Vol.163-2
本連載では、ジャーナリスト・西田宗千佳氏がデジタル業界の最新動向をレポートする。今回は「半固体電池」を採用したモバイルバッテリーの話題。リチウムイオン電池ながら“発火しにくい”というメリットと、課題に迫る。
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現在、モバイルバッテリーの新製品では「半固体電池」を採用したものが急速に増えている。その理由はもちろん、モバイルバッテリーの利用において、より高い安全性が求められるようになっているからだ。
ただし、安全だからといって、すべての人が購入するとは限らない。コストやサイズなどの面から、半固体電池を採用した製品を選ばない人もいるだろう。
それでも新製品の数は増え続けており、価格についても急速に改善が進みつつある。
背景にあるのは、リチウムイオン電池を生産している中国の工場が、半固体電池向けの生産ラインを急速に立ち上げており、供給量が劇的に増加していることだ。
リチウムイオン電池の生産は、その多くが中国で行われている。ごく少数の例外を除き、世界中で販売されているモバイルバッテリーは中国製である。もともとモバイルバッテリーの事故が増えた原因の1つには、中国の電池製造工場が過当競争に陥った結果、価格を引き下げる動きが加速し、電池の生産管理に問題が生じたことがある。
中国政府は規制を強化し、安全性の確保に関わる一定の基準を満たさない電池生産工場の操業を停止する措置なども行っている。これが2024年から2025年前半にかけての動きだ。
その後も各国で電池の焼損事故が相次いだ。その一因は、可燃性の高いリチウムイオン電池の利用が続き、その中に生産不良や利用時の破損、加熱などが原因で発火に至ったものがあったためだ。
電池メーカーとしても、市場のニーズに応えるためには安全性を高めなければならない。スマホやPCに搭載される電池は品質保証が比較的行き届いているが、価格重視のモバイルバッテリー向けでは、すべてを同じコストで回すわけにもいかない。そこで、半固体電池の生産ラインを立ち上げる動きが進んだのである。
この流れには、中国国内の事情も大きく影響している。中国では、モバイルバッテリーを「自分で買って使う」だけでなく、街中でレンタルする事業も拡大している。そうしたレンタルを手がける事業者は安全性を訴求するために、貸し出すモバイルバッテリーを半固体電池採用のものへと切り替えた。その巨大な需要が後押しとなり、電池自体の製造量が拡大。それを日本などの市場に向けたモバイルバッテリーに使う、という流れが出てきたのである。
消費者向けにモバイルバッテリーを販売するメーカーとしても、「安全性」というわかりやすい要素は魅力だ。コンビニや100円ショップなどで売られる低価格品の置き換えはまだ進んでいないが、数千円で売られる製品では、「半固体電池採用」が当たり前になりつつあると考えていいだろう。
半固体電池では、確かに従来品に比べて発火事故が起きづらくなった。だが、絶対に燃えないわけではない。あえて半固体電池を採用しないメーカーもある。
それはどういうことか。次回解説する。
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