猛暑の時代、エアコンの省エネは「強く冷やす」だけじゃない!「2027年問題」に挑むパナソニックの発想転換

ink_pen 2026/7/25
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猛暑の時代、エアコンの省エネは「強く冷やす」だけじゃない!「2027年問題」に挑むパナソニックの発想転換
畑野壮太
はたのそうた
畑野壮太

元ゲットナビ編集部員のフリーライター。"体験を分かりやすく言語化する"を信条に、アイテム、イベントなど、オールジャンルに取材を行う。また、自身のアイテムレビューサイト「reviewfun」も運営している。

エアコンを取り巻く環境が、大きく変わろうとしている。近年続く猛暑と夏の長期化によって、エアコンは「暑い時間だけつける家電」から、「長時間、場合によっては一日中使い続ける生活インフラ」へと変わりつつある。

そして2027年度には、家庭用エアコンの省エネ基準が引き上げられる。いわゆる「2027年問題」だ。こうした変化に、メーカーはどう向き合おうとしているのか。パナソニックのルームエアコン「エオリア」の開発・生産拠点であるHVAC & CC草津拠点を訪ね、メーカーが描く次世代エアコンの姿を探った。

「2027年問題」があっても、エアコンを慌てて買い替える必要はない

まず整理しておきたいのは、エアコンの「2027年問題」は、いま家庭で使っているエアコンが使えなくなるという話ではない、ということだ。

2027年度から変わるのは、家庭用エアコンに求められる省エネ基準である。制度の対象となるのは消費者ではなく、製品を製造・出荷するメーカー側だ。さらに具体化すると「メーカーが出荷する製品全体について、出荷台数を反映した省エネ性能の平均値を、基準値以上にせよ」というトップランナー制度というものがあり、2027年度にその基準値が引き上げられる、という話である。

なので、2027年問題があっても、いま使っているエアコンへの大きな影響はない。資源エネルギー庁も、家庭で現在使用しているエアコンを買い替える必要はないと説明している。

また「新基準を満たさない製品は、2027年以降すべて販売できなくなる」と単純に捉えるのも正確ではない。先ほども書いたように、メーカー側に求められるのは、同社が出荷するエアコンの省エネ性能の「平均値」である。なので、すべての製品が新基準を満たしたものになるわけではなく、基準以上のものとそうでないものが混ざって売られることになる。

とはいえ、メーカーにとってハードルが低いわけではない。パナソニックが6月末に開催した説明会資料では、2027年の基準変更により、能力帯によって従来目標比13.8〜34.7%の省エネ性能向上が求められると示されている。なかでも4.0kWクラスでは、従来の目標値4.9に対し、新たな目標値は6.6。改善率は34.7%に達する。

↑2027年度ののトップランナー基準変更の概要。表にあるAPFというのは「通年エネルギー消費効率」のことで、この数値が高いほど省エネ性に優れていることを示す(画像はパナソニックの発表資料より)

省エネ性能を高めるには、コンプレッサーや熱交換器といった基幹部品の改良が避けられない。そして、部品の高性能化は本体の大型化にもつながりうる。現在は材料費や製造コストが高騰しているから、製品価格にも影響するだろう。ただし、それをもって一概に「エアコンが高くなる」と見るのも早計だ。

↑一般的なルームエアコンの室内機に搭載されている熱交換器。約600枚の金属板が狭い感覚で並べられている

本体価格が上がったとしても、省エネ性能が高まれば、使用時の電気代は抑えられる。本体価格とランニングコストを合わせた金額なら、“値上がりぶんの元が取れる”ことも十分起きうるのだ。実際、資源エネルギー庁は、2027年度の新基準を満たしたエアコンでは、従来基準の製品と比べて6畳用で年間約2760円、14畳用で年間約1万2600円の光熱費削減効果が見込まれると試算している。平均使用年数を約14年とした場合、累計では6畳用で約4万円、14畳用で約18万円の差になるという。

エアコンを買えば、電気代という名のランニングコストをずっと支払い続けることになる。だから、エアコンの価格が高くなるといっても、ランニングコストが下がるのであれば、消費者にとっては一概に悪い話ではない。

むしろ、2027年問題で苦労するのは、メーカー側であるともいえる。厳しい基準を満たした製品を開発する必要があるからだ。より高い省エネ性能をどう実現するかという開発上の課題に対し、メーカーはどのように向かい合っているのだろうか。

省エネのカギは「小さな力で長く動かす」こと

パナソニックはこの開発課題に対し、エアコンを「いかに小さなパワーで動かすか」という視点で答えを見出そうとしている。

背景にあるのは、エアコンの使われ方の変化だ。パナソニックの「エオリア アプリ」のログデータによると、8月にリビング設置のエアコンを24時間運転した割合は、2021年の18.7%から、2024年と2025年には22.7%まで上昇している。猛暑が長期化するなかで、エアコンは短時間だけ強く冷やすものではなく、長時間つけ続けるものになりつつある。

長時間運転が増えると、重要になるのは設定温度に到達したあとの運転だ。エアコンは、立ち上がり時には全力運転で一気に室温を下げるが、いったん設定温度に近づけば、あとはその温度を維持するための低出力での運転になる。このとき、運転のオン・オフを繰り返すと、消費電力のムダが生じやすい。

パナソニックの説明資料では、冷房時の運転分布として、高負荷運転は構成比約10%である一方、中負荷運転が約35%、低負荷運転が約30%を占めると示されていた。つまり、冷房時の運転の大部分は、定格能力に対して比較的小さな出力で動いている時間なのである。

↑近年のエアコンの運転時間のトレンド。(パナソニックの発表資料より)

そこで同社が重視しているのが、低速回転時の効率だ。高効率な「エコロータリーコンプレッサー」を搭載し、さらに新開発のインバーターによって最小出力を低減することで、無駄なオン・オフを繰り返さず、設定温度を保ち続ける。これにより、省エネ性に加えて、温度を一定化させることによる快適性の両立を図るという。

↑エコロータリーコンプレッサーとエコインバーター制御による「極上冷房運転」のイメージ(右)。従来の冷房運転と比べて温度変化が抑えられているため、省エネ性能だけでなく、快適性も高い。(パナソニックの発表資料より)

省エネというと、どうしても「少ない電気で強く冷やす」ことをイメージしがちだ。しかし、エアコンが一日中動く時代には、むしろ「冷えたあとに、弱い力で効率よく動き続ける」ことが重要になる。2027年問題を前にした省エネ開発の焦点は、まさにこの低負荷運転の効率化に移りつつある。

省エネ性能を保つため、エアコン内部の清潔性も重要に

先ほども書いたように、エアコンの省エネ性能を決める根幹は、コンプレッサーや熱交換器といった基幹部品である。一方で、長く使い続ける家電だからこそ、内部を清潔に保ち、性能低下を抑えることも重要になる。

たとえば、フィルターが詰まれば、空気の通り道が狭くなる。その状態で同じように部屋を冷やしたり暖めたりしようとすれば、余計な電力が必要になる。パナソニックによると、1年間フィルター掃除をしない状態で運転した場合、フィルター自動お掃除機能ありの場合と比べて、電気代が年間で約1万円も高くなることがあると示されていた。これは同社製品「CS-F401D2」を用いた条件下での比較であり、実際の差は使用環境によって変わるが、フィルターの汚れが省エネ性に影響することはわかりやすい。

さらに、たまったホコリはカビの養分にもなる。長時間運転が増えれば、エアコン内部には結露による湿気も生じやすい。ホコリと湿気がそろえば、内部の清潔性はより大きな課題になる。

実際、パナソニックの調査では、今年の冷房利用開始時にエアコンから「もわっと臭」を感じた人は74%に上ったという。また、自宅のエアコンにカビが生えていると認識しながら放置している人も17%いた。カビを放置している理由として最も多かったのは、「カビ掃除のやり方がわからないから」で45%だった。

↑フィルターの目詰まりから、カビが発生してしまう仕組み(左)と、エアコンのニオイやカビに関する調査結果(右)(パナソニックの発表資料より)

こうした課題に対し、エオリアではフィルターお掃除ロボットに加え、「ナノイーX内部クリーン」を搭載している。ナノイーXとは、パナソニック独自の微粒子イオン技術で、ナノサイズの水のカプセルにOHラジカルを含ませたもの。OHラジカルは、ほかの物質から水素を抜き取りやすい反応性の高い物質だ。ナノイーXではこれがニオイやカビなどの原因物質に作用し、その働きを抑制するという。

運転中はナノイーXを部屋へ放出し、運転停止後の内部クリーン時には、本体内部へナノイーXを送り込む。さらに40℃以上の加熱乾燥によって熱交換器の水分を乾かし、内部にナノイーXを充満させることで、カビの発生につながる水分や胞子の活動を抑える狙いだ。

こういった機能を搭載している機種は、そうでないものと比較すると価格が高くなりやすい。だが、先に見たようなランニングコストの差や、手入れの負担軽減まで含めて考えれば、上位製品を選ぶ理由も十分にあるといえる。

↑パナソニックのエアコン「エオリア」シリーズの商品展開。上位製品ほど多くの機能が搭載されている(同社の発表資料より)

10年以上使うものだからこそ、厳しい環境での耐久性も問われる

省エネ性能や清潔性と並んで、パナソニックが重視しているのが耐久性だ。エオリアのコンセプトは「10年使うものだから、省エネも清潔も」。猛暑や厳冬でもためらわずに使える省エネ性能、お手入れの負担を減らす内部の清潔性能、そして厳しい使用環境にも負けない耐久性を、長く安心して使うための性能として位置づけている。

その考え方を支えているのが、1000を超える品質試験である。説明会資料では、極寒、猛暑、日射、砂塵耐久、豪雨、暴風・落雷、長時間運転、ホコリ耐久といった試験項目が紹介された。たとえば室外機の吸い込み温度が-25℃や55℃でも正常に動作することを確認するほか、大雨警報レベルの約40倍にあたる1時間600mm相当の水量を注水しても運転し続けることを確認するという。これらはあくまで同社の試験条件下での確認であり、実際の豪雨や台風での性能を保証するものではない。だが、信頼を得るには十分な数字といえるだろう。

また、長期的な連続操作テストを実際の使用状況より厳しい条件下で行うほか、累計10年分のホコリと油を吸引してもフィルターお掃除機能が正常に動作するかも確認している。先ほど触れたように、フィルターの汚れは清潔性だけでなく省エネ性にも関わる。だからこそ、掃除機能そのものが長期にわたって動き続けるかどうかも重要になる。

こうした品質や耐久性の確認は、2027年問題と無関係ではない。省エネ基準が上がれば、コンプレッサーや熱交換器などの基幹部品はより高度化していく。だが、性能を高めても、長く使うなかで故障しやすくなったり、能力が落ちやすくなったりしては意味がない。それに、いくら省エネ性の高い、ランニングコストの安い機種を買ったとしても、早く壊れてしまったら元も子もない。高い省エネ性能を実現することと、その性能を10年単位で安定して発揮させることは、セットで考える必要がある。

その意味で、エアコンの開発は単にカタログ上の数値を高める競争ではない。猛暑、豪雨、砂塵、長時間運転といった現実の使用環境を見据えながら、効率と信頼性をどう両立させるか。その積み重ねが、2027年以降のエアコン開発を支える土台になっている。

草津拠点で整備された、開発と品質を支える体制

こうした省エネ性、清潔性、耐久性を支えているのが、パナソニック HVAC & CCの草津拠点である。今回の説明会が行われた草津拠点は、滋賀県草津市に位置し、名神高速道路や東海道新幹線にも近い。日本国内におけるエアコン事業の重要拠点であり、開発・品質評価・生産を支えている。

同社は2023年6月、この草津拠点に「Green Air Wing」という名の新棟を開設し、研究・開発環境を強化した。建物には、実際の住環境を想定して快適性を評価する住環境試験室や、高精度に騒音を評価する無響室などを備える。

↑住環境試験室の内部。天井から垂れ下がっているコードには、温度、湿度、風量のセンサーが多数取り付けられている。なお、この部屋の外には屋外を再現した空間があり、筆者が訪れた際は外気温が38度に設定されていたが、室内は快適であった

省エネ基準への対応というと、どうしてもカタログ上の数字ばかりに注目しがちだ。しかしその裏には、コンプレッサーや熱交換器の性能向上に加え、低負荷運転時の制御、内部の清潔、長期使用時の耐久性、騒音の削減まで、多くの要素に配慮する必要がある。パナソニックの担当者は2027年問題への対応について「まだこれから詰めていく段階」と話していたが、その準備は整いつつあることがうかがえた。

草津拠点は、世界120カ国以上でエアコンを販売するパナソニックのマザー工場としての機能も持っている。2027年問題は、日本国内の省エネ基準引き上げをめぐる話であるが、その対応によって磨かれる技術は、グローバルにも生かされていくだろう。気候変動によって世界的に空調需要が高まるなかで、省エネ性、耐久性、快適性をどう両立させるか。「少ない電力で強く冷やす」だけではない発想の転換が、次世代エアコンの開発を支えようとしている。

↑説明会のあとには、工場見学会が催された。工場内は自動化が進んでいた。(写真は、成形した部品を組み立て工程へ運ぶコンベア)
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