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2016/11/11 18:28

伝説のアニメ「タイガーマスク」が‟オトナ味”になった!? プロレスラー永田裕志も「外交上手」として実名で登場!

東映アニメーションは、創立60周年を記念して「タイガーマスク」のその後を描いた「タイガーマスクW」を製作。かつての名作が現代に蘇るという点で、大きな注目を集めている。また、本作にはオカダ・カズチカ、真壁刀義といった新日本プロレスの人気レスラーが実名で登場し、物語を盛り上げているのも大きな見どころ。

 

今回は、物語のなかで大きな役割を果たす“新日本プロレスの生きる伝説”こと永田裕志選手と、劇中で永田選手の吹き替えを担当する声優てらそままさきサンに、「タイガーマスクW」の魅力について聞くことができた。加えて、当アニメのプロデューサー、ギャルマト・ボグダン氏にも作品の魅力を聞くことができたので、そちらも併せてお届けしよう。

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PROFILE

永田裕志(左)

Yuji Nagata

1968年生まれ、千葉県出身のプロレスラー。身長183㎝、体重108kg。“新日本プロレスの生きる伝説”として知られ、「ブルージャスティス」の愛称を持つ。高校時代にはレスリング部に所属しオリンピックを目指す。1992年にプロレスラーとしてデビューを果たし、第31代、46代IWGPヘビー級王座に君臨するなど常に第一線で活躍。敬礼ポーズと「ゼアッ!」の掛け声で会場を沸かせている。白目をむきながらの腕固め(通称「白目式腕固め」)でも有名。

 

PROFILE

てらそままさき(右)

Masaki Terasoma

1962年生まれ、兵庫県出身の俳優・声優・ナレーター。大学卒業後は劇団俳優座に所属し、1984年「Wの悲劇」で映画デビューを果たす。現在も数多くの作品に俳優として登場。また、映画、ドラマ、舞台での活躍と共に、海外ドラマの吹き替えを始め、仮面ライダー電王のキンタロス、進撃の巨人のペトラの父など、声優・ナレーターとしても精力的に活動を行う。

 

永田裕志「最初にプロレスに触れたのがタイガーマスク」

――お二人にとって、「タイガーマスク」はどんな存在でしたか?

 

てらそま オンエアをリアルタイムで見ていたどストライクの世代ですよ。タイガーマスクがみなしごである、というのがすごく来るところがあって。時代が時代でしたから。伊達直人が魂を込めて体をはって。エンディングの歌がまた悲しいんですよね。

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永田 確かに! 思い出すと切なくなりますよね。僕にとっては、最初にプロレスに触れたのがタイガーマスクなんです。アニメの中にジャイアント馬場さん、アントニオ猪木さんがいて。アニメのキャラかと思ったら、実際にこういう人がいるんだって、あとで知って驚きました(笑)。あと敵キャラでは、ミスターXが印象に残っていますね。そういえば、最新作で登場するミスターXも同じ方が声を担当されるとか。

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てらそま そうなんです。47年前の「タイガーマスク」でミスターXの声を担当していた柴田秀勝さんが、最新作でも同じ役で吹き替えをしているんです。これってすごいことですよね!

 

永田 本当にすごいことです。そんな貴重な作品に実名で出演できたことは、本当に光栄ですね。

 

――永田さんは、ご自身がアニメに出演したシーンを見てどう感じました?

 

永田 とにかく、ありがたいですね。てらそまさんにやっていただけて、しかも若く描いていただきまして(笑)。人生の中でも大きな出来事になりそうです。画もちゃんと特徴を掴んでいますね。放映された作品を7歳になる息子が見て、「おとうさん、似てる似てる!」と喜んでくれました。たとえばこの絵(下画像下段中央)、汗がイイ(笑)。

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声優にとって現役選手を演じるのはやりにくい?

てらそま 今回、劇中の永田さんは、プロデューサーのような立場も担ってまして。そうした立場ならではの悩みや葛藤が、たくさん描かれています。

 

永田 でも、アニメのほうの僕は、結構うまいことやってますよね。世界で注目されるカードを組んじゃうんですから。相手に何もいえずにOK出させちゃうんだから、交渉上手だなと(笑)。

 

――てらそまサンは、まだ現役の選手を演じるわけですが、やりにくさなどはないんでしょうか?

 

てらそま やりにくいかどうかって、そりゃあ、やりにくいですよ(笑)。ご本人のほうが圧倒的にすごいので。ただ、ひとつ決めているのは、現実の永田さんに似せるということはあまり考えないでおこうかと。アニメの世界の永田裕志として、フィクションの世界を楽しんでもらおうというスタンスですね。ただ「ゼアッ」など“おいしい所”はシッカリといただきましたよ(笑)。

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――最後に、「タイガーマスクW」の見どころを教えてください!

 

永田 夢とロマンと感動が詰まったアニメです。コレを見て、主人公のように「諦めずに前へ突き進もう」という気持ちを持っていただけたら。現実のほうでも、10月10日の両国国技館の試合でタイガーマスクWがデビュー。レッドデスマスクとのシングルマッチで、華麗な空中殺法で場内を魅了していました。こうしたアニメと現実のコラボも見どころですね。

 

てらそま 現実のタイガーマスクも、「タイガーマスクW」の主人公たちも、あれだけのパフォーマンスを発揮するには、ものすごく厳しいトレーニングに耐えなければ絶対ムリ。僕の中では、そういう魂というか熱い気持ちがないと、現代の社会は生き抜いていけないと思っています。かつての「タイガーマスク」が我々に教えてくれたように、この作品で「人生には何があるんだろう」「人間には何が必要なんだろう」と、視聴者が感じる手助けになれたらうれしいですね。

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実はプロデューサーはルーマニア出身だった!

こうして永田選手、てらそま氏のインタビューが終了。我々は作品についてもう少し詳しい話を聞きたいと思い、広報担当者にその旨を伝えたところ、「それなら、プロデューサーに聞きますか?」との願ってもない展開に。広報担当者は、すぐ近くにいた外国人を呼び止めると、その外国人がテーブルに着いた。なぜ外国人が席に? この方は、新日本プロレスの関係者では? ……と思っていたら、なんとこの方こそが「タイガーマスクW」のプロデューサーだったのだ! では、ルーマニア出身、ハンガリー育ちというギャルマト・ボグダン氏にお話を聞いていこう。

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――まずは、タイガーマスクを蘇らせたきっかけを教えてください。

 

ボグダン 私は日本に住んで27年になりますが、リアルタイムでタイガーマスクを見ていた世代ではありません。タイガーマスクを知ったのは、阪神淡路大震災のとき。「伊達直人」(タイガーマスクに扮した主人公)を名乗ってランドセルを贈る人、寄付を行う人がいることを知り、多くの人の心にタイガーマスクのイメージが残っていることを知りました。これをきっかけにタイガーマスクが好きになり、「あのタイガーマスクを再びやりたい」と思うようになったんです。

 

――この作品を作るうえで、意識したことは?

 

ボグダン 昔からのタイガーマスクのファンを取り込みながら、現代に合わせた作りにすること。本編には「ミスターX」や「虎の穴」などが出てきますし、主題歌は懐かしい「行けタイガーマスク」。でも、主題歌は湘南乃風に歌ってもらうことで、現代のイメージに仕上げています。

 

――絵柄も昔のタイガーマスクと似ているようですが。

 

ボグダン 苦労して昔の絵柄を再現しているんです。昔のアニメはセルという透明シートを使っており、紙からセルに絵をトレースする過程で、どうしても線が太くなる。今回はもちろんセル画じゃないんですが、わざわざ線をデジタルで太くしています。見る人が見れば、「あ、あのタイガーマスクだ」とわかってくれるはずですよ。

 

技のディテールまでリアリティを追求

――制作にあたって、もっとも苦労した点はどこですか?

 

ボグダン リアルなプロレスの技を忠実に再現することですね。いまは技が違っていたら、SNSであっという間に広まってしまいますから。しかし、アニメーターはプロレスの素人なので、手の組み方ひとつとってもまったくわからない。実際の映像をチェックしながら何度も何度も直しました。プロレスラーに実際に来てもらったこともありましたし、プロレスの演出もずいぶん研究しました。

 

――「なぜいまタイガーマスクなのか」と多くの人が疑問に感じていると思います。

 

ボグダン いま世に出したのは、特に狙いがあったわけではありません。昔からプロレスとアニメはいい関係にあって、アニメの調子がいいときはプロレスも良いという相関関係があります。いまは新日本プロレスさんも盛り上がっているし、アニメも頑張っているし、どちらもあと一押しでメジャーにいけるんじゃないかという時期。互いの状況がシンクロして、機が熟したということでしょうか。

 

――ちなみに、放映時間は土曜の深夜2時45分。子どもが見れない時間帯ですよね。

 

ボグダン インターネット配信で見られますから。とはいえ、いまは子どもに暴力は見せづらいですし、メインのターゲットはやはりオトナ。子どもだったら、主人公がひとりで頑張って目の前の敵を倒すだけで楽しめますが、それだとオトナはつまらないので。話を複雑にして、ジレンマや悩みなどもストーリーに盛り込んでいます。深夜向けに作っているからこそ、オトナが存分に楽しめる出来になっていると思いますよ。

 

単なる勧善懲悪ではないストーリー、リアルにこだわったプロレス技、わざわざデジタルで再現したセル画時代の線。外交上手な永田選手の姿や、「おいしい所」を使いつつ、オリジナルを追求するてらそまさんの演技……。この「タイガーマスクW」、たくさんの見どころが詰まっているのがわかった。まだ見ていない人も続けて見ている人も、これらの見どころに注目しながら、次回のオンエアを楽しんでみてほしい。

 

 

東映アニメーション創立60周年記念作品

「タイガーマスクW」

テレビ朝日 毎週土曜 深夜2時45分より放送

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正義の覆面レスラーこと伊達直人が残したマスクを受け継いだ新タイガーマスクの東ナオトと、自らが敵陣営に加わり内部から組織を壊滅させるため、黒い虎のマスクを手にした「タイガー・ザ・ダーク」こと藤井タクマ。2人の若きプロレスラーがプロレス界の裏組織である「虎の穴」に立ち向かう、戦いと友情のストーリーは大人も楽しめる内容に仕立てられている。