双日の100%子会社である「Kia PBVジャパン」は5月13日、韓国・KIA(キア)が開発したEVバン「PBV(Platform Beyond Vehicle)シリーズ」を日本で発売すると発表しました。あわせて5月15日には、直営ディーラー第1号店となる「Kia PBV 東京西」(東京都西東京市)がオープンし、PBVの多様な活用シーンが紹介されています。

かつて日本でも展開していたブランドがEVで復活!
もしかしたら、KIAというブランドを初めて知ったという人も多いかもしれません。実はかつてKIAは、マツダと共にフォードの傘下にあったことがあり、その際に韓国で生産されたフォードブランドの「フェスティバ5」「フェスティバβ」をマツダ系列のオートラマ店で販売していました。1980年代のことです。
そのKIAはいま、Hyundaiとともに現代自動車グループを構成する韓国第2の自動車メーカーとして成長し、世界的なスポーツイベントにもスポンサーとして積極的に参画。早くから電動化戦略も推進し、欧米を中心に高い評価を得てきました。そんなKIAが展開する商用EVバンブランドが「Kia PBV」シリーズなのです。
今回、日本で発売されるのは、「Kia PV5カーゴ(2人乗り貨物バン)」と「Kia PV5パッセンジャー(5人乗り乗用バン)」の2モデル。どちらも2025年のジャパンモビリティショー(JMS2025)で初公開され注目を集めたモデルで、その公開から約半年を経て正式発売されたことになります。
そのPBVシリーズは単なる“車”ではなく、仕事・生活・ビジネスなど幅広い用途に対応できる「次世代モビリティプラットフォーム」として位置づけられています。移動手段にとどまらず、レイアウトを変えることで「オフィス」「店舗」「休憩スペース」など多様な空間として活用できる点が特徴です。
また、EVの駆動用バッテリーを電源として利用できる点も強みで、車中泊やレジャー用途にも対応します。つまり、PBVシリーズは、物流・配達・人員輸送といったビジネスシーンだけでなく、ライフスタイル用途まで幅広く使えるモビリティとして誕生しているのです。
シンプルな設計ながら実用第一の使い勝手の良さが光る




PV5パッセンジャーのボディサイズは全長4695×全幅1895×全高1925mmで、ホイールベースはEVらしく2995mmと長めの寸法。シンプルでモダンなデザインは日本のハイエースに近い印象です。内装は実用性を重視した仕上げで、運転席からの視界も良好。操作系もインフォテインメント以外は階層のないダイレクト操作式となっており、使い勝手の良さを感じます。

上位グレードには前席にパワーシート(ヒーター内蔵)が装備され、快適性向上に貢献。シート素材は汚れに強く、商用利用に適した実用的な仕様です。後席には3名が乗車でき、後席利用時でも1330Lの荷室を確保し、後席を倒せば4420Lもの広大なスペースが生まれます。この広さこそがPV5パッセンジャー最大の魅力といえるでしょう。また、Kia PBVジャパンによれば、今年度中にも3列7人乗りモデルの導入を予定しているとのことでした。



ディーラーには車中泊キットを組み込んだデモカーが展示され、ここではリアスペースの広さを体感できました。車内ではテーブルを囲んで食事できるうえに、大人2人がゆったり眠れるほどの余裕があります。この広さはまさにカーゴ車をベースにしているからこそ。また、左右にスライドドアを備え、バックドアは上ヒンジのパワー式となっており、レジャー用途でも使いやすい設計になっていることを実感しました。
先進安全装備と運転支援技術でドライバー負荷を低減

PV5パッセンジャーのパワートレーン系では、グレードに応じて3種類のバッテリーが用意され、モーター出力もそれに応じて異なる設定となりました。最上位の「ロングレンジ(プラス)」には一充電走行距離(WLTC)521kmを実現する71.2kWhバッテリーが搭載され、最高出力120kW/最大トルク250Nmを発揮するモーターが組み合わされています。価格は769万円(税込)です。
下位グレードとなる「スタンダード」は装備の異なる「プラス」(709万円)と「ベーシック」(679万円)があり、いずれも51.5kWhのバッテリーを搭載。組み合わされるモーターは89kWの出力にとどまりますが、最大トルクはロングレンジと同じ250Nmのため、通常走行では大きな差を感じにくいと考えられます。

走行面では先進のADASも充実しています。前方衝突防止アシストやサラウンドビューモニターに加え、駐車場からの発進時に後方側面の車両を検知して自動ブレーキを作動させる機能などを搭載しています。また、Hyundaiの車両と同様、ウインカーをONにするとカメラで捉えた周囲の状況をメーター内に表示する機能が搭載されていました。

さらにアダプティブクルーズコントロール(ACC)では、車間距離の調整や速度の自動制御に加えてカーブ手前での減速をサポート。高速走行時には車線中央を維持する支援もあり、これらはスムーズな走行だけでなくドライバーの負担軽減につながります。こうしたアシスト機能と商用車ベースならではの高い実用性が、新たなEVミニバンのスタイルを生み出すことになるのは間違いないでしょう。
PV5カーゴはPV5パッセンジャーとどう違う?



一方のPV5カーゴは、基本構造やサスペンションなどがPV5パッセンジャーと共通ですが、定員とバックドア構造が異なります。パッセンジャーが5名乗車なのに対し、カーゴは2名乗りです。バックドアはパッセンジャーが上ヒンジのパワー式であるのに対し、カーゴは手動式の観音開きを採用しています。
バッテリー構成も異なり、カーゴには43.3kWhの「エコノミー」グレードが追加されています。近距離配送を想定した仕様で、価格は589万円からです。
なお、補助金はPV5パッセンジャーにおいては現時点で申請中。PB5カーゴは事業用として最大196万4000円が支給されます。また、車両保証は5年/10万km、高電圧部品は8年/16万kmとなっています。
ディーラーは全国7店舗を予定。販売目標は1000台を目指す

Kia PBVジャパン代表取締役社長・田島靖也氏によれば、ジャパンモビリティショー2025での発表後には多くの問い合わせが来ており、コールセンターをオープンしてからはその数がさらに増えているそうです。加えて法人との大口契約も話が進んでいるとのことで、目標の年内1000台販売の達成に自信をのぞかせていました。





発表会の会場となった「Kia PBV 東京西」は同社直営の第1号店で、まずは5月下旬頃に展示車を導入し、6月に入った頃から試乗車として用意できる見込み。これを起点に今後はディーラー網を「厚木(神奈川県)」「町田(東京都)」「名古屋」「三重」「岡山」「福岡」へと拡大し、全国7店舗体制となる予定。さらに「約50か所のサービス拠点とも提携して整備体制においても万全を尽くしていく」(藤田氏)と話していました。


オープンしたKia PBV東京西には大型ショールームのほか、EV対応の大型整備工場と専用倉庫を完備。高度なメンテナンス機能と迅速な部品供給体制が整えられています。ショールームもかなり広くゆったりとしているので、PBVが気になる人はぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。
