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2021/4/20 17:30

知っておきたいワインの蘊蓄。ソムリエが解説する「ドイツワイン」の5産地にまつわる話

ファルツ 〜ドイツを代表するワイン街道を抱く産地〜

フランスのアルザス地方の北と国境を接するファルツには、南のシュワイゲンから北のボッケンハイムまでの85kmに渡って、ドイツ最大のワイン街道が縦断しています。ファルツでは年間で大小200ほどのワイン関連のイベントが催されており、8月の終わりには、ワイン街道を通行止めにし、街や村では地元の料理やワイン、民芸品に至るまで思い思いのお店が立ち並んで、地元の人や観光客を楽しませます。こうした取り組みは産地全体を盛り上げることに成功し、ファルツはドイツ第2位のワイン産地、ワインショップやレストランも充実した“ワイン産業の街”と言われるようになりました。

 

この地域でも、主役はリースリング。辛口であってもみずみずしい蜜のような味わいをワインにもたらし、比較的温暖なファルツらしさを表現しています。ですが、今回紹介するのはバーデンに続いて赤ワインです。下写真の「フリードリッヒ・ベッカー」は、フランス国境沿いに拠点を置く彼の地のシュペートブルグンダーの先駆者的存在で、“ピノ・ノワール”の名前を冠したクリュ・ワインは、ドイツでも最高の評価を得ています。産地全体としては、バーデンほどシュペートブルグンダーが主流ではないものの、最近のワインガイド誌での上位に、新たな生産者のシュペートブルグンダーが数多く食い込む現象が起きています。

 

ブルゴーニュ同様にピノ・ノワールに向く石灰質を含んだ土壌が多く、これからのドイツの赤ワイン産地として、バーデンに続く銘醸地のポジションが期待されます。ドイツワインは甘い、ドイツは白ワインの産地、というのは過ぎ去った20世紀の過去の話。ドイツのピノ・ノワールはブルゴーニュ、オレゴンやニュージーランドに続いて、世界でも最高の品質水準にあります。よりピノ・ノワールの官能性や滋味深さを表現するワインに出会える機会は、これからどんどん増えていくことでしょう。ドイツの赤ワインのこれからを楽しんでいただけたら何よりです。

 

Friedrich Becker(フリードリッヒ・ベッカー)
「Doppelstück Spätburgunder2016(ドッペルシュトゥック・シュペートブルグンダー2016)」
3300
輸入元=ヘレンベルガー・ホーフ

 

※ワインの価格はすべて希望小売価格です

 

【プロフィール】

ソムリエ / 宮地英典(みやじえいすけ)

カウンターイタリアンの名店shibuya-bedの立ち上げからシェフソムリエを務め、退職後にワイン専門の販売会社、ワインコミュニケイトを設立。2019年にイタリアンレストランenoteca miyajiを開店。
https://enoteca.wine-communicate.com/
https://www.facebook.com/enotecamiyaji/

 

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