家電
炊飯器
2021/8/18 18:15

「アイリス史上最高」とうたう炊飯器「瞬熱真空釜」に期待! 自信の根拠は「お家芸」のLED技術にあり

かまどで炊いたごはんは美味しい。それは、“薪による高温の炎で釜を包み込み、釜の中で米をかき混ぜ、踊らせているから炊きムラがなく、粒立ったごはんが炊ける”から。これが日本の炊飯器づくりの常識。だからメーカー各社はこれまでかまどごはんの再現に情熱を燃やし、釜の中でいかに米を踊らせて美味しいごはんを炊き上げるかに腐心してきました。

 

……しかし。

 

「かまど炊きのごはんは、実は踊っていませんでした」

 

アイリスオーヤマの河阪雅之マネージャーが言い切ったとき、発表会の会場には「なんだってー!!!!」というメディア関係者たちの心の声が響き渡っていたに違いありません。いままでの常識が覆された瞬間でした。

↑「かまどのごはんは踊っていませんでした」と衝撃的なことをサラッと言う家電開発部調理家電課の河阪マネージャー

 

色をつけた米を炊いたら、ほとんど移動していない事実が判明

アイリスオーヤマは2015年から炊飯器事業に参入し、“おいしいごはんは水加減と火加減がポイント”という考えのもと、水加減は米の量に合わせて最適な水量を告知する「量り炊き」、火加減は米の銘柄に合わせて自動で加熱調節する「銘柄炊き」機能を開発し、製品に搭載してきました。

 

さらにごはんを美味しく炊き上げる要素として“釜”に注目し、宮城県の自社工場内の研究所で徹底的に研究してきたとのこと。研究メンバーは精米事業やパックごはん事業に携わり、全員が食味鑑定士の資格を持つ米のスペシャリスト。かまど炊きごはんの専門店に何度も通い、最終的には工場の敷地内にかまどを作ってしまったそうです。そうしてかまど炊きを深堀りしている中で偶然見つけたのが、先述の「かまどごはんは米が踊っていない」という事実。

 

「当初は高火力で激しく対流していると思っていましたが、食紅で色をつけた米を炊いたら、ほとんど移動していませんでした」と、河阪マネージャー。ではなぜ踊らないのか。「一般的な炊飯器は釜底にヒーターがあり、下の方から熱せられ上部との温度差が生じて釜の中で対流が起こります。しかし、かまどは釜全体を炎が包み込むことで、全体が瞬間的に均一の温度になる。そのため、釜の中の水は対流せずに米は踊りません」。釜全体の温度が均一だから、米が踊らなくても炊きムラがなくて美味しいというわけです。

↑アイリスオーヤマが実際にかまどでごはんを炊いてみたら、3色に染めた米が混ざらず、きれいな層になっていた

 

LEDの技術を応用し、釜全体に瞬時に熱を伝える技術を開発

このかまど炊飯の仕組みを炊飯器で再現するために、アイリスオーヤマは部門の壁を越えて製品開発に取り組みました。同社はLED照明器具で大きなシェアを持っており、これに使用されている熱伝導技術のヒートパイプを活用したのです。ヒートパイプとは、真空パイプ内部に閉じ込められた作動液と呼ばれる液体が加熱されることで瞬時に沸騰して気体化し、パイプ内を超高速で移動して均一に熱を伝えていく仕組み。

↑LED照明器具に利用されているヒートパイプ。真空のパイプの中で熱せられた作動液が瞬時に蒸発し、パイプ全体に超高速で熱を伝える

 

新開発の炊飯器では内釜を2層化し、層の間に設けた真空層に作動液を注入。ヒートパイプ同様、釜底を熱することで瞬時に釜全体に熱が行き渡る「瞬熱真空釜」を開発しました。これにより、従来の炊飯釜に比べて熱伝導速度はなんと約100倍になったといいます。

 

なお、気体化した作動液は放熱しながら釜上部に到達すると液体に戻り、釜底中央に戻って再度熱せられると気体になって熱を伝導。液体⇔気体の状態変化を繰り返すことで、熱を伝え続けます。真空層は密閉されているので、作動液が減ることはありません。

↑二重になった釜の内部に作動液を封入

 

↑釜底部を加熱すると作動液が一瞬で蒸発して釜全体に熱を伝導

 

↑内釜のカットモデル。真空層は4mm

 

  1. 1
  2. 2
全文表示