ヘルスケア
2018/2/4 20:14

健康のバロメーターを仕事中にさりげなく測定できる! 次世代血圧計はなんと腕時計に搭載

1月9日から12日まで、米ネバダ州ラスベガスで家電製品を中心とした展示会「CES 2018 (Consumer Electronics Show)」が開催されました。その中でオムロン ヘルスケアが、コンセプトモデルとして2点の製品を展示。

 

健康診断でよく見る上腕部にベルトをぐるりと巻き、空気を送り込みながら測定するのが当たり前だった血圧計を、なんと手首に巻いたままいつでも血圧を測定できるようにする腕時計型のウェアラブルデバイス「HeartGuide」と、血圧と同時に心電を測定できる「OMRON BLOOD PRESURE MONITOR + EKG」です。まだ開発中とのことでしたが、実機を前にその機能や開発の目的などを伺ってきました。

↑毎年、年明けに開催されている展示会「CES」
↑毎年、年明けに開催されている展示会「CES」

 

↑オムロンヘルスケアのブース
↑オムロン ヘルスケアのブース

 

「HeartGuide」で就寝中も自動的に血圧が測れるようになる!

「HeartGuide」は、ふだんは腕時計や活動量計として使いながら、必要に応じて気軽に血圧も測れるウェアラブルデバイスです。

↑「HeartGuide」

 

見やすいディスプレイを備えた腕時計のようなデザインで、従来の手首式の血圧計からは想像できないほどコンパクト。ボタンを押して任意のタイミングで血圧測定ができるだけでなく、タイマー設定による自動測定も可能で、夜間、寝ている間にも自動的に血圧が測れるというのが大きな特徴です。

 

活動量計としては、歩数や移動距離、消費カロリー、睡眠のトラッキングなどができるほか、メールやメッセージ、着信などスマートフォンと連携した通知機能を備えており、サイドボタンを押すと表示が切りかわります。

↑歩数や消費カロリーも分かります
↑歩数や消費カロリーも分かります

 

↑睡眠時間のトラッキングも可能
↑睡眠時間のトラッキングも可能

 

↑スマートフォンからの通知も表示できます
↑スマートフォンからの通知も表示できます

 

血圧の測定方法は従来の血圧計と同じで、バンドの内側に空気を送り込み、手首を圧迫して計測します。血圧の測定時間は1分ほど。精度を保つため、測定時は手首を心臓と同じ高さに合わせます。

 

タイマー機能は就寝中の測定を前提にしているとのこと。就寝中は横になっているので、心臓と手がだいたい同じ高さにあり、測定条件としては理想的だそうです。

↑測定中の様子。手首を心臓の高さに合わせることで精度を保ちます↑測定中の様子。手首を心臓の高さに合わせることで精度を保ちます

 

測定結果が正常ならディスプレイに緑色の円が表示され、問題があると判定されると赤い円になります。Bluetoothでスマートフォンと連携し、各種データはアプリで管理できます。

 

充電方法は未定ですが、バッテリーは1日10回測定したとして1週間はもつだろうとのこと。

 

担当者によれば、これまでは安定して測るためにある程度バンドに幅が必要でしたが、腕時計並みのバンド幅の中に入れ込んでおり、その技術がオムロンならではなのだとか。また、このサイズでFDAの認可をとったものはまだないとしています。着け心地は良好のようで、就寝中に測定がはじまっても起きてしまうことはないそうです。

↑こちらは従来の手首型の血圧計
↑こちらは従来の手首型の血圧計

 

↑そんな血圧計が、腕時計サイズになりました
↑そんな血圧計が、腕時計サイズになりました

 

↑バンド幅が大幅に細くなっています
↑バンド幅が大幅に細くなっています

 

家族と共有したくなるかもしれませんが、本機は1人1台が前提です。なぜなら日常生活の中でひとりひとりの血圧の変動をトラッキングし、リスクを探し、大病を未然に防ぐのが目的だからです。

 

「HeartGuide」はまず米国での発売を目標にしており、価格は未定。血圧計として販売を予定しているため、現在FDAの認可待ちとのことで、今年中にできればとしています。日本での発売も視野にいれていますが、薬事法の認可後となるとのことです。

↑判定結果は数値周りの円の色でわかります。赤は警告。日本と米国では基準が異なり、米国のガイドラインでは下が80を超えると高血圧と判定されるとのこと
↑判定結果は数値周りの円の色でわかります。赤は警告。日本と米国では基準が異なり、米国のガイドラインでは下が80を超えると高血圧と判定されるとのこと

 

「BLOOD PRESURE MONITOR + EKG」で血圧と不整脈を同時にチェックできるようになる!

一方の「BLOOD PRESURE MONITOR + EKG」は据え置き型の血圧測定器です。

↑「BLOOD PRESURE MONITOR + EKG」
↑「BLOOD PRESURE MONITOR + EKG」

 

血圧の測定には腕を使い、方法も従来通り。ただし、本体の両脇に電極がついており、指を添えると血圧を測りながら一緒に心電が測定できるというもの。電極の位置などデザインは変わる可能性があるようです。

 

不整脈と高血圧の両方を持っている人が脳梗塞や心筋梗塞を発症する確率は、高血圧だけの人よりもさらに高いとのことで、血圧と同時に心電を測ることで、不整脈がないかどうかを検知する目的があります。

 

心電の測定に要する時間は約30秒で、結果はアプリ上で確認します。問題があると判定されると、血圧と心電の履歴が医者に送信され、適切な診断を仰げるようになるといいます。

 

こちらも現在FDAに申請中で、2018年度春の発売を目指しています。

↑血圧を測りながら心電を測定)
↑血圧を測りながら心電を測定

 

↑異常が見つかると医師にデータを送信。診断を仰げるようになるそうです
↑異常が見つかると医師にデータを送信。診断を仰げるようになるそうです

 

自分が抱えるリスクを事前に知る

いずれの製品も、日々のコンディションを手軽にトラッキングすることで、心筋梗塞や脳梗塞の発症を防ごうという狙いがあります。

 

担当者によれば、日本人の3人に1人は高血圧とのこと。その中の4割しか病院に行かず、さらにその中できちんと薬を服用して血圧を下げている人は15%程度と言われているそうです。とはいえ、血圧は1年に1回健康診断で測るか、気になっている人が家で測っているのが現状です。

 

しかし、昼間働いているときや、夜寝ているときも、本人が気づかないうちに高血圧になっている人が多いとのこと。特に睡眠時無呼吸症候群の方は、寝ている間に血圧が高くなっていることがあるそうです。高血圧は心筋梗塞や脳卒中の原因で、日本人の死因の上位を占めますが、日常的に血圧を測っていないので、自分に潜むリスクに気づきません。

 

オムロンには、血圧計のメーカーとしてもっと血圧を測りやすくすることで、心筋梗塞や脳卒中など、血圧に起因する病気のリスクに早く気づき、対策を打つことで未然に防いで欲しいという狙いがあります。今後は遺伝の情報や本人の病気の履歴などのデータとあわせて解析し、その人にあった細かい診断の提供につなげていきたいとのことで、今回の製品はそのための第一歩となります。

 

これまでのウェアエラブルデバイスといえば、活動を促すことで健康に導こうというものが中心でしたが、医療機器として体内の状態をトラッキングできるというのは新しい切り口。腕時計感覚で使える血圧計なら、意識せずとも血圧測定が可能になりそうです。朝と夜はボタンで、就寝中はタイマーで測定すれば、自分の健康状態が可視化できます。

 

オムロンヘルスケア 経営統轄部 広報渉外部長の中島 智氏は、「脳梗塞や心筋梗塞のリスクを早期に発見し、治療につなげたい。いかに減らしていけるか、いかに防ぐかが次の課題です。まずは高血圧かどうかを健康診断だけなく、定期的に調べてほしい」と語りました。