、車内に入ればキャラクターのぬいぐるみも置いてあるなど、ファンの気持ちを盛り上げる工夫があったことも見逃せません。

↑実証実験車両の乗車口にはコラボした『ぼっち・ざ・ろっく!』のキャラクターがカッティングシートで貼られていた。ⓒはまじあき/芳文社・アニプレックス
↑車内にはコラボした『ぼっち・ざ・ろっく!』に登場するキャラクターのぬいぐるみが置かれ、気分を盛り上げる工夫もされていた。ⓒはまじあき/芳文社・アニプレックス

車内が走り出すとさっそく6分前後に編集された『ぼっち・ざ・ろっく!』のショート動画がスタート。映像が3Dで再生されると聞いていたので、視聴中に車酔いするかもしれないと身構えていましたが、実際はそんなことはなし。これは視聴者の視線をディスプレイがリアルタイムに把握して最適値に調整しているからなんだそうです。

加えてソニーの立体音響システムによる臨場感はもちろん、キャラクターに合わせた香りまでが演出として使われ、利用者はこのコンテンツで気分を高めて目的地へ到着できるというわけです。

↑試乗中に再生された『ぼっち・ざ・ろっく!』のショート動画。写真ではわからないが3D映像となっていた。ⓒはまじあき/芳文社・アニプレックス

走行中はドライバーが運転席に座っているとはいえ、目的地までステアリングを操作することは基本的になく、体験試乗したこの日も交差点に差しかかっても横断歩道を渡る歩行者をきちんと認識して自動走行。走行中に何度か“カックンブレーキ”を体験したものの、それ以外の動きはいたってスムーズでした。そして、映像と音楽を楽しんでいるうちに試乗は終了。この走りであれば、長時間乗車に合わせたコンテンツも楽しめそうだと感じました。

↑実験車両はほぼハンズオフのまま指定された区間を走行することができていた。

「移動」を「楽しみ」へ変えるS.RIDEのビジョン

今回の実証実験は、自動運転という「移動の自動化」だけでなく、車内での楽しみ(エンタメ)を融合させることで、単なる移動手段を超えた「体験」としての価値を追求するものです。今後S.RIDEでは、今回の実証実験で得られた知見を基に、「車内エンタメ×コト消費(観光・食事など)」を組み合わせたプラットフォーム化を加速させる考え。202X年の完全自動運転タクシーによる国内サービス開始を目指し、移動が単なる手段ではなく「心を動かす体験」となるモビリティサービスの実現を推進していく計画です。

↑京浜地区では4月19日まで『ぼっち・ざ・ろっく!』とコラボしたタクシーが走行していた。ⓒはまじあき/芳文社・アニプレックス
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