森香澄×若葉竜也インタビュー「ヤマダとシバが一緒に過ごす時間が、2人を少しずつ変えていったんだと思います」

ink_pen 2026/10/28
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森香澄×若葉竜也インタビュー「ヤマダとシバが一緒に過ごす時間が、2人を少しずつ変えていったんだと思います」
GetNavi web編集部
げっとなびうぇぶへんしゅうぶ
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やりたいことや夢もなく、自分の居場所を探している30歳のヤマダと、他人との関わりを自ら避けて生きてきた38歳のシバ。独身男女の日常を描き、誰の心にもチクリとしたひっかかりや共感をもたらす映画『てんてん ずっと独身でいるつもり?』が、現在Prime Videoにて独占配信中。作中では互いに影響を与え合う役を演じた森香澄さんと若葉竜也さんは、彼らの生き方をどう捉えたのか。撮影中のエピソードとともに、その心根を聞いた。

(写真右)森香澄●もり・かすみ…1995年6月16日生まれ。東京都出身。2023年3月にテレビ東京を退社後、アナウンス業、タレント業のほか、俳優としても活躍。主な出演作に、ドラマ「栞ちゃん 心の声を聞かせてよ」「年下童貞くんに翻弄されてます」「奪い愛、真夏」「DREAM STAGE」「プロフェッショナル 保険調査員・天音蓮」など。9月1日には自身初の美容本「戦略的かわいいの作り方 森香澄のかしこい美容メソッド」(小学館)を発売。公式HP/Instagram/X (写真左)若葉竜也●わかば・りゅうや…1989年6月10日生まれ。東京都出身。2016年公開の映画『葛城事件』で、『第8回 TAMA映画賞』最優秀新進男優賞を受賞。2024年、TVドラマ「アンメット ある脳外科医の日記」にて、『第120回 ザテレビジョン・ドラマアカデミー賞』助演男優賞、『東京ドラマアウォード 2024』助演男優賞、日本映画テレビプロデューサー協会主催『第49回 エランドール賞』新人賞を受賞。主な出演作に、連続テレビ小説「おちょやん」、ドラマ「アンメット ある脳外科医の日記」、映画「ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。」「てっぺんの向こうにあなたがいる」「ペナルティループ」「愛にイナズマ」「市子」「生きちゃった」など多数。公式HP/Instagram

【森香澄さん&若葉竜也さん撮り下ろし写真】

ヤマダ役は森さん以外が演じたら、きっと違う雰囲気の作品になったと思います

――お2人は今作が初共演になるそうですね。一緒にお仕事をしてみての印象はいかがでしたか?

 

森 お会いする前は独特の雰囲気を持っている方なのかなと思っていたんです……けど、実際はそうじゃなかったです。もちろんいい意味で!(笑)

 

若葉 ただの凡人ですよ(笑)。

 

森 若葉さんはお仕事のされ方がとてもナチュラルだなと感じました。私はどちらかというと、“さぁ、やるぞ!”と気合いを入れて突き進むタイプなんです。でも、若葉さんはずっと自然体ですし、今回演じたシバもそのままの雰囲気で本番に入られていて。なので、カメラが回っていない時は、他愛もない会話ばかりしてました。「今、Amazonでセールをしていて、いっぱい買っちゃったから、結局お得だったのかどうかわかんなくなっちゃったよ」と話しかけてくださったり(笑)。

 

若葉 そう。めちゃめちゃ買っちゃうんですよ。

 

森 私がおすすめする商品も紹介しましたよね(笑)。

 

若葉 せいろとか買いました(笑)。森さんはとにかくクレバーな方ですね。頭の回転が速い。それに、仕事のスケジュールを聞くとものすごく忙しいはずなのに、絶対にそんな姿を見せないんです。常に監督やスタッフさん、共演者のことを見て行動されていますし。自分もこうなりたいなと思いました。

 

森 いえいえ……ありがとうございます。

 

若葉 また、佇まいも素敵なんです。今回のヤマダ役も森さん以外、考えられないぐらいでした。もし、別の方が演じたら違う雰囲気の作品になったと思います。もちろん、そうした森さんにしか出せない雰囲気を見事にキャッチして映像に落とし込んだ箱田(優子)監督や撮影カメラマンの月永(雄太)さんも素晴らしく、お2人がいらっしゃったからこそのヤマダが生まれたというのもあるんですが。

 

――作中では、奔放な性格のヤマダに対し、シバは他人とのコミュニケーションを避けているような正反対ともいえるキャラクターでした。そんな彼らの出会いは、互いにどんなものもたらしたと思いますか?

 

若葉 もともとシバは、ヤマダのような生き方を少し羨ましく感じていたのかなと思います。“あんなふうに生きていける世界線がもし自分にあったらな”という気持ちをどこかに持っていた気がして。というのも、シバって他人と関わるのが苦手のように思われがちですが、実際はすごく人が好きで、誰かとつながりたいという気持ちが強いんですね。だからこそ、つい距離を取ってしまう。そうした矛盾したバグみたいなものを、ヤマダがチューニングしてくれたのかなという気がします。

 

森 ヤマダもヤマダで、シバと一緒にいる時間はすごく大きなものだったと思います。彼女は愛嬌だけで生きてきた自分に対して、“自分には中身がないんじゃないか”と悩んでいたりする。そうした中、シバは彼女の表面だけを見ずに、しっかり向き合ってくれて。それもあって、シバがかけてくれる何気ないひと言がヤマダの心に響く瞬間が何度もあり、それが彼女にとってはすごく心地良いものだったんだろうなって思うんです。

シバとカケルとの3人のシーンは何度も号泣しました

――30代・40代の独身男女が抱える悩みを描いた本作ですが、とくに印象に残っているシーンやセリフはありますか?

 

森 ヤマダのシーンで挙げるなら、親友のフルヤ(芋生 悠)との口喧嘩の場面ですね。ヤマダは自分の悩みや思っていることをうまく言語化できず、いつもモヤモヤしているんですが、唯一、フルヤにだけは感情をありのままにぶつけられるんです。でもそれって、裏を返せば、フルヤにあたり散らかしているようで、実は全部自分に向けて言ってるってことなんですよね。そうした、溜め込んでいた感情を誰かにぶつけないと気がすまないヤマダの行動が、はたから見ればものすっごく厄介なんだけど、逆にとてもリアルで(笑)。それに、喧嘩をしているようで実際は相手に甘えているという人間関係にも共感できました。大好きなシーンですし、撮影中も“ここは大事にしなきゃ”と思って、より集中していたのを覚えています。

 

若葉 僕も、自分以外の場面を選ぶとするなら、その喧嘩のシーン一択ですね。ほんとたまんなかったです(笑)。

 

森 うれしいです!

 

若葉 ヤマダがフルヤに文句を言いつつ、自転車のベルを鳴らしながら消えていくじゃないですか。きっと森さん以外の方が表現したら、ちょっとやりすぎに感じてしまうと思うんです。なのに森さんが演じると、すごく面白くて。もう、最高でした。

 

森 「バカって言うほうがバカなんだよ!」って叫んでましたよね。まるで子どもの喧嘩でした(笑)。

 

若葉 僕が印象的だった自分の場面は、甥っ子のカケルの髪を結んでいる時に、カケルから「シバは僕と離れるの寂しい?」って聞かれるシーンですね。現場で監督が急遽追加した場面だったんです。そしたら、テストのときにカケルが僕のお腹にギュッと顔をくっつけながら、セリフを言ってきたんですよ。そのアドリブが本当に素晴らしくて。僕にはそんなアイデアを思いつかないし、お芝居をしながら泣きそうになりました。

 

森 私もそのシーンを試写で観て泣きました。カケルとのシーンはどれも素敵ですよね。カケルとの別れが近くなってきたことに寂しさを感じて、「最後にみんなで海に遊びに行こう」って話すシーンも大好きでした。

 

若葉 あそこもよかったですね。

 

森 その少し前からシバとヤマダがキッチンのそばの廊下に座り込んで話をしていて、シバが自分の過去をちょっとずつ吐露していく。カケルは少し離れた場所で寝ていたので、演じている時は私の位置からだとカケルの顔が見えなかったんです。それもあって、試写で観た際、彼のなんとも言えない表情に号泣しました。ぜひ観ていただきたい場面です。でも、振り返ると、3人の場面はカケルのお芝居に助けられたところがたくさんありましたよね。彼は天才でしたから。

 

若葉 うん。すごく才能あると思う。

 

森 ちゃんとセリフを言っているんだけど、お芝居をしていない感じがするといいますか。本番中でも勝手に走り回るし、それを若葉さんが捕まえに行ったりして(笑)。でも、カットがかかったあとでも、その動きをずっと続けているんです。ずっとカケルとしてそこに存在してくれたから、出来上がった映像もすごく自然で。

 

若葉 すごく台本を理解しているんですよね。だから、自分が動いていい範囲を把握したうえでアドリブを入れているんです。例えば、ひとりで遊んでるシーンでiPadのゲームをやっているのは彼のアイデアなんです。単純にiPadで遊びたかっただけなのかもしれませんが(笑)、持つべきじゃない場面では、自分の考えでそれをやめたりして。それに、大人の役者でもアドリブをし始めると、つい本来やらなければいけない方向性から少しズレてしまうことがたまにあるんですが、彼にはそれが一切ない。あの感覚は持って生まれた天性なんだろうなと思います。

“幸せ”は日々自分のご機嫌を取りながらの積み重ね

――また、この作品では、もうひとりの独身女性として、40代で仕事に生きるシミズ(香椎由宇)の姿も描かれています。お2人から見たシミズの印象は?

 

若葉 すごく仕事熱心ですし、親や社員のこともしっかり考えたりして、とても立派な女性ですよね。ただ、時々20代のようにも見える瞬間があって。僕はたぶん、シミズのような真面目な人間にはなれないだろうなと感じました。

 

――20代に見えるというのは、生き方に少し不器用さが感じられるということですか?

 

若葉 それもありますし、ひとつのことに集中しすぎると、その瞬間は視野のレンジが狭くなってしまっていたり。僕自身はまだシミズの年齢になっていないので、共感まではいかなかったのですが、箱田監督が描く40代の女性のひとつの在り方として興味深く見ていました。

 

森 私は逆に、将来的に自分はシミズみたいになりそうだなと思いました(笑)。仕事が大好きで、それ以外が見えなくなっちゃうのも共感できますし。きっと、“あれもこれもやりたい” “このチャンスを絶対に掴みたい”といったことを繰り返してきた結果が、今のシミズの姿だと思うんです。周りから見れば成功を収めているし、すごく充実してそうでもある。でも本人は、“自分って幸せなのかな?”とわからなくなっている。そこがとてもリアルだなと感じて。

また、父親の介護のエピソードもすごく心に刺さりました。シミズのきょうだいを含め、みんなが父親のことを気にかけているし、少しずつ行動も起こしているんだけど、結果として何も解決できずにいる。そういった、誰もが向き合うかもしれない問題を誇張することなくまっすぐ描いているだけに、より考えさせられるものがありましたね。

 

若葉 そうですね。そこも含めて、シミズ、ヤマダ、シバに共通しているのは、やっぱり“寂しい”という、生物が生まれ持った根源的な感情なのかなと思いましたね。

 

――ちなみにお2人は年齢を重ねて30代を過ごしている今、幸せの意味や価値観などに変化ありましたか?

 

若葉 これは森さんの答えをぜひ聞いてみたい(笑)。

 

森 えっ、ちょっと待って!(笑) う〜ん……でも、きっとみんなそうだと思うんですが、自分にとって何が幸せなのかって、そもそも10代の頃とかに考えたことないですよね。

 

若葉 そうですね。僕もないかも。

 

森 ですよね。とにかく毎日が楽しくて、それだけでしたから。私の場合、20代の頃までそうだったかもしれないですし。……いや、今もそうかな(笑)。というのも、何が幸せかを自分の中で定義づける必要ってないと思っているんです。昔からすごく飽き性な性格なので、“結婚して幸せになりたい!”と思っても、翌日には“やっぱりひとりがいいな”って考え直したりしますし(笑)。つまり、価値観なんて次の瞬間には変わったりするし、“幸せ”も毎日その日の自分の機嫌を取りながらの積み重ねなんだなって思うんです。“今日も楽しかった!”って思えることに喜びを感じ、そこを何より大事にするのが一番といいますか。

 

若葉 なるほど。すごく勉強になります。

 

森 本当に!?(笑)

 

若葉 たしかにそうだなと思います。何が幸せかということより、楽しいと思えることを守り抜くほうが大事ですよね。僕、小学校で同級生だった幼なじみと今も一緒に遊んだり、仕事をしたりしているんです。古い友人だと30年以上の付き合いになるんですね。ずっと仲が良くて、そんなみんなと食事をしたり、プライベートで会う時間を維持するために仕事をしているようなところもあって。本当にそれさえ守れれば充分で、志が高くないんです。ですから、森さんの考え方に共感しましたし、なんだか救われた気がしました。

 

森 とんでもないです。いつも思ったことしか口にしていないんですけど、お役に立ててなによりです(笑)。

 

映画『てんてん ずっと独身でいるつもり?』

10月23日(金)よりPrime Videoにて独占配信中

【映画『てんてん ずっと独身でいるつもり?』よりシーン写真】

(STAFF&CAST)
原作:おかざき真里(原案 雨宮まみ)「ずっと独身でいるつもり?」(祥伝社 FEEL COMICS)
監督:箱田優子
脚本:港 岳彦
出演:森 香澄、若葉竜也、香椎由宇、芋生 悠、田村健太郎、笠島 智、黒沢あすか、白川和子、眞島秀和、前田 吟ほか

(STORY)
ヤマダミサキ30歳、独身。特技はこれといってなく、やりたいこともない。20代の頃は半地下アイドルとして活動し、その後も仕事や居場所を転々として、今は友人のつてでホームヘルパーとして働いている。ところが恋人の浮気が発覚し、仕事もうまくいかなくなってしまう。過去の心の傷から人との関わりを避け、今は葬儀社で働くシバ、38歳。そして仕事優先で生きてきたデザイナーのシミズ、46歳。年齢も境遇も異なる3人は、それぞれが迷いながらも、自分の居場所を見い出していく――。

 

撮影/中村 功 取材・文/倉田モトキ ヘアメイク/水野花菜(森)、FUJIU JIMI(若葉) スタイリスト:稲葉有理奈(KIND)(森)、Toshio Takeda(若葉)

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