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2017/10/19 20:00

嗚呼サニーデイのない人生なんて! サニーデイ・サービス、北沢夏音「青春狂走曲」に寄せて

GetNavi、GetNavi webでお馴染み、田中 貴さんがベースを務めるサニーデイ・サービスの初の単行本が発売されました。本書は、同バンドをずっと追い続けてきた北沢夏音さんが40時間におよぶロングインタビューを行い、メンバー3人の波乱に満ちた人生を追った作品。

 

本稿では、サニーデイを愛しサニーデイに愛された(!?)オトコ、エディターの高橋真之介氏による偏愛すぎる書評を展開していきます。


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「青春狂走曲」

サニーデイ・サービス、北沢夏音著

2300円(税別) スタンド・ブックス刊

 

1995年、大学2年の春、英語かフランス語のどっちかの授業中かは忘れたが、毎日のように一緒にレコード屋巡りをしていた秋田県出身で音楽好きのIくんから渡された一枚のアルバム「若者たち」。昔はブルーハーツとかジュンスカ、ユニコーンとか聴いていた時期もあるが、そのころすっかり邦楽への興味は失せていて、洋楽しか聴いてなかった僕の耳にするりとなじみよく入り込んできた。それがサニーデイ・サービスとの出会いってやつ。

 

それから、もう20年以上経っているが、今も変わらずどうしようもないくらい聴き続けている。こんな長く付き合っているバンドはサニーデイとビートルズしかいない。ここ2か月くらいはゴルフに行く時の運転中は4枚目のアルバム「サニーデイ・サービス」(97年リリース)を無限ループのように聴いていた。そしたら先日、10月4日の恵比寿リキッドルームでのアルバム再現ライブである。

 

終演後、興奮冷めやらない僕とゲットナビウェブ プロデューサー・松井はライブを振り返りながら、あーだこーだと飲んだくれていたが、途中からメンバーの田中さんに合流して頂き、最後はアコギの置いてあるバーで夜通しサニーデイを歌いまくった。結果、「そして風が吹く」ならぬ「そして風邪を引く」ということになった。それほどまでに人を狂わせる迷惑なバンドなのである、サニーデイ・サービスってやつは!

 

さて、本著「青春狂走曲」を書いた北沢夏音さんの名前は以前から音楽誌などで拝見していたが、音楽誌「バァフアウト!」の創刊者だったとはこのタイミングで初めて知った。確かサニーデイの表紙もあったなあ(手元にあるのを確認したら2000年9月号だった。7枚目「LOVE ALBUM」のリリースタイミングである)なんて思い出していた。

 

本編は北沢氏が過去に「バァフアウト!」や「クイック・ジャパン」などでサニーデイにインタヴューした懐かしの記事を含め、再結成後から最新アルバム「Popcorn Ballads」に至るまでの、もはやメンバーのような距離感で繰り広げられるやり取りをまとめた特別な内容となっている。深夜に友達の部屋で酒を飲みながら、好きなレコードを聴いて過ごすようなあの感じ。それは、米ローリングストーン誌の名物ライター、ジョナサン・コットがジョン・レノンにインタヴューしているような密な世界だった。

 

メンバーの苦悩や関係性、家族のこと、まるでアスリートのような音楽への情熱とストイックさ……。 “生きたインタヴュー”とはまさにこのことだ。僕も「サニーデイ研究会(メンバー・田中さん公認。おそらく曽我部さんも認めてくれるはず!)」としてまだまだだなと感じるくらい、「えっ、そんな知られざるデモ曲あったのか!」とか新しい発見も次々にあって、中毒性を帯びた小説のようにあっという間に読了してしまった。

 

曽我部さんがソロ3枚目のアルバム「STRAWBERRY」を出した2004年の秋頃、完全に24時を過ぎていたがダブルオーテレサの植木くんに連れられて曽我部さんの自宅へ行き、当時制作中だったアルバムのデモを聴かせてもらったことや、サニーデイのアートワークを手がけるイラストレーター・小田島等さんと下北あたりで朝まで飲み明かしたことなど僕なりの記憶もだんだんと蘇る。そのあとに再びクルマで聴いた、現在ベヴィロテ扱いの4枚目「サニーデイ・サービス」。いつもよりちょっとだけだけど、なんだか新鮮に聴こえたんだよね。

 

【プロフィール】

高橋真之介(たかはし・しんのすけ)

1975年生まれ、北海道函館市出身。tokyo-mirai名義で2000年、1stシングル「風のメロディ」でメジャーデビュー。03年のバンド解散後は雑誌編集者に。「25ansウエディング」「OCEANS」「ローリングストーン日本版」を経て、現在は週刊パーゴルフ編集部所属(ベストスコアは84)。また、ゲットナビウェブ プロデューサーの松井(ヴォーカル)、GetNavi編集部の小林(ドラムス)らと組んでいる“下半身直撃☆五反田系バンド”ことTokyo Salamanderではベースを担当。“東京”という名のつくバンドに縁があるのも、サニーデイの呪縛なのかもしれない。