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2020/4/8 21:00

自動車史に残ること間違いなし!ガソリンエンジンの新機軸、「スカイアクティブX」の実力は?

その最大の価値は世界初にしてオンリーワンであること?

さて、前置きが長くなりましたが昨年末に販売がスタートしたマツダ3のスカイアクティブX仕様が従来のガソリンエンジンと違う点は、燃料の圧縮着火を世界で初めて実用化したこと。従来までのガソリンエンジンは、燃料と空気の混合気をスパークプラグによる火花で着火して爆発力(膨張行程)を生み出していましたが、スカイアクティブXではディーゼルと同じく圧縮熱で着火させます。「SPCCI(スパーク・コントロールド・コンプレッション・イグニッション)」というネーミング通り、スパークプラグを使用していないわけではないのですが、エンジン内における主体はあくまで圧縮着火。これにより、1回の爆発行程における燃料使用を少なくできる希薄燃焼(リーンバーン)を実現、高効率化を達成しました。また、ディーゼルはその構造上、エンジンの高回転化が難しいのですがスカイアクティブXは従来のガソリンと同等の高回転化も両立しています。

↑現在はマツダ3に続き、SUV「CX-30」にも搭載されているスカイアクティブXエンジン。マイルドハイブリッドシステムも組み合わせています。マツダ3のファストバックでは、トランスミッションに6速MTが選べることも魅力

 

その排気量は2Lで、アウトプットは最高出力が180PS/6000rpm。最大トルクは224Nm/3000rpmというもの。スカイアクティブXでは、これにマイルドハイブリッドシステムを組み合わせ、電気モーターによる6.5PSと61Nmのアシストも適宜加えられます。ちなみに、マツダ3には1.5Lガソリン(ファストバックのみ)と2Lガソリン、そして1.8Lクリーンディーゼルターボもラインナップされていますが、それぞれのパワー&トルクは順に111PS&146Nm、156PS&199Nm、116PS&270Nm。エンジン単体では最大トルクこそディーゼルに及びませんが、それ以外はスカイアクティブXが一番ハイスペックとなっています。また、ディーゼルの最高出力と最大トルク発生回転数はそれぞれ4000rpmと1600~2600rpm。このことからも、スカイアクティブXの方が格段に高回転を許容する構造であることは明らか。それを反映してか、ファストバックのスカイアクティブX仕様ではATだけでなく6速MTが選べるところもマニア的には要注目ポイントといえるかもしれません。

 

今回の試乗車は、ファストバックのAT仕様でしたが、その走りはスポーティなハッチバックとして納得の出来映えでした。1440kgの車重に対して特別パワフルというわけではありませんが、アクセル操作に対するリニアな反応は自然吸気のガソリンエンジンならでは。低回転からボディをズイッと押し出す今どきのディーゼル的なトルク感こそ期待できませんが、その代わり乗り手が積極的に高回転まで回す歓びが見出せます。また日常域の使い勝手、静粛性は従来のガソリンエンジンと変わりません。圧縮着火状態であることを意識するのは、ディスプレイ上に「SPCCI」を表示させた場合程度にすぎません。

↑街中から高速クルーズ、郊外地とひと通り試乗し、そのパワーを体感

 

高効率を謳うだけに燃費もまずまず。街中では11km/L台、大人しめの高速クルーズでは18km/Lなかば。郊外路はワインディングも含まれていたので8km/L台にとどまりました。2Lの自然吸気エンジンだと思えば小食なのは確かでしょう。ちなみにWLTCモード燃費は、市街地モードが13.7km/Lで高速道路モードは19.0km/L(総合は17.2km/L)ということで、走らせ方次第ではありますがカタログ値の実効性も高いといえます。

 

とはいえ、現状のスカイアクティブXエンジンは合理的な理由だけで選ぶものではありません。燃料はハイオク推奨ということでランニングコストが目覚ましいわけではありませんし、車両本体価格は従来型の2Lガソリン仕様比で約70万円、ディーゼル比でも約40万円も高価になってしまうからです。そもそも、クルマを“移動の足”と考える大半の人にとって、燃料がどんな燃え方をしているかなど関係のない話でしょう。

↑組み合わせるシャシーも最新世代、ということでスポーティな走りにも応えてくれます。絶対的な動力性能は、2Lの自然吸気エンジンとして不足のないレベルです

 

しかし、マニア視点においてはスカイアクティブX仕様のマツダ3が特別な1台であることもまた事実。なにしろ、これまでプレミアムブランドを含めたさまざまメーカーがトライしつつも実用化できなかった圧縮着火(のガソリンエンジン)を市販化したのはマツダだけ。その第1弾となったこのクルマは、間違いなく自動車史に残る存在となるからです。

 

SPEC【Xバーガンディ・セレクション】●全長×全幅×全高:4460×1795×1440㎜●車両重量:1440㎏●パワーユニット:1997㏄直列4気筒DOHC●最高出力:180PS/6000rpm●最大トルク:224Nm/3000rpm●WLTCモード燃費:17.2㎞/L

 

撮影/勝村大輔

 

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