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2018/7/8 19:00

カラフルトレインと独特な路面電車が走る稀有な街――“元気印”のローカル線「豊橋鉄道」の旅

おもしろローカル線の旅~~豊橋鉄道渥美線(愛知県)~~

 

愛知県の東南端に位置する豊橋市。この豊橋市を中心に電車を走らせるのが豊橋鉄道だ。今回はまず、豊橋鉄道がらみのクイズから話をスタートさせたい。

【クイズ1】普通鉄道+路面電車を走らせる会社は全国に何社ある?

【答え1】全国で5社が普通鉄道+路面電車を走らせる

豊橋鉄道は渥美線という普通鉄道(新幹線を含むごく一般的な鉄道を意味する)の路線と、市内線(東田本線)という路面電車を走らせている。こうした普通鉄道と路面電車の両方を走らせている鉄道会社は5社しかない(公営の鉄道事業者を除く)。

 

ここで普通鉄道と路面電車の両方を走らせる鉄道会社を挙げておこう。

 

東京急行電鉄(東京都・神奈川県)、京阪電気鉄道(大阪府・京都府など)、富山地方鉄道(富山県)、伊予鉄道(愛媛県)に加えて、豊橋鉄道の計5社だ。東京急行電鉄が走らせる路面電車(世田谷線)は、道路上を走る併用軌道区間がほとんどなく、含めるかどうかは微妙なところなので、実際には4社と言っていいかもしれない。

 

このように豊橋鉄道は全国でも数少ない普通鉄道と路面電車を走らせる、数少ない鉄道会社なのだ。

↑豊橋市内を走る路面電車・豊橋鉄道市内線(東田本線)。写真はT1000形で、「ほっトラム」の愛称を持つ。低床構造の車両で2008年に導入された

 

【クイズ2】1の答えのなかで、県庁所在地でない街を走る鉄道は?

【答え2】県庁所在地でない街を走るのは豊橋鉄道のみ

前述した普通鉄道と路面電車の両方を走らせる鉄道会社は、ほとんどが都・府・県庁所在地を走る鉄道だ。

 

5社のうち唯一、豊橋鉄道が走る豊橋市のみ県庁所在地ではない。豊橋市の人口は約37万人で、首都圏で同規模の人口を持つ街をあげるとしたら川越市、所沢市(両市とも埼玉県)が近い。人口30万人台の都市で、普通鉄道と路面電車の両方が走る、というのは異色の存在と言うことができるだろう。

 

豊橋市は愛知県の中核都市とはいえ、豊橋鉄道を巡る環境は決して恵まれていない。にも関わらず豊橋鉄道は優良企業であり、年々、手堅く収益を上げ続けている元気な地方鉄道だ。

 

今回は、そうした“元気印”の豊橋鉄道渥美線と市内線を巡る旅を楽しもう。

↑豊橋鉄道渥美線の電車はすべてが1800系。もと東京急行電鉄の7200系だ。電車は3両×10編成あり、すべての色が異なる。写真は1808号車で編成名は「椿」

 

渥美線、市内線ともに90年以上、豊橋を走り続けてきた

豊橋鉄道の歴史を簡単に振り返っておこう。

 

1924(大正13)年1月:渥美電鉄が高師駅(たかしえき)〜豊島駅間を開業

1925(大正14)年5月:新豊橋駅〜田原駅(現・三河田原駅)間が開業

1925(大正14年)7月:豊橋電気軌道が市内線を開業、以降、路線を延長

1940(昭和15)年:名古屋鉄道(以降、名鉄と略)が渥美電鉄を合併

1949(昭和24)年:豊橋電気軌道が豊橋交通に社名変更

1954(昭和29)年:豊橋交通が豊橋鉄道に社名を変更。同年に名鉄が渥美線を豊橋鉄道へ譲渡

 

歴史を見ると、太平洋戦争前までは、渥美線と市内線(東田本線)は別の歩みをしていた。その後に名鉄に吸収合併された渥美線が、名鉄の経営から離れ、市内線を走らせていた豊橋鉄道に合流した。ちなみに、現在も豊橋鉄道は名鉄の連結子会社となっている。

 

【豊橋鉄道渥美線】全10色の「カラフルトレイン」が沿線を彩る

豊橋鉄道は旅をする者にとって、乗って楽しめる鉄道でもある。

 

まずは豊橋鉄道渥美線の旅から。渥美線の電車は、その名もずばり「カラフルトレイン」の名が付く。

 

渥美線の電車は、とにかくカラフルだ。3両×10編成の電車が使われるが、すべての色が違う。1801号車は赤い「ばら」、1802号車は茶色の「はまぼう」、1803号車はピンクで「つつじ」、というように各編成には、沿線に咲く草花の愛称が付けられる。

↑赤い車両は1801号で編成名は「ばら」。渥美線の電車は沿線を彩る花や植物にちなんだカラーに正面やドアなどが塗られ、「カラフルトレイン」の名が付けられている

 

↑カラフルトレインの車体には写真のようにカラフルなイラストが描かれる。10編成ある車体の違いを見比べても楽しい

 

電車は元東京急行電鉄の7200系。1967(昭和42)年に誕生したステンレス車で東急では田園都市線、東横線などを長年、走り続けた。2000(平成12)年には全車両がすでに引退している。豊橋鉄道では、この東急を引退した年に計30両を譲り受けた。

↑豊橋鉄道渥美線の電車はすべて1800系。元東急の7200系で、製造されたのは昭和42年から。東急車輌の銘板が掲げられる。車歴はほぼ50年だが大事に使われている

 

生まれた年を考慮すると、かなりの古参の車両ではあるが、豊橋鉄道では、古さを感じさせないカラフルなカラーに模様替えされている。

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