高橋一生インタビュー「松永監督との出会いをはじめ、すべてが貴重で新鮮さに溢れた現場でした」

ink_pen 2026/7/24
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高橋一生インタビュー「松永監督との出会いをはじめ、すべてが貴重で新鮮さに溢れた現場でした」
GetNavi web編集部
げっとなびうぇぶへんしゅうぶ
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警察や政治、巨大企業、そして知られざる過去が複雑に絡み合うクライム・ミステリー『犯罪者』。デビュー作にして、大きな話題を集めた太田愛氏の小説をAmazon Primeがドラマ化。主人公の刑事・相馬亮介を務めたのは高橋一生さん。「かけがえのない現場だった」と語る松永大司監督との出会い、そして自身を投影したという相馬役について、撮影を終えた今、その胸中に迫った。

高橋一生●たかはし・いっせい…1980年12月9日生まれ。東京都生まれ。最近の主な主演作に『岸辺露伴』シリーズ。ドラマ『ブラック・ジャック』『1972 渚の螢火』『リボーン~最後のヒーロー~』、映画『脛擦りの森』『ラプソディ・ラプソディ』など多数。ドラマ『この味もまたいつか恋しくなる』がNHK BS・BSP4Kにて今秋以降放送予定。

【高橋一生さん撮り下ろし写真】

監督からも、「この役はそのまんま一生だね」と言い当てられました(笑)

──“正義とは何か?”が大きなテーマとなった本作で、高橋さんは嘘や不正を嫌い、その潔癖さゆえに警察組織から孤立している刑事・相馬亮介を演じています。高橋さん自身はこの人物をどのように捉えていらっしゃいましたか?

 

高橋 僕は彼の行動がとてもよく理解できるんです。周りからすれば、相馬はいつも正論ばかりで、空気の読めないヤツのように思われていますが、相馬自身もそれを自覚し、みんなから煙たがられていることもわかっている。ただ、彼は決して自分の行動を正義だと思ってやっているわけでない気がするんです。“悪いことは悪い”という当たり前のことをないがしろにしてしまう社会や組織に対して、憤りを感じているだけのように思えて。そこは非常に共感できました。

 

──高橋さん自身にも近い部分があるのでしょうか?

 

高橋 とてもあります。松永大司監督もおっしゃっていましたから。最初の頃の打ち合わせで、「この役は、そのまんま一生だよね」と言われたんです。“この人、よくわかっているなぁ”と思いましたけれど(笑)。だからというわけではないのですが、実際に演じる際は役の個性を頑張って探すようなことはせず、自分自身に置き換え、“もし僕が刑事になっていたら、どんな人間になっていただろう”と考えながら、相馬という人物を表現していきました。

 

──そうした、自分自身を投影しながら演技をしていくことに難しさはなかったのでしょうか?

 

高橋 それはなかったです。むしろあまり経験のないことですし、完成したときにどんな作品になっているんだろうという興味がありました。それに、そもそも僕は“役作り”というものに非常に懐疑的で。役者に限らず、こうして誰かと会話をしている時だって、人はどこかしら演じているわけですから、簡単に“この人はこういう人間だ”と説明できないと思うんです。

 

──たしかにそうですね。

 

高橋 少し話が逸れてしまいますが、昔、オーディションでまさしく「ご自身を説明してください」と言われたことがあったんです。でも、自分の考えなんてその時々で変化していくものですし、自分をひと言で説明するのは無理だと思い、「わからないです」と答えたら、「ヤバいヤツだね」と言われて(笑)。そうは言っても、説明できないものはできない。僕はずっとそういう考えなんです。

 

──おっしゃるように、たしかに相馬も適当な言葉を交わすようなことはせず、不用意な発言もしない人物でした。だからこそ少しミステリアスさがあり、それが逆に人間っぽくも見えました。

 

高橋 彼は自分のことをあまり説明しませんから。この作品は太田愛さんの小説が原作としてあり、続編にあたる『幻夏』では回想で自分のことをたくさん語っていますが、『犯罪者』においてはまったく過去を振り返らないんです。ですから、視聴者の方は、“コイツなんだかよくわからないし、融通の利かない男だな”と感じるかもしれません(笑)。

「責任は俺が取る」という大司さんの言葉に救われました

──第1話を拝見しましたが、相馬はわかりやすく感情を表に出すことがなく、その分、目力やちょっとした表情の変化から心根が伝わってくるような印象を受けました。

 

高橋 過度な表現を省いたのは意図的でした。そうすることで、内実のようなものが滲み出てくるんじゃないかと思ったんです。例えば、自分が誰かに対して怒っている時、思わずテーブルを叩いてしまって、その強さで、“……あ、今、思っていた以上に怒っているんだな”と自覚することってあると思うんです。しかも、叩いた行為が引き金となって、より怒りが増幅したりもする。つまり、人には肉体から引っぱられて生まれる精神というものがあるんです。そういったものを僕はお芝居にも取り入れることが多くあります。

 

──そうした表現の手法は、以前からされていることなんでしょうか?

 

高橋 僕が10代半ばだった頃にお世話になった五木田亮一監督に教わったものなんです。昔ご一緒した際、「今から一生には本当に怒ってる芝居をしてもらわないといけないんだけれど、試しに、本番前に思いっきり奥歯に力を入れてからやってみて」と言われて。そうしたら、やはり怒気が違うんです。

 

──面白いです!

 

高橋 ただ、今作に関しては、それすらも極力少なくしました。むしろ、ほとんどないと言ってもいいぐらいです。とはいえ、それだと観ている方に相馬の感情が何も伝わらないかもしれないという不安があって。それでも大司さんは、「一生が届けたいことは全部伝わってくるから大丈夫」とおっしゃってくださったんです。「責任は全部俺が取るから」と。そこまで言っていただけたので、強い安心のもと、芝居に集中することができました。

恒司さんと工さんがいなければ、この“3軸”は成り得なかった

──本作は白昼に起きた通り魔事件を入口に、その裏に隠された真相を相馬が追う物語が軸となっています。事件の唯一の生存者である繁藤修司役には水上恒司さん、そして相馬とは旧知の仲で、捜査の手助けをする鑓水七雄役には斎藤工さん。お2人との共演はいかがでしたか?

 

高橋 お2人からは学ばせてもらうことが本当にたくさんありました。恒司さんは、わからないことを絶対にそのままにしないんです。人って、どうしても空気を読んで、“なんとなくわかってます”という雰囲気のまま、その場を凌いでしまうことがある。でも、恒司さんは「いや、わからないです」「監督が求めていることができていないかもしれませんが、まずは一度見てください」とはっきり口にする。そのことで、なあなあになりがちな現場の空気が引き締まるんです。同じように曖昧にしか理解できていなかった人にとっても、より理解を深められる機会になりますし、恒司さんがいてくれて心強く感じたことが何度もありました。

工さんとはこれまでにも何度か共演をさせていただいていて、絶対的な懐をお持ちの方という印象です。芝居でぶつかり合うことを戦いだと思っていないと言いますか(苦笑)。例えば、役者同士で張り合うような、“そう来るんだったら、こう返してやれ!”みたいなことが、工さんとの間では絶対に生まれないんです。すべて受け止めてくださる。だから、僕もとても楽でした。それに、ご自身で監督もされていますから、作品全体や互いの芝居を俯瞰で見る目もお持ちなんです。客観的な視点がありつつ、状況に応じて、役者として作品の世界に没入していく。その両面を、意図的かつ理知的にコントロールされている感じがしました。

 

──三者三様の在り方で、バランスの良さがうかがえます。

 

高橋 たしかに非常にバランスが取れていた3人でした。恒司さんがよく、今作の3人の登場人物たちのことを“3軸”とおっしゃっていましたが、この3軸を作ることにおいて、この上ないお2人だったと強く感じています。それに振り返ると、現場自体も、体育会系でも文化系でもない、面白い空気に包まれていたように思います。体育会系のように“絶対的な何か”を軸にして作品を作るわけでもなく、文化系のように何度も練りに練って答えを見つけていく感じでもなくて。役者や監督だけでなく、スタッフの皆さんを含め、全員が作品に参加している感覚が常にありました。

 

──では、現場での意見交換も活発に?

 

高橋 ありました。意見交換なんていう優しいものではなかったですけれどね(苦笑)。時には非常に理知的な討論に発展することもありました。普段の生活の中では、自分の意見を主張すると、周囲に“怒ってるのかな?”と受け取られかねないところがありますが、そうした空気もなく、みんなの中に「どうしてあなたは意見を言わないの?」「思ったことを全部言っちゃおうよ」という考えがベースとしてあったんです。そうした現場って意外と珍しいので、とても新鮮でした。

 

──お話をうかがっていると、監督に対しても、共演者に対しても、そして現場に対しても、ほかでは味わえない体験に満ちていたようですね。完成した映像を見るのが楽しみになります。

 

高橋 ありがとうございます。ただ、実は僕、自分の作品はすぐには見ないんです。僕にとっては撮影している時間やその過程が全てなので、完成品を見るのはまた別の工程のような感じがして。それに、編集でどのように切り取っていくかは監督の感性なので当然お任せになりますし、どこを切り取っていたとしても、監督と時間をかけて作品を作り上げた事実は残っているので、僕の中ではそれで充分満足なんです。特に今作は大司さんとのかけがえのない出会いがあったので、まずはその体験と思い出を大事にして、いつかふとした時に思い返すように見直そうかなと思っています。
 

GetNavi9月10月号(7月24日発売号)にて、高橋一生さんへのインタビューを掲載中。本作について、ドラマ制作についてお話いただきました。

 

Prime Originalドラマシリーズ『犯罪者』

(C) PROTX

7月17日(金)より毎週金曜日4週にわたり配信

全8話

(STAFF & CAST)
原作:太田愛「犯罪者」
監督:松永大司
脚本:櫻井武晴
出演:高橋一生、斎藤工、水上恒司 ほか

(STORY)
通り魔事件の生存者である繁藤修司(水上恒司)は、搬送先の病院で見知らぬ男に「あと10日生き延びれば助かる」と告げられる。一方、事件を追う刑事・相馬亮介(高橋)は修司の発言に違和感を抱き、元テレビマンである旧友・鑓水七雄(斎藤工)の力を借りて真相へと挑むのだが……。

(C) PROTX

 
撮影/小澤正朗 取材・文/倉田モトキ ヘアメイク/田中真維(MARVEE)スタイリスト/小林 新(UM)

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