【西田宗千佳連載】なぜいまモバイルバッテリーに「半固体電池」? “発火しにくい”が注目される理由

ink_pen 2026/7/3
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【西田宗千佳連載】なぜいまモバイルバッテリーに「半固体電池」? “発火しにくい”が注目される理由
西田宗千佳
にしだむねちか
西田宗千佳

モバイル機器、PC、家電などに精通するフリージャーナリスト。取材記事を雑誌や新聞などに寄稿するほか、テレビ番組などの監修も手がける。ツイッターアカウントは@mnishi41。

Vol.163-1

本連載では、ジャーナリスト・西田宗千佳氏がデジタル業界の最新動向をレポートする。今回は「半固体電池」を採用したモバイルバッテリーの話題。リチウムイオン電池ながら“発火しにくい”というメリットと、課題に迫る。

今月の注目アイテム

バッファロー

BMPBSA10000

5990円(税込)

↑バッファローは半固体電池を採用することで安全性を確保し、市場に参入した。

ゲル状の電解質により釘を刺しても燃えない

モバイルバッテリーとして「半固体電池」の利用が進んでいる。理由は“発火事故につながりにくい”からだ。

昨今、リチウムイオン充電池を使ったモバイルバッテリーの発火事故が相次いでいる。毎年事故件数は増加し、ついに2026年4月24日からは、国土交通省により、航空機内での「モバイルバッテリーによる充電」「モバイルバッテリーへの充電」が禁止されることになった。それだけ、モバイルバッテリーの利用自体が危険性をはらんでいると判断されているわけだ。

そんな流れも受けて出てきたのが「半固体電池」だ。「準固体電池」と呼ばれることもあるが、同じものと考えていい。

加熱からの燃焼事故が起きにくいということをウリにしていて、“釘を刺しても燃えない”というデモを公開する企業も多い。モバイルバッテリーの新製品では特に採用が拡大しており、中にはバッファローのように、過去にはモバイルバッテリー市場に参入していなかったにもかかわらず、“安全性が担保できるなら”ということで参入を決めたところも多い。

半固体電池はリチウムイオン電池の1つだ。違いは内部を満たしている「電解質」が可燃性の液体ではなく、ゲル状のものになっていることだ。

リチウムイオン電池は、正極と負極の間が電解質という液体で満たされている。電解質をリチウムイオンが移動することで発電するのだが、電解質となる液体は有機溶剤であり、可燃性が高い。

リチウムイオン電池を使ったモバイルバッテリーで発火事故が多いのは、スマホに比べて落下などで損傷しやすいためでもある。バッテリーの損傷などが原因で正極と負極がショートすると、そこから異常加熱が発生し、連鎖的に有機溶剤も加熱して、大規模な発火に至りやすい。

生産量が増えることでコスト高は解消するが…

半固体電池はリチウムイオン電池と同じ仕組みで充電・発電をしている。だが、電解質をゲル状の物体にした結果、ゲル状の物質自体がショートの拡大を防ぐ役割を果たし、影響が拡大しにくくなった。“釘を刺しても燃えない”というのは、従来であれば釘を刺すことで一気にショートが拡大していたものが、半固体電池では拡大しづらくなったためである。

もちろん問題もある。

現状では製造コストが高く、リチウムイオン電池に比べて価格が上がる。小型化・薄型化にも不利で、容量の割にサイズが大きくなる。また、ゲルは有機溶剤に比べ低温での特性が悪く、極端に寒い環境では、通常のリチウムイオン電池よりも性能が落ちる。

ただ、コストの問題は生産量の増加などで解決する可能性は高い。であれば、特にモバイルバッテリーでは、半固体電池の採用がさらに増えると考えられる。

だがそもそも、半固体電池もリチウムイオン電池であり、根本的な課題解決とは言い難い。発火事故には、ほかにも課題があるからだ。そのため当面、半固体電池を使っていても、航空機内での利用には制限がかかる。

今後バッテリー技術はどうなるのか? 解決方法はどこにあるのか? その点は次回以降で解説していくことにしよう。


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