『宇宙兄弟「完璧なリーダー」は、もういらない』から学ぶ新・リーダー論⑦
3/23『宇宙兄弟「完璧なリーダー」は、もういらない。』刊行を記念して、どこよりも早く試し読み!本日は第7回目「人々に共感される リーダーシップの秘密」
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「宇宙兄弟「完璧なリーダー」は、もういらない」刊行記念先行試し読み!
第7回「人々に共感される リーダーシップの秘密」
共感を呼ぶリーダーシップを発揮している人には、必ず「なぜ」がある。
マーケティングコンサルタントのサイモン・シネック氏が『TED』で発表した「優れたリーダーはどうやって行動を促すか」というプレゼンテーションは、大変反響を呼びました。彼はこの中で、優れたリーダーたちには共通する思考や行動があり、その方式を「ゴールデンサークル」として提唱しています。
このプレゼンテーションは『TED』で閲覧できますので、ぜひみなさんにもご覧いただきたいのですが、「ゴールデンサークル」とは、物事を左記の順番で考えて、伝えることで、人々から共感を得られるというものです。
①Why(なぜ・なんのために)
②How(どうやって)人々に共感されるリーダーシップの秘密
③What(何を)
多くの場合はこの順番が逆になっており、③の「What」から入って、②の「How」で完結。①の「Why」の部分は、重要視されていないことがほとんどです。発信している本人でさえ、「Why」を忘れていることもあります。
でも「What」や「How」は、理解はできても共感はできません。
サイモン氏も、「人は“何”にではなく、“なぜ”に動かされる」と発言しています。
プレゼンでは、①から③の順番でメッセージを発信している事例として、アップル社が紹介されました。
①なぜ?
我々のすることはすべて、世界を変えるという信念で行っています。違う考え方に価値があると信じています。
②どうやって?
私たちが世界を変える手段は、美しくデザインされ、簡単に使えて親しみやすい製品です。
③何を?
こうして、すばらしいコンピューターができあがりました。
アップル社から新製品が出るたびに徹夜で店の前に並ぶ人たちは、デザインや商品そのものに共感しているのではなく、「Why」の信念に共感しているのだと、サイモン氏は語ります。もちろん、アップル社の発信するメッセージすべてに「Why」がわかりやすく込められているわけではないですが、「Why」を通して生まれた言葉だからこそ、人々はその潜在的なメッセージを受け取っているのだと思います。
一方、日本の携帯電話メーカーは、表現の趣向こそ違うものの、デザインやスペック、料金などをこぞってアピールしていますね。これは「What」や「How」なので、人々は共感するのではなく、比較・差別化という視点でジャッジをしています。
どちらが正解、というものではありませんが、共感されるリーダーシップを発揮するためには、「Why」をしっかりと認識しておくことが大切です。
プロジェクトであれば、「なぜ、私たちはこの企画(案件)をやるのか」という視点です。ちなみに「利益のため」は結果であって、「Why」にはなりませんのでご注意を。また、プロジェクトに限らず日々のアクションでも「Why」を伝えることで共感が生まれ、行動に変化が起きていきます。
「この資料、クライアントごとにまとめておいて」
これは、「What」と「How」だけのメッセージ。もしここに、「そうすれば、クライアントごとの傾向が明確になって、私たちの営業戦略が立てやすくなると思うんだ」
と、「Why」を入れたとします。頼まれた人はそこで初めて、依頼した人に共感することができるのです。
「なるほど、それはいいアイデアだ。だったら、比較しやすい構成にしよう」
そう考え、ただまとめるだけの資料よりも有益なものを仕上げてくれるでしょう。
人の心を動かすのは、「支配」ではなく「共感」です。
いくら「Want」を発信してみても、その人自身が「Why」を自覚していなければ、周囲から共感してもらうことはできません。物事を考える・行動する際は、まず「Why」を明確に。そうすれば、あなたの信念を信じてくれる人が必ず現れます。
『宇宙兄弟』に登場する、月面基地プログラムのマネージャーであるウォルター・ゲイツは、リスクや失敗を徹底的に排除しようとする合理主義者。六太の前に何度も壁として立ち塞がります。ゲイツの宇宙開発に対する姿勢や、そのやり方に抵抗感を抱いた六太は、ある日、ゲイツにこう問いかけました。
「ゲイツさんは、宇宙の何が好きですか?」
その場では「NASAで働く者が、誰しも宇宙好きだと思うな」と切り捨てたゲイツですが、六太の言葉はやがて、「そもそも、なぜ(Why)自分はこの仕事に関わっているのか?」という、動機を思い返すきっかけとなったのです。六太は、ゲイツの「Why」を明確にしようとしたのですね。
この動機とは、すなわちモチベーションのこと。「Why」に対する答えが、モチベーションなのです。
ゲイツは六太の問いかけによって、かつて自分が月面基地のモジュールを何度失敗しても黙々と作り直していたことに気づきます。そう、忘れていた自らのモチベーションを思い出したのです。(余談ですが、よく「モチベーションが下がる」といった表現をしますが、動機は下がったりしません。上がったり下がったりするのは「テンション(緊張感)」で、モチベーションは「忘れている」が適切な表現でしょう。)
チームにおいても、「Why」を共有しておくことは大切です。
「私たちはなぜ、このプロジェクトを行うのか」
この認識がずれていると、「How」で大きな差が出てくることもあります。
そんなときは、「私たちの“Why”ってなんだっけ?」と、立ち返ってみましょう。
【心のノート】
「Why」こそが、人の心を引き寄せる。
自分とチームが迷子のときは「Why」に立ち返ろう!!
2018年3月23日発売予定
宇宙兄弟 「完璧なリーダー」は、もういらない。
長尾彰[著]
1400円+税 /学研プラス
【内容】
弟・ヒビトと比べて、一見リーダーのようなタイプに見えない兄・ムッタ。しかし不思議と彼がいるチームはうまくいく。なぜなのか。チームづくりの専門家である著者が、大人気漫画『宇宙兄弟』を題材に、リーダーシップを磨き、チームで成果を出す方法を指南。
【著者】
組織開発ファシリテーター。企業、団体、教育、スポーツなど、幅広い分野で3000回を超えるチームづくりを行う。現在、ナガオ考務店の活動を中心に、非営利団体の経営やリーダーの育成に取り組む。
(c)小山宙哉/講談社