ハイセンスジャパンは、ドラム式洗濯乾燥機「HWF-B90SS-W」を発表しました。洗濯容量9kg、乾燥容量5kgを確保しながら、奥行576mmという薄型設計を実現。2026年冬の発売を予定しており、市場想定価格は11万円(税込)です。
ドラム式洗濯機は便利だけれど、自宅の洗濯機置き場に収まらない――。そんな理由で購入を諦めた経験はないでしょうか。実は今回の新製品、その悩みを誰よりも痛感していた開発者の経験から生まれたものでした。

自分で作った洗濯機なのに、自分の家に入らなかった!
「昨年必死こいて作ったものがですね、私の家に入らなかったんですよ」
内覧会でそう語ったのは、ハイセンスの洗濯機開発を担当する今井俊次さんです。

ハイセンスは2025年、洗濯容量12kg、乾燥容量6kgのヒートポンプ式ドラム式洗濯乾燥機を発売しました。しかし、その開発に携わった今井さん自身の単身赴任先には、製品を設置できなかったといいます。
その理由は、洗濯機置き場の狭さでした。今井さんの住まいは、小型のタテ型洗濯機を想定した造り。防水パンは一見すると十分な広さがあるものの、排水口が設けられているため、実際に洗濯機を置けるスペースは限られています。さらに、給水用の蛇口は床から約1mという低い位置にあり、背の高いドラム式洗濯機では干渉してしまったそう。
「自分の家に置ける洗濯機」を目指して開発
そこで今回の開発では、「少なくとも自分の家に置ける洗濯機」を目指しました。まず、今井さんは排水口に近い部分にへこみを設けることで、排水ホースを接続するスペースを確保。また、背面の形状では、蛇口や給水ホースが当たる部分を斜めにカットすることで、設備との干渉を避けたといいます。
さらに今井さん、「よほど悔しかったので、今日はその部屋を再現して持ってきました」とのことで、内覧会では単身赴任先の洗濯機置き場を実寸大で再現。新製品を設置するデモンストレーションも実施しました。

狭いスペースに洗濯機を慎重に運び込み、防水パンに収めていくと……見事に設置成功! デモと同様、今井さんは、自分で開発した洗濯機を自分の家に置くという目標を達成したわけです。

薄型化のために、あえてDDモーターをやめた!
また、「HWF-B90SS-W」の本体サイズは、幅598×奥行576×高さ1007mm。ハイセンスによると、洗濯容量9kgクラスでは業界トップクラスの薄型設計を実現したといいます。同時発表された同社の10kgタテ型洗濯機と比較しても、奥行は44mm、高さは58mm小さくなっています。その大きな理由は、モーターの駆動方式を変更したこと。

従来のドラム式洗濯機で採用していたDD(ダイレクトドライブ)方式は、モーターをドラムの回転軸に直接接続する仕組み。ベルトを使わずに動力を伝えられるため、駆動ロスや騒音を抑えやすいというメリットがあります。DDモーターはドラムの背面にモーターを配置する必要があり、その分、奥行を確保しなければなりません。そこで薄型化を目指す新製品では、あえてDDモーターをやめ、ベルトとプーリーを介してドラムを回転させるベルトドライブ方式のモーターを採用しました。

この方式だと、モーターをドラムの回転軸から離れた位置に配置が可能。本体全体の奥行を抑えながら、ドラム内部の奥行も確保できました。

ただし、ベルトドライブ方式にはモーターの振動や回転バランスへの配慮が必要。新製品では、6回もの試作を繰り返すなどしてモーターを含めた内部構造のバランスを調整。さらに、幅広で肉厚なゴム足を採用することで、運転時の振動を抑える工夫も盛り込んでいます。
単に高性能な部品を採用するのではなく、「狭い場所にも置ける」という目的に合わせて、洗濯機の構造そのものを見直し、細部にもさまざまな工夫を施したというわけです。
洗剤液を衣類にすばやく届ける「浸透泡ベール洗浄」
薄型化に注力した一方で、洗濯機としての基本性能にも力を入れています。その中心となるのが、新たに搭載された「浸透泡ベール洗浄」。
これは、水と洗剤、空気を混ぜ合わせて泡状の洗浄液を作り、衣類に噴射する仕組み。洗浄液を広範囲に行き渡らせることで、衣類への浸透を促し、汚れを落としやすくすることを狙っています。

ポイントは、泡を大量に作ること自体が目的ではないということ。洗剤を含んだ洗浄液を、いかに効率よく衣類に届けるかという発想です。
ドラム式洗濯機は、比較的少ない水で衣類を持ち上げて落とす「たたき洗い」を行います。そこに泡状の洗浄液を組み合わせることで、洗浄性能の向上を図っています。
さらに、20℃・40℃・60℃の温水洗浄にも対応しました。温水洗浄は、冷たい水では落としにくい皮脂汚れなどへの対策として有効。洗濯物の種類や汚れに合わせて温度を選べるため、普段着からしっかり洗いたい衣類まで、幅広く対応できます。
約2kgなら洗濯から乾燥まで最短60分!
もう一つの注目ポイントが、乾燥機能です。「HWF-B90SS-W」は、PTCヒーターを利用した乾燥方式を採用。約2kgの衣類であれば、洗濯から乾燥まで最短約60分で仕上げられるコースを備えています。

例えば、翌日に着たい衣類を急いで洗いたいときや、少量の洗濯物を短時間で片付けたいときなどに便利。普段は洗濯だけで使い、必要なときに乾燥機能を利用するといった使い方にも対応します。

では、なぜヒートポンプ式ではなく、ヒーター式を採用したのでしょうか。
一般にヒートポンプ式は、乾燥時の消費電力を抑えやすい一方、製品価格が高くなりがちです。一方のヒーター式は、乾燥時の電気代では不利になるものの、製品の購入価格を抑えやすいという特徴があります。
そこで同社は、ヒートポンプ式とヒーター式という2つの方式の購入価格と、ランニングコストを比較する試算を紹介しました。

その試算では、毎日洗濯から乾燥まで行う場合にはヒートポンプ式が有利。ただし、これは一定の条件を置いた比較であり、今回の新製品の実測値を示すものではありません。
たとえば、雨の日や急いでいるときだけ乾燥機能を使いたい家庭など、乾燥機能を使う頻度が比較的少なければ、購入価格の安いヒーター式にもメリットがあるとしています。無理せず、自分の洗濯スタイルに合わせて選ぶことが大切というわけです。
お手入れや操作性にも配慮。薄型でも使いやすく
このほか、使い勝手を高める機能も充実しています。
操作パネルには、立ったままでも見やすい傾斜した「らくっとパネル」を採用。投入口は直径360mmと広く、衣類を出し入れしやすい設計としています。液体洗剤と柔軟剤の自動投入にも対応しており、毎回洗剤を量る手間も省けます。
また、自動槽洗浄や自動槽乾燥、ドアパッキンの自動掃除機能も搭載。ドアパッキンや乾燥フィルター、排水フィルターには抗菌仕様を採用するなど、清潔さを保ちやすい工夫も盛り込まれています。

単に本体を小さくしたのではなく、これまでドラム式洗濯機を置けなかった人にも使ってもらうため、構造から見直したハイセンスの新モデル。開発者自身が感じた不便さを出発点に、設置性と洗濯容量を両立させたことで、「ドラム式が欲しいけれど、置き場所がない」と諦めていた人にとって注目の一台になりそうです。
タテ型洗濯機も進化! 泡の洗浄力と使いやすさを追求
ドラム式洗濯乾燥機に加え、ハイセンスはタテ型全自動洗濯機の新モデル「HW-DG80XS」「HW-DG100XS」も発表しました。洗濯容量はそれぞれ8kgと10kg。2026年12月上旬発売予定で市場想定価格は8kgモデルが7万5000円、10kgモデルが8万5000円(いずれも税込)。従来の5.5kg・7kgモデルに加えて、大容量モデルのラインナップを拡充した形です。

泡と立体水流を組み合わせた「浸透泡ベール洗浄」
洗浄方式には、ドラム式と同じ「浸透泡ベール洗浄」を採用しています。
洗剤液を泡状にして衣類に行き渡らせる仕組みは共通ですが、タテ型ではさらに立体的な水流を組み合わせることで、洗浄力の向上を図っています。
具体的には、給水時に洗剤液を混ぜ合わせる「ミックスシャワー」や、衣類に洗浄液を届けるシャワー水流などを活用。洗剤液を衣類全体に行き渡らせながら、パワフルな水流で汚れを落とします。
ポイントは、単に泡を大量に作るのではなく、洗剤液を効率よく衣類に届けること。泡と水流の組み合わせによって、タテ型ならではの洗浄性能を追求しています。
また、銀イオンユニットも搭載。洗い・すすぎ工程で衣類の抗菌にも配慮しています。

DDMインバーターモーターで、パワフルかつ静かな洗濯を実現
洗浄性能を支えるのが、DDMインバーターモーターです。
前述のドラム式ではベルトドライブ方式を採用しましたが、タテ型ではモーターの動力を直接伝えるDDM方式を採用。パワフルな洗浄と省エネ、低運転音の両立を図っています。
運転音は、8kgモデルが洗濯時40dB、脱水時43dB。10kgモデルでは洗濯時38dB、脱水時39dBとなっています。さらに、運転音を抑えるナイト機能も搭載。夜間や早朝など、周囲への音が気になる時間帯にも配慮しています。

洗剤タンクが大容量に! 補充やお手入れもしやすくなった
使い勝手の面で進化したのが、液体洗剤と柔軟剤の自動投入機能です。
自動投入は、洗濯物の量に応じて洗剤や柔軟剤を投入する便利な機能。しかし、タンクへの補充や取り外しが面倒だと、その便利さも半減してしまいます。
そこで新モデルでは、タンクの容量と構造を見直しました。液体洗剤タンクは従来の450mLから580mLへ、柔軟剤タンクは550mLから730mLへと容量アップ。補充の頻度を減らせるようになっています。
さらに、洗剤や柔軟剤を注ぐ投入口の面積は、従来の1530mm²から約2470mm²へと約61%拡大。注ぎやすさも改善しました。
タンクの取り外し方法も、従来の持ち上げ式からプッシュアップ式ハンドルに変更。タンクを取り外して洗う際の手間にも配慮しています。

投入口は広く、洗濯槽は底が浅めの設計。容量の大きなタテ型洗濯機では、底にある衣類を取り出す際に大きくかがむ必要がありますが、新モデルではそうした負担を軽減することを狙っています。
操作パネルは本体の後方に配置されており、フタを開けたままでも操作可能。2枚折れのフタや大型のガラス窓も採用しています。

泥汚れには3度洗い! 個性的な洗濯コースをアプリから追加
今回のタテ型洗濯機で、とりわけユニークなのが、スマートフォンアプリ「ConnectLife」との連携です。アプリから洗濯コースをダウンロードし、必要に応じて洗濯機に追加できます。

用意されているのは、毛布などの大物を洗うコースのほか、「泥汚れ除去コース」「食べこぼし除去コース」「洗えるスーツコース」「ベビー衣類洗浄コース」「タオルふわふわコース」など。いずれも、日常生活の具体的な困りごとを意識したコースになっています。
例えば「泥汚れ除去コース」は、洗い工程を3回繰り返すのが特徴です。開発担当の今井さんによると、泥汚れは洗剤の力だけでは落としにくく、物理的な力で落とすことが重要なのだとか。そこで、野球のユニフォームや農作業で汚れた衣類などを想定し、3度洗いによって泥汚れをしっかり落とすコースを用意したといいます。
一方、「食べこぼし除去コース」は、汚れた部分に家庭用の食器用洗剤をつける前処理と、つけおきを組み合わせるもの。そのほか、スーツを洗濯ネットに入れ、高水位で形崩れを抑えながら洗うコースや、ベビー衣類をやさしく洗ってしっかりすすぐコースも用意されています。
なお、ダウンロードしたコースを洗濯機に設定できるのは一度に1種類。必要に応じて入れ替えて使用する仕組みです。
10分から12時間まで。洗濯槽のお手入れも充実
洗濯物をきれいにするだけでなく、洗濯機そのものを清潔に保ちやすくする工夫も、新モデルの特徴。
槽洗浄コースは、10分・4時間・12時間の3種類を用意。普段のお手入れには短時間のコース、汚れが気になるときには長時間のコースと、状況に合わせて使い分けられます。
なかでも10分コースでは、汚れがたまりやすいパルセーターの裏側を重点的に洗うよう工夫されています。

洗浄力や静音性に加え、日々の使いやすさからお手入れまで幅広く進化したタテ型の新モデル。特に、子どもの衣類の頑固な汚れに悩む家庭や、乾燥機能よりも洗浄性能と家事の効率化を重視する人にとって、魅力的な選択肢となりそうです。
暮らしに合わせて選べる新しい洗濯機
今回発表されたドラム式とタテ型は、どちらも「浸透泡ベール洗浄」を搭載しながら、それぞれ異なるニーズに応える製品に仕上がっています。
ドラム式は、一人暮らしや若い夫婦などの少人数世帯がメインターゲット。あえてヒートポンプ式乾燥を採用せず、コンパクトな本体と買いやすい価格を実現しています。設置スペースや予算の問題でドラム式を諦めていた人にとって、魅力的な選択肢になるのは間違いありません。
一方のタテ型は、洗浄力や静音性を高めるとともに、洗剤の自動投入や多彩な洗濯コース、お手入れのしやすさも追求。子育て世帯をはじめ、乾燥機能よりも洗浄性能や日々の使い勝手を重視する家庭に向いています。
高機能な製品が必ずしも、すべての人にとって最適とは限りません。必要な機能を見極め、サイズや価格とのバランスを取る。その根底には、住まいの広さや予算にかかわらず、より多くの家庭に便利で快適な洗濯環境を届けたい、という思いがあるのでしょう。今回の新製品からは、そんなハイセンスの開発思想が感じられました。
