雑貨・日用品
2020/5/4 19:00

スタバやニトリも取り組む、脱プラ時代に選ぶべきエシカルな次世代ストロー

“マイクロプラスチック”が海を汚し、生態系さらに地球環境を脅かしている……そんな問題が顕在化してから、大手コーヒーチェーンを中心に、プラスチックストローを廃絶しようとする動きが、近年急拡大しています。そこで、紙や木、竹やアルミやステンレスなどで作られたストローが出回るようになり、リユースやリサイクルができたり、海洋ごみの減量につながったりするような、“エシカル”なストローが注目されるようになりました。

エシカルとは、「倫理的な」という意味。つまり、社会的規範にのっとった物事をいい、こういったサステナブルな社会を目指すなかで、プラスチックを使わないストローは、若い世代にもアピールする旗印となっています。

 

では、この“エシカルストロー”には、今どのような選択肢があるのでしょうか? まず、これらの動きを促すサステナブルな行動について専門家に聞きました。

 

私たちが自分の目線で確かなものを選ぶことが、地球環境を守る

教えてくれたのは、地球環境や社会に配慮した持続可能な製品やサービスの提供に向けて、さまざまな企業活動のサポートをする企業「FEM」の代表取締役・山口真奈美さんです。「自分が生まれたときよりも、この世を去るときの地球環境をよくしたい」との思いが原動力となり、FEMを2003年に起業したと言います。会社の代表以外にも、日本エシカル推進協議会の副会長や日本サステナブル・ラベル協会代表理事、オーガニックヴィレッジジャパン理事など、さまざまな肩書を持って活動しています。

 

「倫理的、道徳的という意味の“エシカル”とは、主に物を買うときの選択で問われる言葉。人と社会、地球環境、地域のことを考慮して作られた物を購入・消費することを、“エシカル消費”と言います。一方、持続可能という意味の“サステナブル”とは、地球や社会全体のどこかに負荷を与えた行動がないかを確認する行動指針と言えます。サステナブルな活動の先にエシカルな商品があり、消費者が自分の基準で確かなものを選択することが、地球環境を守る上でとても大切です」(FEM代表取締役・山口真奈美さん)

 

深刻な海洋ごみ対策に“エシカルストロー”の普及が急務

近年、プラスチックストローの削減が迫られているのはなぜなのでしょうか?

 

「石油由来のプラスチックは、そのままの状態で放置されていると自然に分解されることはありません。ストローやペットボトル、ビニール袋などのごみが不法投棄され海に流れ出ると、長時間の漂流の中で粉々に砕け、1mmよりもさらに小さい“マイクロプラスチック”になります。プラスチックに含まれる添加物には有毒性が指摘されているものもあり、微小なマイクロプラスチックになっても、その毒性は残留します。それが魚やクジラの体内に蓄積され、魚を食べることや海洋深層水などの飲料水を飲むことで、人間の体内にも取り込まれていきます。

 

ストローはプラスチック製品の一部ではありますが、海洋ごみの中にはたくさん含まれており、海中生物の住処を荒らしています。一人ひとりがプラスチックストローの使用を減らすことは、とても大切です」(山口さん)

 

いま、新型コロナウイルスの感染拡大で、それどころではないと考える人もいるかもしれません。でも、同時に対処しなければならない、いずれも待ったなしの状況なのです。

 

「新型コロナウイルス対策の緊急事態宣言が明けてからにはなりますが、海洋ごみの回収活動を行いつつ、ごみの不法投棄をなくす行動と、プラスチックの使用を減らす働きかけが必要です。割り箸の消費を減らすためにマイ箸を持つ行動が促されたように、不必要なストローを使わない、エシカルなストローを使うことを心がけていきましょう」(山口さん)

 

日本発のエシカルストローに期待!「カンナ削りの木のストロー」

プラスチック製のストローを廃止する動きは2018年頃から海外で広がり、海外では現在、主に紙製のストローが使われています。対して、日本で開発されたエシカルストローの中で、山口さんが注目しているのは「カンナ削りの木のストロー」だとか。これは、日本国内の間伐材をカンナで薄く削って作ったものです。

 

考案したのは、木造住宅メーカーのアキュラホーム。この木のストローを普及させるべく、アキュラホームはザ・キャピトルホテル 東急と協力して「Wood Straw Project(ウッドストロープロジェクト)」を立ち上げました。ザ・キャピトルホテル 東急以外にも、20か国の首脳会議(G20)でも使われたほか、イベントやワークショップを積極的に行い、木のストローの普及活動を続けています。

↑アキュラホームが考案した「カンナ削りの木のストロー」https://www.thewoodstraw.com

 

「需要を増やしたい国内の間伐材を利用した、カンナ削りの木のストロー。これが量産できるようになると、プラスチックごみが減らせる上に、日本の森林を守ることにもつながります。“カンナ削り”という日本の技法を使い、クルクルと筒状に丸めて作る手法は、少し練習すれば誰もが自分で作れるところも、人々の好奇心を刺激してくれますね。

 

木のストローのニーズが増えれば、林業の働き手を増やせるかもしれません。消滅しかねない日本の職人技を子どもたちに伝えるきっかけにもなると思うと、ワクワクします。資源やマンパワーを生かし、ごみを減らせる活動というところが、まさにエシカルでサステナブル。プロジェクトの活性化を期待したいです。

 

また、リユースやストロー自体使わなくて済むデザインなど、社会には素敵なアイテムが誕生していますよね。私はなるべく家では使わないように心がけたり、家族とストローをきっかけに環境についてみんなでできることのアイデアを出し合ったり、話題の入り口にしています」(山口さん)

 

自分にも社会にも心地よい“エシカルストロー”を楽しむ!

近頃は手頃な価格でかわいい紙製ストローが手に入るので、キャンプやピクニック、ホームパーティなどで利用している人も多いのではないでしょうか。それ以外にも、金属製で繰り返し使えるものや、竹など自然素材を使ったもの、ストロー自体使わずに飲めるカップなど、さまざまなアイデアが実現しています。ここでは、編集部のおすすめをいくつか紹介しましょう。

 

・付属のブラシで洗って繰り返し使えるアルミ製

ニトリ「アルミストローエコ 5本セット」
462円(税別)
付属のブラシを使って洗えるストローです。冷たい飲み物がさらにひんやりと感じられるので、暑い日にうれしい。マドラーとしても活躍します。

 

・土に還る自然派。香ばしい香りの麦ストロー

福井大麦倶楽部「おおむぎママの麦ストロー」
300円(税別)
福井県産の六条大麦の茎を天日干しし、乾燥した状態からハサミでカットして1本1本を手作りで仕上げる天然ストロー。10本入り。毎年数量限定販売で、2020年分は7月より販売開始予定です。

 

・色味や太さがさまざまで味がある、洗って使える竹ストロー

VALUE INTERIOR STORE「ナチュラルバンブーストロー 20cm」
1000円(税別)
インドネシアの職人による手作りストロー。さまざまな太さのアソートタイプで、細いブラシで中を洗って繰り返し使えます。12本入。

 

ストローを使わないという選択も! 世界のスターバックスで順次導入中

プラスチックストローの紙ストローへの切り替えを、順次進めているスターバックスでは、ストローなしで飲めるフタの使用も推進しています。日本の店舗でも導入を目指し、検討中です。

 

こちらの再販にも期待! スターバックスのリユーザブルストロー

スターバックス「リユーザブルストロー&シリコンバッグ」
2019年4月22日(アースデイ)から期間・地域限定で販売されていたスターバックスのオリジナルストロー(1500円+税)です。付属のブラシで洗って繰り返し使える上にコンパクトに持ち運びが可能。※現在は販売が終了しています。

 

「StayHome」明けの世の中では、より思いやりの心が試される

世界規模での“家ごもり”生活が続く中、国内でも、スターバックスの一部店舗が休業したり、マクドナルドが一部の店内飲食を休止したりといった飲食店の営業自粛や、外食自体が減っていることもあり、結果的にプラスチックストローの利用量は減っています。しかし、コロナウイルスの猛威が収まったあと、再び増えることが予想されます。

 

「新型コロナウイルスの影響により、世界中で経済活動の縮小が続く中、中国のスモッグは減り、イタリアのヴェネツィアの運河はきれいになり、いたるところで大気汚染が改善されているニュースを目にします。コロナウイルスの終息と日常生活の回復が待たれる一方で、これまで、私たち人間がどれほど地球を汚染しながら生活してきたのかという現実も、見過ごすわけにはいきません。世界が一つの問題を共有して乗り越えようとしている今こそ、地球環境を守るために、どのような消費活動をするのか。エシカルな選択への意識を広げるチャンスだと感じます」(山口さん)

 

ちょっとした心がけの積み重ねで、誰でも今すぐに地球に負荷をかけない暮らしを始めることができます。エシカルストローにも目を向けながら、プラスチック製品の使用量を減らす選択ができるといいですね。

 

【プロフィール】

FEM代表取締役社長 / 山口真奈美

地球環境保全と国際認証の研究の傍ら、環境教育やCSRに関する活動に従事。研究所勤務などを経て、2003年FEMを設立。2006年より認証機関Control Union日本法人立上げと代表を務める。2017年日本サステナブル・ラベル協会を設立、持続可能な信頼性のある国際基準を軸に、多岐にわたる認証の支援に力を注ぐ。専門は、持続可能な責任ある調達や環境社会的配慮、エシカル消費と生物多様性、CSR、国際認証など。コンサルティング・アドバイザリーや教育研修のほか、企業活動やライフスタイルを、よりエシカル&サステナブルな社会へ転換することを目指し、様々な活動にも従事している。
日本サステナブル・ラベル協会代表理事、日本エシカル推進協議会の副会長、オーガニックヴィレッジジャパン理事、環境ビジネス総合研究所の理事長などを兼任している。
FEM=https://f-em.jp
日本サステナブル・ラベル協会=https://jsl.life/
日本エシカル推進協議会=https://www.jeijc.org/
オーガニックヴィレッジジャパン=http://ovj.jp/
環境ビジネス総合研究所=http://www.ebri.jp/