日産 新型「キックス」試乗! 第3世代e-POWERが電動SUVの完成度を大きく引き上げた

ink_pen 2026/8/11
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日産 新型「キックス」試乗! 第3世代e-POWERが電動SUVの完成度を大きく引き上げた
会田 肇
あいだはじめ
会田 肇

カーライフアドバイザー。カーナビやドライブレコーダーなど身近な車載ITグッズのレポートを行う他、最近はその発展系であるインフォテイメント系の執筆も増えている。海外で開かれるモーターショーや家電ショーにも足を運び、グローバルな視点でのレポートに役立てている。日本自動車ジャーナリスト協会会員。

日産のコンパクトSUV「キックス」が、約6年ぶりとなるフルモデルチェンジを受け、日本市場に投入されました。新型では全車に第3世代e-POWERを採用し、4WDモデルには最新の電動四輪制御技術「e-4ORCE」を組み合わせることで、日産が培ってきた電動化技術をさらに進化させています。

今回試乗したのは、4WDのe-4ORCEを搭載する「X」グレード(希望小売価格で税込359万9200円)。市街地から高速道路、郊外のワインディングまで約300kmを走行し、その実力を確かめました。

↑2026年6月に日本に導入された新型「日産キックス」。従来型よりボディサイズはひとまわり大きくなり、存在感を高めている

SUVらしい力強さと都会的な洗練を両立したエクステリア

新型キックスを目の前にすると、まず感じるのは存在感の増したスタイリングです。

従来型はクロスオーバーSUVらしい軽快な印象が強かったのに対し、新型では水平基調のデザインを採用し、ボディ全体のスクエア感を強調。フロントには薄型LEDヘッドランプとワイドなグリルを組み合わせ、力強さを演出しています。

↑試乗したのはe-4ORCEを組み合わせたミドルグレードの「X」。手軽にe-4ORCEの走りを楽しむには最良のグレードだろう

一方で、ボディサイドはキャラクターラインを整理し、面構成をシンプルに仕上げることで都会的な雰囲気も演出。タフさだけを強調するのではなく、都市生活にも自然に溶け込む洗練されたデザインへと進化しました。

↑サイドビューは伸びやかなショルダーラインとシンプルな面構成の組み合わせによって、コンパクトSUVながら上質で力強い印象を演出
↑リアエンドは、横方向へ広がるLEDコンビネーションランプとブラックパネルによってワイド感を強調。e-4ORCEにはリアフォグランプも標準装備されている

日産が掲げる「タフ&アジャイル」というコンセプトを、違和感なくスタイリングへ落とし込んだ完成度の高いデザインが印象的です。

上級SUVに迫る質感を手に入れたインテリア

ドアを開けると、さらに大きな進化を感じます。水平基調のダッシュボードは視界を広く見せることに加え、室内全体に開放感を与えています。12.3インチのデジタルメーターと同サイズのセンターディスプレイを並べたレイアウトは、ひとクラス上のSUVを思わせる雰囲気です。

↑運転席は、水平基調のインパネとデジタルコックピット(統合型インターフェイスディスプレイはオプション)により、視界の広さと先進性を両立した
↑メーターとディスプレイを一体感のあるレイアウトにまとめたデジタルコックピットで、視認性と操作性も良好
↑「インテリジェント・アラウンドビューモニター」(オプション)は、車両を真上から見下ろしたような360度映像を表示し、駐車や狭い場所での取り回しをサポートする

ディスプレイ中心の設計でありながら、エアコンなど日常的に使う機能には物理スイッチを残している点も評価できます。視線移動や操作が少なく済み、走行中でも扱いやすさを感じました。

シートは日産らしく疲れにくさを重視した設計で、骨盤をしっかり支える形状が特徴です。今回の試乗では長距離を走行しましたが、腰への負担は少なく、高い快適性が際立ちました。後席の足元空間も十分に確保され、大人4人で乗車しても窮屈さを感じません。

↑ファブリックを基調としたシートを採用。上級グレードに比べてシンプルな仕立てとはいえ、座り心地のよさを十分に確保した
↑リアシートは足元と頭上に十分なゆとりが確保され、大人が座っても窮屈さをほとんど感じない。背もたれの角度も自然でワンステップのリクライニング機構も備えている
↑エアコンの後席用吹き出し口とUSB電源ポート(リアにUSB-Cが2基)は全グレードで標準装備される
↑電子ミラーとして使える「インテリジェント ルームミラー」はXシンプルパッケージ以外のグレードにオプションで装備できる(X、X e-4ORCEのみ)
↑ディーラーオプションのETC2.0車載器。アンテナ内蔵のスピーカーから音声が出る都合上、少々聞き取りにくい。統合型インターフェイスディスプレイとのセットオプションがオススメ

荷室はe-4ORCE用リアモーターの搭載により床面がやや高くなっていますが、その分リアシートを倒した際にはフラットな荷室が実現されます。開口部も広く、旅行用スーツケースやベビーカーなども積み込みやすいので、実用性は非常に高いと感じました。

↑カーゴルーム。荷室容量は十分に確保されている
↑e-4ORCE用リアモーターの影響を受けており、2WD車よりもフロアが若干高い
↑リアシートを倒せばフラットに。大型の荷物があるレジャーにも対応できる
↑試乗車には「X」グレードながらオプションのパワーバックドアが装備されていた

第3世代e-POWERが実現した「エンジンを感じさせない走り」

走り始めて最初に驚かされるのは、その静粛性です。アクセルを踏み込むとモーターならではの滑らかな加速が続き、エンジンの存在をほとんど意識することなく速度が伸びていきます。

第3世代e-POWERでは、新開発の1.4L直列3気筒発電専用エンジンと5-in-1電動ユニットを採用。発電時の騒音を約4.5dB低減するとともに、エンジン制御そのものを見直したことで、従来型で感じられた「エンジン音だけが先に高まる」違和感は大幅に改善されています。

↑第3世代e-POWERでは、モーター・発電機・インバーター・減速機・増速機を一体化した「5-in-1」ユニットを採用。新開発の1.4L発電専用エンジンと組み合わせている

市街地ではアクセル操作に対するレスポンスが非常に自然で、低速域から豊かなトルクが立ち上がります。発電のためにエンジンが始動しても、その介入は極めて穏やかで、ドライバーがそれを意識する場面はほとんどありません。

高速道路でもその印象は変わりません。追い越し加速では必要十分な力強さを発揮しながら、エンジン回転は効率のいい領域で制御されるため、速度の伸びとエンジン音が自然に一致します。

シリーズハイブリッドという方式を意識することなく、「静かで滑らかな電動車」として走れることこそ、第3世代e-POWER最大の魅力といえるでしょう。

ワインディングで実感したシャシー性能の高さ

郊外のワインディングロードでは、新型キックスのシャシー性能が光りました。

ステアリング操作に対する応答は素直で、ノーズは狙ったラインへ自然に向きを変えていきます。SUVらしい腰高感はほとんど感じられず、ロールも適度に抑えられているため、安心してコーナーへ進入できます。

ボディ剛性の向上も効果的で、路面の段差を越えた際の収束が早く、不快な揺れが残りません。サスペンションは柔らかすぎず硬すぎず、日本の道路事情によく合ったセッティングです。

今回試乗したXグレードは215/60R17タイヤを装着していましたが、19インチタイヤを履く上級グレードよりも乗り心地に余裕があり、荒れた舗装路でもしなやかに路面をいなしてくれます。長時間運転しても疲労が少なかったのは、この絶妙な足回りのバランスによるものだとも感じました。

↑Xグレードは、乗り心地と操縦安定性のバランスを重視した17インチアルミホイールにハンコック製215/60R17タイヤを組み合わせた

e-4ORCEがもたらす高い安心感

新型キックスの走りをさらに印象付けるのが、4WDモデルに搭載されるe-4ORCEです。

前後モーターを独立制御することで、コーナー進入から旋回、立ち上がりまで最適な駆動力と回生ブレーキを配分。ドライバーは難しい操作を意識することなく、狙ったラインを自然にトレースできます。

↑タイヤワインディングでも十分なグリップ性能を発揮。e-POWERの力強いモータートルクを無理なく路面へ伝え、安心感のあるハンドリングにつなげている

コーナーではノーズの入りが軽く、SUVでありがちなアンダーステアをほとんど感じません。旋回中も車体姿勢は安定し、連続するカーブでも安心してステアリングを切り込めます。立ち上がりでは、モーターならではのレスポンスのよさを活かし、前後輪へ瞬時に最適なトルクを配分。濡れた路面や荒れた舗装でもタイヤの空転を抑え、確実なトラクションを発揮します。

さらに特徴的なのが減速時の制御です。前後輪それぞれの回生ブレーキを細かく制御することで、ブレーキング時の前後姿勢を安定させ、アクセルオフから旋回までの一連の動きを非常に滑らかにしているのです。

スポーティさを強調するというより、「安心して気持ちよく走れる4WD」という印象であり、長距離ドライブや悪天候時には大きなアドバンテージになるでしょう。

プロパイロットもより自然な制御へ進化

↑第3世代e-POWERの採用により、アクセルを踏み込んだ瞬間から力強く滑らかな加速を発揮。特に発進から中速域までモーターならではのレスポンスのよさが際立つ

高速道路では最新のプロパイロットも試しました。先行車との車間維持は極めてスムーズで、加減速に不自然さはありません。車線中央維持性能も向上し、長距離移動ではドライバーの疲労軽減に大きく貢献します。

360°セーフティアシストをはじめとする最新の運転支援機能も充実しており、日常使いからロングツーリングまで幅広いシーンで高い安心感を提供してくれていました。

燃費性能も着実に向上

2WDモデルではWLTCモード25.7km/Lを達成するなど、第3世代e-POWERは静粛性や走行性能だけでなく燃費性能も進化しています。発電効率の向上によって、高い動力性能と低燃費を両立したようです。

実際、高速道路を含めた約300kmの走行ではe-4ORCE仕様ながら満タン法で約22km/Lを達成。高速走行での燃費が課題とされていた従来のe-POWERよりも確実な進化があったといえるでしょう。特に市街地ではモーター走行の恩恵が大きく、信号の多い道路でもEVのような滑らかさと静かさを存分に味わうことができました。

オススメグレードは「X+」のe-4ORCE仕様

新型キックスは、従来型が抱えていた静粛性や質感、後席の快適性といった課題を大きく改善し、商品力を飛躍的に高めたモデルです。

なかでも第3世代e-POWERの完成度は非常に高く、「エンジンを感じさせない走り」を実現したことは最大の魅力といえるでしょう。加えて、質感を高めたインテリア、扱いやすいボディサイズ、快適な乗り心地、そしてe-4ORCEによる高い安定性が、日常からロングドライブまで幅広いシーンで高い満足感を提供してくれます。

今回の試乗はミドルグレードのXで、純粋に第3世代e-POWERとe-4ORCEの走りを楽しむには価格もリーズナブルで最適なグレードだと思います。

ただし、このグレードにはシートのパワー機構やワイヤレス充電といった装備がありません。ならば、最上位グレードの「G」がオススメとなりそうですが、個人的には19インチタイヤを履いているせいか、路面からのタイヤの当たりがきつめに感じます。それらを考慮するとXのオプショングレード「X+」がいいのではないかと思いました。

競争の激しいコンパクトSUV市場において、新型キックスは電動車ならではの滑らかな走りと、ガソリン車と変わらない使い勝手を高い次元で融合させた一台です。電動車への乗り換えを検討するユーザーにとって、新型キックスは有力な選択肢になることは間違いありません。

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写真/松川忍

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