ユーザーの熱望でよみがえったプレミアムの血統。 DELL「XPS 14」が示す、スペックを超えた“心地よさ”

ink_pen 2026/7/31
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ユーザーの熱望でよみがえったプレミアムの血統。 DELL「XPS 14」が示す、スペックを超えた“心地よさ”
小川秀樹
おがわひでき
小川秀樹

編集プロダクションで編集・ライターとしてのキャリアをスタート。ビジネス、旅行、スマホ関連、著名人インタビュー記事などを幅広く制作してきました。趣味は国内外の旅行。特に東南アジアの文化を好み、タイとミャンマーには3年間の在住経験があります。

2025年に一度終了したDELLのプレミアムノートPCブランド「XPS」が、ユーザーの声に応えて復活を果たしました。

最新のCore Ultraシリーズ3搭載や最高クラスのバッテリー性能など、スペックの派手さに目が行きますが、実際に使ってみて感じたのは「道具としての心地良さ」。人間の「視覚」「触覚」「聴覚」を喜ばせる本機の実力を検証していきます。

復活を果たしたDELL最高峰のミニマリズム

DELLは2025年、「XPS」「Inspiron」などの製品名を廃止して「DELL」に統一するブランド刷新を行いました。しかし、これに対して一部のユーザーから疑問の声が続出。これを受けてDELLは2026年1月、プレミアムラインである「XPS」の継続を発表しました。先行して16インチの「XPS 16」、14インチの「XPS 14」の2機種が復活を果たし、6月には13インチの「XPS 13」が発表されています。

今回は、性能と機動性のバランスが取れた機種としてすでに人気を集めている「XPS 14」を実際に試してみて、使い心地をレビューしていきます。

高級感ある外装と軽快さを両立

素材はアルミニウムの削り出しで、カラーは現時点で「グラファイト」一色のみ。マットな質感がプレミアムラインらしい高級感を醸し出しています。

↑天板にあるのは「XPS」のロゴのみで、DELLのロゴは裏側の見えない位置に刻印されていた

手に持ってみると際立つのは薄さです。14.62mm(OLEDディスプレイ選択の場合)で、DELLの14インチノートPCの中で最も薄い製品となっています。

重量は約1.36kg(構成によって異なる)。国内ブランドを中心に14インチで1kg切りの製品もあるので、スペック的に目立つ数値ではありませんが、軽快な持ち運びに十分な軽さを実現しています。

↑14.62mmと薄いが、アルミ削り出しで剛性が高いため、つまむように持ってもボディがたわむ不安感がない

インターフェイスはThunderbolt 4ポートで多くをまかなう設計

ポートは「Thunderbolt 4(USB Type-C)」が3ポートと、オーディオジャックが1つのみ。

以前のモデルは、microSDカードスロットもついていたため、よりシンプルな方向へ舵を切ったことになりますが、継ぎ目の少ないボディにポートを最小限だけ配置することで、シンプルな美しさを実現しています。

↑左側はThunderbolt 4(USB Type-C)ポートが2つ。充電や映像出力などに対応する
↑右側面にもThunderbolt 4ポートが1つ。オーディオジャックがついているのがうれしい

キーボードとタッチパッドは使いやすさが向上

本機種のハードウェアにおける最大の特徴であり、大きな変更点と言えるのがキーボードとタッチパッドの設計です。

前世代モデルでは未来的デザインを追求するあまり、最上段がすべてタッチセンサー式で、タッチパッドとパームレストの境界線が完全にゼロという、かなり尖った仕様でした。残念ながらこれが「タッチタイピングがしにくい」「どこまでがタッチパッドかわからない」と、ユーザーの間で賛否を呼んでいました。

↑前世代機XPS 14(2025)のキーボードとタッチパッド。最上段のキーがタッチ式で、タッチパッドとパームレストの間には隙間が見えない作り

今回のXPSブランド復活を機に、キーボードの最上段には物理キーが復活しました。実際に触れてみても、やはりこちらの方がファンクションキーが押しやすいと感じます。

物理キーに戻りましたが、デザインが損なわれたかというとそうではありません。

DELL独自の「ゼロラティスキーボード」と呼ばれるこちらのキーボードは、その言葉通り、キーボードの間に格子(ラティス)状の隙間が存在せずシンプルで美しいデザインに仕上がっています。また、隙間がないぶん、キーひとつひとつの面積が通常より大きめで押しやすい印象です。

↑「H」キーの実寸は幅約19mm。筆者の14インチPCのものは約16mmだった。この3mmの差は大きい

また、タッチパッドは、パームレストとの境界が見えにくいシームレスな美しさは維持しつつ、よく見ると「うっすらとした境界線」が新たに出現しました。

ひと目見ただけでは、そこにパッドがあるとはわからないほどミニマルですが、触れるとわずかに質感が異なり、そこに境界線という視覚的なガイドが加わったことで、操作時の迷いは完全に解消されていると感じました。

↑写真にはほぼ写らないうっすらとした線がある。触れると境界線がわかりやすい

AI作業も軽くこなせるハイスペック

BTOによるカスタマイズが基本となる「XPS 14」の、主なスペックの選択肢は以下のとおりです。

項目カスタマイズの選択肢(主な仕様)
OSWindows 11 Home / Pro
CPUシリーズ3 インテル Core Ultraプロセッサー (Ultra 5 325 / Ultra 7 355 / Ultra X7 358H / Ultra X9 388H)
グラフィックスインテル グラフィックス / インテル Arc グラフィックス
メモリー16GB / 32GB / 64GB(LPDDR5x / 7467 MT/s)
ストレージ512GB / 1TB / 2TB / 4TB(M.2 PCIe NVMe SSD)
ディスプレイ14.0型有機EL(タッチ、2.8K、20-120Hz、400 nits)/ 14.0型液晶(非タッチ、2K、1-120Hz、500 nits)
バッテリー3セル、70Whr
キーボードグラファイトバックライト 日本語キーボード / 英語キーボード

スペックでまず注目すべき点は、最新の「シリーズ3 インテル Core Ultra プロセッサー」を全構成で採用したこと。こちらは強力なNPU(AI専用プロセッサー)を内蔵しており、AI機能が快適に動作する「Copilot+ PC」の要件を満たしています。今後さらに増加するであろうAI処理にも十分対処できるマシンです。

続いて注目してほしいのがバッテリーです。3セル・70Whrの大容量バッテリーを搭載しており、最長31時間という圧倒的な駆動時間を実現しています。

グラフィックス(GPU)にも注目です。前世代機ではNVIDIAの外部GPUが採用されていましたが、本機種ではインテルの内蔵GPUに一本化されています。内蔵とは言えパワーは十分で、特に上位のArcグラフィックスの場合、動画編集も十分こなせる実力があります。

重いゲームを最高画質で遊ぶのはさすがに厳しいですが、それよりも内蔵GPUになったことで発熱が抑えられ、バッテリー持ちが長くなったという利点に注目すべきでしょう。

なお、前世代機では指紋認証機能付きのキーボードを選択できましたが、今回は指紋認証がカットされたことには要注意。生体認証は顔認証のみとなっています。

ミニマリズムが、ビジネスの現場では「ストイックすぎる仕様」に?

ここまで見てきたとおり、継ぎ目が少ない外装、「ゼロラティスキーボード」や境界が見えにくいタッチパッド回りのデザイン、そして余計なものを削ぎ落としたポート類など、XPS 14は徹底的にシンプルで美しいマシンに仕上がっています。

また、DELLの製品はシステム環境もシンプルです。他社のフラッグシップ機の場合、独自開発のビジネス支援ソフトなどが大量にプリインストールされていることもありますが、本機にはそれがほぼありません。購入直後から余計なポップアップや通知に悩まされることがない、「素のWindows」に近い状態で使うことができます。

この徹底的にシンプルな環境は、ビジネスパーソンにとっても間違いなく大きなメリットです。しかし一方で、実際のビジネスの現場においては少々ストイックすぎる一面も持ち合わせています。

やはり最大のネックとなるのは、ポートの少なさです。ビジネスシーンでプロジェクターへの出力や有線LANなど、外部接続を多く行う人が本機種を使う場合、変換ハブなどの周辺機器が必須となります。

他社、特に国内ブランドのPCの場合、充実したインターフェイスを備えながら薄型・軽量化を実現している機種も多く、利便性や手軽さを最優先する場合、そちらに目を奪われるのは仕方のないことかもしれません。

中身がクリーンであることも、裏を返せば、他社製品によく見られるような「至れり尽くせりの独自機能(自動のWeb会議最適化や独自のセキュリティ機能など)」は用意されていない、ということでもあります。

こうした観点から考えると、本機は「わかりやすい多機能さや利便性」を最優先する人向けのマシンとは言いにくい、というのが正直なところです。

「感覚」へ訴えかける使い心地

上記のとおり、本機種は機能を盛りに盛ってアピールするようなPCではありません。では、このDELLのプレミアムPCはどこを目指して作られているのでしょうか? 一通り試してみて感じたのは、人間の「触覚」「視覚」「聴覚」に対する心地よさ・気持ちよさを徹底的に高めようとしている思想でした。

触覚

XPS 14を使っていてもっとも印象的だったのが、触れたときの心地よさでした。特にガラス(Gorilla Glass 3)素材を採用したパームレストはサラサラと滑るような触り心地で、触れているだけで気分がよくなるほど。高級な文房具に触れているような感覚です。

タッチパッドの操作感も良好。こちらは物理的に沈み込むボタンではなく「触感フィードバック」が採用されており、電源オフ時にはクリック感がありません。しかし電源を入れるとシステムが作動し、まるで本当にボタンを押しているかのような感覚が擬似的に再現されます。

↑「触感フィードバック」の再現性は非常に高い。言われなければ実際にクリックをしているように感じられるはず

そして、低発熱なことも触覚にいい影響を与えています。4K動画を20分ほど再生し続けてみましたが、一般的なノートPCで感じる不快な発熱はほとんどなし。キーボード付近がほんのり温かいかな? という程度でした。

視覚

2.8K OLED、最大120Hzのスペックどおり、ディスプレイはとても綺麗です。ひとつひとつの色彩が鮮やかで、黒が締まったメリハリのある美しい映像を堪能できます。

そして、映像への没入感の高さも印象的でした。狭いベゼルに加え、「ゼロラティスキーボード」や「境目のないタッチパッド」は、視界に余計なノイズを生み出さず、画面だけに集中できるように設計されており、視覚の心地よさを演出していると感じました。

↑作業中の見た目はこんなイメージ。視界に余計なものがないから画面だけに集中できた。それだけに右下のエンブレムシールの存在は少々残念かも

聴覚

本機種搭載の10Wクワッドスピーカーはキーボードの下に隠れて配置されており、表面からはまったく見えません。にも関わらず、非常に高音質な仕上がりです。ノートPCのスピーカーとは思えないほど音の解像度が高く、ライブ映像や映画を十分楽しめる実力を持っています。

↑キーボードの横はすっきりとした作り。前世代機はこの部分にスピーカーの網目があったが、それが廃止されたことで美しさが際立っている

また、剛性の高いボディのおかげで、音量を大きくしても本体がビリビリ震えて余計なノイズが発生する不快感もありませんでした。

そしてもうひとつ注目したいのが、静かさです。4K動画を連続再生しても低発熱なのでファンが回る音は一切聞こえず。これも聴覚の心地よさを演出しています。

機能の足し算に疲れた大人の選択肢

XPS 14は決して万人向けの一台とは言いにくいPCです。シンプルであるがゆえにビジネスシーンでは不便に感じることもあるかもしれませんし、内蔵GPUのみなのでゲームメインといった使い方にもおすすめはできません。

しかし、余計なものを削ぎ落として美しい見た目を実現したうえで、「触れる・見る・聴く」という基本的な体験の質を追い求める姿勢は、刺さる人には深く刺さるのではと感じました。

基本構成で約28万円、スペックにこだわれば約40万円という価格は、確かにハードルが高く映るかもしれません。しかし、高級な文房具や上質な時計を暮らしの相棒に選ぶような大人にとっては、この上ない選択肢となるはずです。

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