ファッション
2018/2/4 11:00

アイコンはブランドとともに進化を続ける【SIHH2018/パネライ編】

ウオッチシーズンの幕開けとなるSIHH 2018が1月15日から19日にかけ、スイス・ジュネーブで開催されました。国際高級時計見本市と銘打つだけに、その動向は業界の1年を占うに十分。出展数は前年の30ブランドから35ブランドに増え、とくにエルメスがバーゼルワールドから移るなど話題性も盛り沢山なイベントとなりました。そのなかで注目したブランドの新作と方向性について、ライター柴田 充さんがお伝えします。

 

20180201_kaki_WN_06

 

 

アーカイブをモチーフに広がり続ける無限の可能性

高級時計において、ひとめでそのブランドとわかるようなアイコン的な要素は不可欠であり、それはオリジナリティとともに、歴史や伝統を象徴する唯一無二の価値になります。その重要性をどこよりも感じ、大切にしているのがパネライといっていいでしょう。

 

ラインナップはいずれも自社のアーカイブをモチーフに、そこから逸脱することはありません。マニアでなければ違いがわからないほどスタイルは似ていたとしても、異なる仕様や機能を備え、むしろその微差がファンを魅了するのです。今年の新作もそのブランドポリシーを感じさせる魅力あるものでした。

 

まず注目したのは「ルミノール ドゥエ」の拡充です。シリーズは一昨年登場し、ルミノールの基本デザインを受け継ぎつつ、ケースをよりコンパクトかつ薄く仕上げることで、ビジネススーツばかりかタキシードにも違和感のないドレッシーなスタイルにも映えます。新作ではパネライ史上最小の38mm径や、カレンダー表示はじめ、パワーリザーブインジケーターや24時間表示の第2時間帯表示など機能面でも充実しました。

 

ミニマルなデザインで人気の高い「ルミノール マリーナ ロゴ」では、手巻き式の新しい自社キャリバーP.6000を搭載し、中味から完成度を増す一方で、デニム地のストラップを組み合わせ、若々しくアクティブな存在感に溢れます。

 

こうした熟成進化に加え、イノベーションの分野でも充実を図ります。目を引いたのは「ロ シェンツィアート ルミノール 1950 トゥールビヨン GMT」。一昨年に発表されたDMLS(直接金属レーザー焼結方式)の3Dプリンターによるチタンケース製法は、新たな時計製造技術として大きな話題を呼びました。新作では文字盤のフランジ始めブルーのアクセントカラーを採用し、その先進性をより明確に打ち出します。アイコニックな「ルミノール 1950」のデザインを損なうことなく、未来志向の革新技術を注ぎ、さらに進化を遂げる。アーカイブをモチーフにしながらも、無限の可能性がそこには広がります。それこそがパネライにおけるアイコンのあり方なのです。

 

20180201_kaki_WN_07

 

 

パネライ史上最小、かつ厚みも11.2mmに抑えたコンパクトなケースに、独自のリュウズプロテクターが目を引きます。インデックスとストラップにはミントグリーンをあしらい、フェミニンな印象を演出。女性に圧倒的な人気を得ること必至ですが、ストラップをブラックや文字盤色に合わせてスレートグレーにすればメンズのドレスウォッチにも。

 

20180201_kaki_WN_08

 

 

デビュー時は2針スモールセコンドだった「ルミノール ドゥエ」も新作はすべてカレンダーを備え、さらに新しい自社ムーブメントP.4002はGMT、パワーリザーブ、ゼロリセットを装備しました。いずれもパネライを代表する付加機能であり、これもシリーズとして確立した証です。下方に張り出したラグの設計で腕にも心地良くフィットします。

 

20180201_kaki_WN_09

 

 

「ルミノールロゴ」はエントリーモデルとして人気も高く、新開発のP.6000搭載でより魅力的に。ストラップと同色のOPロゴがミニマルデザインのアクセントになり、スポーティさを打ち出します。ブランドの原点回帰モデルとして選ぶにも最適で、手巻き式を考えると動作確認のためにもスモールセコンド付きの「マリーナ」がお薦めです。

 

20180201_kaki_WN_10

 

 

時計のケース製造に3Dプリンターという画期的な技術をもたらした革新性にふさわしいカラーリングを纏います。手にした瞬間の軽量性は驚異的で、これはスチールに比べて約40%軽量のチタンをさらに中空構造にすることで実現しました。まるで未来から来たパネライを思わせ、そこにもブランドアイコンの普遍性を印象づけるのです。

 

 

パネライの新たな歴史の扉が開いた

昨年末、パネライCEOのアンジェロ・ボナーティ氏の退任が発表されました。1997年のブランド復活を牽引し、ここまで成長させた立役者のボナーティ氏こそブランド中興の祖といえるでしょう。そして新たな歴史の扉を開いたパネライの新作が“2”の意味を持つ「ルミノール ドゥエ」であるのも象徴的です。

 

熱狂的なパネリストのなかには“デカ厚ケース”にこだわるファンもいますが、クルマの世界でもいまやアルファロメオがSUVを発表する時代であり、現代のニーズに応じたスタイルを取り込むことでブランドの魅力や可能性はさらに広がります。だからこそ今年のパネライの新作は見どころが多く、今後への期待感もさらに増したのです。