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2017/11/29 20:35

整形疑惑の“ジョン・レノン”だと!? ほぼ日手帳とビートルズが繰り広げた熱い一夜に潜入

2002年版の誕生以来、手帳のスタンダード・セレクションとして愛用され続けている「ほぼ日手帳」。LOFTの手帳部門の売上では13年連続ナンバーワンに選ばれ、2017年版は約67万部が販売された。手帳としての機能性はもちろん、手帳カバーでのさまざまなブランドやアーティストとのコラボレートも魅力のひとつ。2018年版は79種類ものラインナップとなり、その中でも話題となっているのが、ザ・ビートルズとのコラボレートモデルだ。

 

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↑会場に並べられた、ほぼ日手帳のザ・ビートルズとのコラボモデル

 

アートディレクターの秋山具義、吉田ユニ、イラストレーターの塩川いづみ3氏によるデザインで4種類販売され、それぞれ曲名にちなみ、素材やフォルムも異なっている。秋山は「ラヴ・ミー・ドゥ」と「ヘルプ!」、吉田は「イン・マイ・ライフ」、塩川は「ブラックバード」をイメージしてデザイン。手帳カバー全体はもちろん、内側のポケット、しおりなどにもザ・ビートルズにちなんだ意匠が盛り込まれ、持っているだけでうれしくなる。

 

その発売を記念して10月5日に六本木のライヴハウス「ABBEY ROAD」でトーク&ライヴイベント“ほぼ日のビートルズ・ナイト!”が開催され、糸井重里とムーンライダーズの鈴木慶一によるトークと、ザ・ビートルズのトリビュート・バンドのザ・パロッツのライヴが行われた。

↑手に手にほぼ日手帳を持つ本日の出演者、ザ・パロッツとマブジョン
↑手に手にほぼ日手帳を持つ本日の出演者、ザ・パロッツとマブジョン

 

ビートルマニアからも一目置かれる“本物”のバンド

まず、登場したのはザ・パロッツ。1990年に結成された彼らは、毎年イギリスはリヴァプールで開催されている世界最大のビートルズ・フェスティバル「ビートルズ・コンベンション」にアジアのバンドとして初めて出演を果たしたほか、2007年には英国を代表するロック・バンドのひとつ、アークティック・モンキーズのサポート・アクトも務めた。さらに2013年、日本ツアー中のポール・マッカートニーのプライベートパーティに招待されて、本人の前で演奏、さらに共演も果たすなど、世界各国のビートルマニアからも一目置かれている“本物”のバンドだ。

しかし、残念ながらジョン・レノン役のチャッピー吉井が9月12日に急逝。ポールのパーティでも“Hi, John!”と呼ばれたほどのジョンそっくりの演奏や立ち居振る舞いを観ることは叶わなくなったが、この夜は急遽、ザ・ファブラッズのジョン役である“マブジョン”こと馬渕英将が代役を務めた。

↑ザ・パロッツによるザ・ビートルズの楽曲が、会場を引き込む
↑ザ・パロッツによるザ・ビートルズの楽曲が、会場を引き込む

 

イベントに参加した人たちが食事やドリンクを楽しみながらスタートを待ちかねていたところに、ザ・パロッツが登場。1曲目の「ア・ハード・デイズ・ナイト」でいきなり会場内の温度をぐんぐんと上げていく。続いて「オール・マイ・ラヴィング」「ロール・オーバー・ベートーヴェン」「レット・イット・ビー」が演奏されていったが、目をつむるとまるでCDを聴いているかのような再現性で、日本のバンドながら海外でも通用し、高く評価されている理由がよくわかるものだった。

その後は「イエロー・サブマリン」「ひとりぼっちのあいつ」「抱きしめたい」を熱演。“マブジョン”との息もピッタリのパフォーマンスで、大きな拍手と歓声が湧き起こった。

 

はちみつぱいはビートルズがいなかったら存在していなかった

ザ・パロッツのファースト・ステージが終わると、糸井と鈴木が、「涙の乗車券」のB面曲「イエス・イット・イズ」をバックにステージ上に登場。司会から、どうしてこの曲を選んだのか? と問われて、鈴木が「“イエス・イトイ・イズ”と、“イット”と“イトイ”の発音が近いから」と説明して笑いを呼んだ。リアルタイムでザ・ビートルズを体験しているふたりだけあって、並々ならぬ思い入れがあり、トークはいきなりマニアックな内容に。

↑ほぼ日の代表、糸井重里氏と、ムーンライダーズの鈴木慶一氏
↑ムーンライダーズの鈴木慶一氏と、ほぼ日の代表、糸井重里氏

 

ザ・パロッツの演奏中に話していたという「ア・ハード・デイズ・ナイト」のイントロについて、あの“ジャーン!”という鳴りはどのようにして形成されているのかを喧々諤々と話し始める。また糸井が、鈴木がムーンライダーズの前に組んでいた、はちみつぱいはザ・ビートルズがいなかったら存在していなかったのか? と鈴木に問いかけると、音楽家としての鈴木慶一は存在しなかったと思うと答えて、かけがえのない存在であり、自らのルーツであることを明言した。さらにザ・ビートルズから過剰なまでの好奇心と集団でものを作ることのおもしろさを学んだと続け、夢中になっていた当時を糸井と思い出しながらも話は思わぬ方向に行ったり来たり。プロデューサーであるジョージ・マーティンがザ・ビートルズと出会った頃の説や、デビュー前の心情や環境、カバーの選曲の妙、バンドの編成論、マーケティングなき時代の活動形態、あまりにジョンに似ている“マブジョン”の整形疑惑、解散直前のポールの心情などをおもしろおかしく語り合った。

ザ・ビートルズの約10年間の活動に対して、ムーンライダーズの長さについて聞かれると鈴木は「集団でうまくやっていこうという気持ちがみんなにあるのと、みんなで何かを作っていくことに対しての愛情があるから。ひとりじゃだめだから、助けてよと言えるメンバーがいるから続くんです」と長寿の秘密を明らかにした。さらに糸井が「メンバーみんなが俺が一番という気持ちはないの?」と突っ込むと、鈴木は「全然ない。ムーンライダーズは全員ジョージ・ハリスンだと思う。でも、ジョージも時々カッとなるからね」と答えて、会場は爆笑に包まれた。

 

ザ・ビートルズの魅力と奥深さをあらためて知らされた2時間

20分の予定があっという間に過ぎ去り、30分に近づいたところで司会から声がかかって、ザ・パロッツのセカンド・ステージへ。糸井からのリクエストである「ノー・リプライ」からスタートし、「サムシング」を演奏したところで、メンバーが手帳のデザインの良さや感想を話してから「ラヴ・ミー・ドゥ」「ヘルプ!」「ブラックバード」「イン・マイ・ライフ」をパフォーマンス。生のサウンドを耳にして、手帳のデザインから生まれるイマジネーションがより深くなっていくような体験をさせてくれた。そして鈴木がリクエストした「ゴールデン・スランバー」へ。『アビイ・ロード』B面のハイライトである組曲で、続く「キャリー・ザット・ウェイト」〜「ジ・エンド」〜「ハー・マジェスティー」までを完全再現してくれた。その完璧なパフォーマンスを目の当たりにして、アンコールの拍手が鳴り止まず、再度ザ・パロッツが登場。“マブジョン”の存在感が光る「ツイスト・アンド・シャウト」で大団円を迎えた。演奏中も糸井と鈴木からの話しかけに答えて、ポールの前で演奏した時の裏話や演奏法などを、笑いを交えて披露。あっという間の2時間が終わった。

↑ザ・ビートルズ愛にあふれた面々
↑ザ・ビートルズ愛にあふれた面々

 

糸井と鈴木の愛情たっぷりのトークのおもしろさはもちろんだったが、何よりも驚かされたのはザ・パロッツのリアリティ。トリビュート・バンドに関して、正直なところカバー・バンドくらいの認識しか持ち合わせていなかったが、その重箱の隅をつつくほどのこだわりに感服させられっぱなしだった。楽器や奏法、歌い方はもちろんのこと、ちょっとした仕草やファッションまでとことん研究していることがわかり、認識を改めた次第。ポールも思わずステージに飛び入りしたのもよくわかるほどの魅力で、この日集まったザ・ビートルズとほぼ日手帳のファンもきっと同じ思いを抱いたことだろう。

 

【セットリスト】

1部

「A Hard Day’s Night」

「All My Loving」

「Roll Over Beethoven」

「Let it Be」

「Yellow Submarine」

「Nowhere Man」

「抱きしめたい」

 

2部

「No Replay」(糸井重里リクエスト)

「Something」

「Love Me Do」

「Help!」

「Blackbird」

「In My Life」

「Golden Slumbers」(鈴木慶一リクエスト)

 

アンコール

「Twist And Shout」

 

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写真提供:ほぼ日刊イトイ新聞