本人に訊け〜明日からモノ選びや暮らし方が変わるかも。
中国茶は奥深く高尚な世界だと身構えてしまう人も多いだろう。『中国茶を愉しむ12ヶ月』の監修者、磯部優子さんは、北京と香港で本場の茶文化を学んだ茶文化研究者。主宰する教室の生徒でもあるというブックセラピストの元木忍さんが、初心者でも気軽に始められる“お茶のある暮らし”への入り口と愉しみ方を訊いた。

■8冊目
『専門サロンに教わる中国茶を愉しむ12ヶ月』
(磯部優子・監修/メイツ出版・刊 1980円)
■今回の“本”人
茶文化研究者 磯部優子
中国茶文化を学べるサロン「香茶苑」主宰。1994年から家族の転勤で北京・香港へ。2004年から香港の中国茶専門店「茶藝楽園」で講師を務めたのち、帰国。日本で茶文化の普及に尽力している。
幼少期からお茶が好き。茶道から茶文化研究者へ
──私は中国茶が大好きで、磯部先生から学ぶようになって、その奥深さや愉しさにますます魅了されています。まずは、先生が茶文化研究者になられた経緯から教えてください。
「幼い頃からお茶が好きな子どもで、物心ついた頃からお茶を淹れていました。茶道のお稽古が大好きで通い続けておりましたので、このまま茶道を伝える仕事ができたらと思っていました。でも24歳で結婚と同時に北京に住むことが決まり、お稽古から離れざるを得なくなってしまいました。その中で出会ったのが、中国茶でした」
──中国茶との出会いは、転居がきっかけだったのですね。
「中国に住んでいると、レストランで食事するたびに中国茶を口にするのですが、それまでは特に学びたいと思ったことはありませんでした。それが、雲南省へ茶道のお茶会のお手伝いに行った際に若くてフレッシュな生茶に衝撃を受けて。生き生きとした香りや味が、身体中を駆け巡るような体験をしたんです。『中国にはこんなお茶があるんだ!』と驚き、学ぶようになりました」
──その一口が、講師の道へ導いたのですね。
「講師になったのは、中国茶専門店『茶藝楽園』の陳國義先生から『日本の方がたくさん習いに来るけれど、僕は日本語が話せないから、あなたが教えてあげてください』と言われたのがきっかけです。中国茶は、5000年の歴史と2000種類以上の茶葉があるとても奥深い世界。私が研究家ではなく茶文化研究者と名乗るのも、今もなお研究し続けている者という意味でもあります」

中国茶を分類するのは“色”ではない。工程の違いを愉しもう
──中国茶と言っても、本当にたくさんの種類がありますよね。
「ええ、代表的なお茶の木はツバキ科の常緑樹で、この木から緑茶も紅茶も生産されています。中国茶は製造工程の違いで6種類に分かれ、酸化発酵や醗酵の具合でお茶の水色も異なります。中国茶=濃い黒茶を想像される方も多いかもしれませんが、白茶や緑茶のような透明な水色のお茶もあるんですよ」

──日本では、ウーロン茶やプーアル茶など中国のお茶は色が濃いものと思われていますが、それだけではないんですね。
「はい。中国茶は、緑茶・白茶・黄茶・ウーロン茶(青茶)・紅茶・黒茶の6種類に分けられるので、ついつい見た目の色で判断したくなるのかもしれません。ただこれを話し始めると本一冊が書けてしまうほど奥深いので、『中国茶は製造工程の違いで6種類に分かれる』とだけ、まずは覚えていただくといいと思います」
──詳しくは『中国茶を愉しむ12ヶ月』を読んでいただきましょう。中国茶をこれまで飲んだことがないという人は、何から始めたらいいのでしょうか?
「お店で飲んだ中国茶がおいしいな、この香りが好きだな、という感覚で気に入られたらまた飲んでみる、と徐々に親しんでいってください。毎日少しずつ中国茶に親しむうちに、学ぶ意欲が湧いてきたら、その際に分類について深掘りしてみてはいかがでしょうか」
──知識からではなく、実際に飲むところからということですね。
「中国茶はガラスの器や小さなティーポットなど、家庭にあるモノを使って手軽に始められます。慣れてきて、もう少しこだわりたいと思ったらそこで、専用の器を使い始めればいいと思います。また、最初から美味しく淹れようと肩肘を張らないことも大切です。家庭ごとに使う水が違いますし、茶葉ごとに適切な温度も異なります。お茶というのは本当に一期一会。同じお茶を同じ器で淹れても、お湯を勢いよく入れた場合とゆっくり入れた場合では味わいが違いますし、蒸らし時間のたった10秒の違いでも大きな差になります。『違う』とすぐに諦めずに、何が違ったんだろう? と試行錯誤してみてはいかがでしょう」
──その試行錯誤が愉しむコツなのかもしれませんね。
「正解はありませんし、自分の感覚が一番大切です。気に入られたらまた飲んでみて、何か違うと思ったらまたチャレンジしてみてください。なんと言っても中国茶は2000種類以上あるんですから。いつか好きなものに出会えるかも、という探究心こそ、長く愉しむコツかもしれません」
お茶と向き合う朝の10分が1日を変える
──私も磯部先生と出会ってから、毎朝中国茶を淹れることが習慣になりました。先生のように完璧ではないですが、お茶を淹れる時間が自分をもてなす時間につながるように感じています。
「お茶と向き合う時間ってとても贅沢ですよね。私にとっても、お茶の時間はリフレッシュするのに欠かせない時間になっています」
──忙しい人にこそ中国茶を淹れる時間は必要なのかもしれませんね。 「お湯を沸かし、茶葉を準備し、お好みの器やグラスで香りを聞き、思いを巡らせながら中国茶を味わう。10分あればできますし、同じ茶葉でも慌ただしい朝に淹れたお茶の味と、休日の穏やかな朝に淹れた一杯では、味わいも違って感じられるはずです。体調や気分のバロメーターとして中国茶を愉しむ時間を作ってもらいたいですね」
ナビゲーター
ブックセラピスト・元木 忍
Gakken、楽天ブックス、カルチュア・コンビニエンス・クラブを経て独立。出版業界で培った知見を活かし、書店経営や選書活動を行う。東日本大震災を機に「人を支える本」の価値を再認識し、現在はブックセラピストとしての活動に加え、企業の事業戦略やコミュニケーション設計のアドバイザーも務めている。
※「GetNavi」2026年9・10月合併号に掲載された記事を再編集したものです。
※この記事のリンクから商品を購⼊すると、売上の⼀部が販売プラットフォームからGetNavi webに還元されることがあります。
※価格などの表示内容は掲載時点のものです。在庫切れなどによって変更の可能性もありますので、詳細は商品ページを確認してください。