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2022/10/27 20:45

京セラ、夜間走行時のセンシングに大きな効果をもたらす「車載ナイトビジョンシステム」を技術発表

京セラは10月11日、世界で初めて白色光と近赤外光の光軸一致・一体化した「車載ナイトビジョンシステム」の開発をしたと発表。同日、都内で記者説明会を開き、その効果についてデモを通した説明会を実施しました。なお、この車載ナイトビジョンシステムは、10月18日~10月21日に幕張メッセ(千葉県)で開催された「CEATEC 2022」にも出展していました。

↑クルマのフロント部分を使ったデモ機。ヘッドライト内にはWhite-IR照明が埋め込まれ、フロントグリル中央(エンブレム下)に備えられたのがRGB-IRセンサ。下の照明はヘッドライトをジオラマ用に設定したもの

 

車載ナイトビジョンシステムの実装は2027年ごろを予定

車載ナイトビジョンシステムは、照射された物体をRGB-IRセンサ(可視光と近赤外光センサ)で撮影し、その画像データから独自のフュージョン認識AI技術により高精度な物体検出を可能としたものです。白色光と近赤外光の光軸を一致させたレーザーヘッドライトは世界で初めてで、京セラでは、安全性の向上や自動運転車のセンシングデバイスとしての実用化も見込んでいます。

 

この白色光と近赤外光の光軸一致・一体化した車載ナイトビジョンシステムは、京セラの米国子会社で自動車用ヘッドライトを手がける米国のKYOCERA SLD Laser,Inc.独自開発した高輝度、高効率、小型パッケージを実現するGaN(窒化ガリウム)製白色光レーザーを採用することにより実現したものです。

↑一体型ヘッドライトを採用したことで、より高精度な認識結果を獲得。車両デザインにも影響は与えなくて済むメリットもある

 

その効果としては夜間、雨、霧など視界が悪い環境下でも危険要因になる可能性のある物体を高精度に認識し、安全運転を支援できるのが最大のポイントです。また、独自の学習データ生成AI技術によって学習を効率化しており、これによりコストと性能の両立を実現しているのも見逃せません。

↑独自のフュージョン認識AI技術による高精度検出を実現。可視光画像と近赤外光画像の両方の強みを併せ持つ

 

↑近赤外光画像は「学習データ生成AI技術」によりデータ収集が不要。AI学習コストを大幅に削減できる

 

ヘッドライト内の白色光をロービーム、近赤外光をハイビームなどとし、人や物に応じて配光を変化させることができることから、眩しさを抑えながらセンシングできる特徴も持ちます。また、白色光と近赤外光の一体型によりヘッドライトの省スペース化と車のデザインに自由度を提供することも可能に。京セラでは、2025年には量産技術を確立し、2027年にも実用化していく計画です。

White-IR照明技術は、1つの発光素子に照明となる白色光に、近赤外光を生み出すダイオードも一体化した

 

↑検知した結果からどちらかを選ぶのではなく、2つの結果をフュージョンさせることでより良い結果をもたらしている

 

↑可視光画像から近赤外光の学習データ画像を自動生成する「生成AI技術」を開発

 

京セラ 研究開発本部 先進技術研究所の所長・小林正弘氏は、車載ナイトビジョンシステムの開発意図について、「弊社研究所ではさまざまな社会課題の解決に向けて、要素研究およびシステム研究を行なってきました。今回の発表は(そこから生まれた)要素研究の成果を具現化し、ADAS(先進運転支援システム)車載向けに発表したものです。運転中の危険因子をどんなシーンでも検知できるシステムを開発し、社会に提供することで、京セラは交通事故の撲滅に貢献していきたいと考えています」と述べました。

↑冒頭の挨拶に立った京セラ 研究開発本部 先進技術研究所の小林正弘所長

 

同社研究開発本部 先進技術研究所 自動走行システムラボの大島健夫氏は、「近年のADAS技術普及によって交通事故は減少傾向となっているが、夜間や霧発生の死亡事故は大幅に増えています。そうした様々な危険要因を検知するため、用途に合わせてカメラやミリ波レーダー、LiDARなどの各種センサを採用してきましたが、それぞれが対応する条件は制限されており、悪条件下での危険検知性能は十分ではありませんでした。そこで危険検知性能のさらなる高度化を図る一方で、搭載するセンサ数の削減を両立させなければなりません。こうした課題を解決するために京セラが開発したのが車載ナイトビジョンなのです」と語りました。

↑記者からの質問に答える研究開発本部 先進技術研究所 自動走行システムラボの大島健夫氏

 

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