独自の世界観を突き進み、観るものを“沼”へのいざなう、野性爆弾のくっきー!さん。独創的なコントをはじめ、圧倒的な才能を持つ画家として、川谷絵音さんらが結成したバンド「ジェニーハイ」のベーシストとして、多彩な顔を持つマルチな表現者として活躍する。そんなくっきー!さんの創作の原点について伺った。

幼稚園からの幼馴染だったロッシー(本名・城野克弥)と1994年に「野性爆弾」を結成。NSC大阪校13期生。若手時代から独特の世界観で注目され、その世界観を表現した『超くっきーランド』は世界で55万人を動員するほどの人気を誇る。初めて絵画作品を出展した『NY ART EXPO』でも成功を納め、そのアート性も高く評価され今後の活動にも注目が集まっている。X/Instagram/YouTube
【くっきー!さんの撮り下ろし写真】
雑誌グラビアの自力アイコラから始まった唯一無二のアート活動
――まずは今年の春に東京で開催(2026年3月19日~22日)され、夏に大阪で開催(2026年8月8日~11日)となる「鋲じゃん展 by くっきー!」について伺えますか?
くっきー! パンクが好きなんで個人の趣味で鋲ジャンをいっぱい作ってて、貯まったからどうしようかなって。かさばるしどっか置く場所いるなぁみたいなことから、個展を開いたら常に家にはおらん状態になるなと。あとは普通じゃない鋲ジャンもいっぱい作ったんで、YouTubeで出すだけなのももったいないし、せっかくならいろんな人に見てもらいたいなと思って、そんな感じで開催することになりましたね。
――一方、「くっきー!『乙女展』in枕崎」(2026年7月26日〜8月30日)という新規テーマの個展も開催されていますが、こちらについては?
くっきー! 実は日本ロリータ協会というのがあって、青木(美沙子)さんという方が会長なんですけど、その人と仲が良くて、なんか知らんけど僕、副会長なんですよね。だから、やっぱり乙女的なことをやるのが副会長たる仕事でもあるかなと(笑)。
――まさかの役職・肩書きですが(笑)、そもそもどういった経緯で日本ロリータ協会の副会長になられたんですか?
くっきー! 昔、チェチェナちゃんというキャラクターをやってたんですけど、レオタードを着て頭にロリータボンネットを付けたりしてたら、なんかロリータ側という認識をされました(笑)。世界初じゃないですか? この顔で正式にロリータと認識されたのは。
――確かに(笑)。「鋲じゃん展」はくっきー!さんの趣味全開で、ある意味わかりやすいというかストレートなテーマだと思うんですが、パッと見のイメージでいえば、くっきー!さんと「乙女」というワードはちょっと結びつきにくい印象がありますよね? 実際の活動や作品履歴はともかく。
くっきー! そうですね。ただ、「乙女画」って勝手に言ってるんですけど、もともと誰に言われるでもなく描いてたものなんで、どっか内底に潜んどったんでしょうね、僕の乙女が。で、今回はそれを放出した感じというか。
――中でもご自身で一推しの作品は?
くっきー! 一番最初に描いた「肉糞乙女IZAVERA」。存在的にはそれが圧倒的ですね。あれは自分にとっての「モナリザ」みたいなもんなんで。
――くっきー!さんの代表的作品で、まさにマスターピースというべき1作だと。
くっきー! 今までも個展とかでちょこちょこ出してますけど、乙女画ができたのもあれがあるからだし、まさに自分のルーツ的なもんです。あと(の展示物)はもう名前も覚えてないくらいの感じですから(笑)。

――これまでの個展もそれぞれコンセプチュアルにテーマ立てされていましたが、その辺は全部ご自分で考えられてるんですよね?
くっきー! はい。誰も言うてくれへんでしょ、乙女画を描けなんて(笑)。基本的に人から「あれせえ」とか言われるのがあまり好きじゃないんで、会場とか、いつやるかとか、そういうのは決めてもらったほうがええけど、何をやるか中身は決められたくないですね。
――そういった表現の数々はどのように発想されるんですか?
くっきー! そこはかっこよく言いたいですけど、ほんま思いつきというか。
――言葉で説明できるくらいのものならわざわざ作らなくていいという。
くっきー! そうです、そうです。
――そもそもアート活動を始められたきっかけは?
くっきー! そもそもは会社に言われてやり始めたんですけど、ほんまその前で言うたら、金がない時代に、楽屋に落ちてる雑誌の表紙のグラビアのねえちゃんに裸を自力アイコラしてて、そんなんを先輩に見られてってとこからですかね。
――なるほど。仕事としては自発的に始めたわけではないと。
くっきー! そうそう。先輩が見て「オモロいな、お前」ってなって、その後に先輩が結婚するときのウエルカムボードを描いたら、それを見たテレビ局の人が「面白いな」ってことでちょいちょい取り上げられるようになったのがきっかけだったと思います。
――スタートが自力アイコラなのも納得というか(笑)、基本的に女体がお好きですよね。
くっきー! だいたい乳を描いてね。好きなんですよ、乳が。なんか、あの美的シルエットが。いいですよね、乳は(しみじみ)。あと、自分の中で好みとは思ってないですけど、お腹が出てる妊婦さんみたいな絵もよう描くんですよ。だから、たぶん自分でも知らんうちに妊婦さんも好きなんでしょうね。美を感じるというか。あそこに人が入ってると思うと美しいですよね。
――お子さんの頃からよく絵を描かれていたんですか?
くっきー! 好きでした。暇なときによう描いてましたね、机の上とかに。
――その頃はどんなモチーフの絵を? さすがにまだ乳は描いてなかったですよね?
くっきー! 乳、描いてましたね。ほんま最初の入りは世代的に『キン肉マン』なんですけど。あとは、ちょっと凝って『機動戦士ガンダム』とか描いたりして、小5くらいに性に目覚めてから一気に乳とか描くようになりました。よう描いてたのは、切ったチンポと金玉を串に刺した「チンコおでん」です。それはめちゃめちゃ描いてましたね。ほんまめちゃめちゃ描いてました。「なんか描いて」って言われたら、常に描いてましたから。
――まったくブレませんね(笑)。
くっきー! ブレないというか成長してないんじゃないですか?(笑) あの頃からまったく変わってねえっすね。

無駄をいとわずオモシロを愛す、80年代スピリッツの体現者
――ルーツ的な話をすると、5歳から15歳くらいを80年代で過ごしたくっきー!さんにとって、80年代カルチャーの影響が相当大きいと思うんですが。
くっきー! うん、一番デカいんじゃないですか。80〜90年代のものが一番好きですね、やっぱ。
――その中でも特に影響が大きいものというと?
くっきー! 一番大きいのは音楽、パンクですけど、入りは漫画ですかね。『疾風伝説 特攻の拓(かぜでんせつ ぶっこみのたく)』が一番デカいかな。原点は『特攻の拓』とパンクです。あとはガンプラ。『ガンダム』が好きというよりはガンプラが好きでした。ただ、ガンプラブームの頃は常に売り切れてて、なかなか買えなくてね。残ってるのはボールとエルメスくらいで、小3くらいからやり始めたと思うけど、最初の数年はずっとボールとエルメスしか作ってなかったですもん。あとはムサイとか戦艦系くらいで、モビルスーツを作ったことなかったです(笑)。
――ガンプラといえば、ご自分の結婚式の披露宴でケーキ入刀を行わず、代わりに夫婦初の共同作業で組み立て済みのガンプラの胴体にお二人で頭を付けて完成させたという(笑)。
くっきー! そうそう。嫁はんと二人でね。「ツノ持つなよ、折れるから」とか言うて。
――で、式の打ち合わせより、そのガンプラを作るのに時間がかかったと。
くっきー! 色にこだわりましたからね。白とピンクにしました。めでたいことなんで(笑)。あとは武器を持たせませんでしたね。ケンカがないようにってことで。
――披露宴自体はむちゃくちゃなのに、そこは大事なとこをちゃんと押さえる(笑)。
くっきー! はい。そこはそれっぽく(笑)。

――世代的にキン消しブームがど真ん中だったのでは?
くっきー! めちゃくちゃど真ん中でした。あとはビックリマンシールも。キン消しはエグかったですね。全種集めたんじゃなかったかな。途中で超人が合わさった技のキン消し(パート12、15、16、23にラインナップされた通称・技消し)が出てきたの覚えてます? あれが好きで。あと、引っ張ると伸びるヤツ(「森永チョコスナック キン肉マン」封入のファイツ人形)とか。ザ・魔雲天の伸びるヤツを持ってたんですけど、兄貴と風呂で遊んでて、ケツに挟んで腕を引っ張ってたんですよ。ケツ対魔雲天みたいな感じで、どれくらい伸びるか。そしたらパチン!って腕が切れて、そのままなくなったんですよ。だから、たぶんまだ俺の肛門のどっかで魔雲天の腕がクルクル……『ジョジョ(の奇妙な冒険 第二部)』のカーズみたいに彷徨ってんじゃないですかね、きっと(笑)。『キン肉マン』は今の連載も単行本で全巻持ってますけど、やっぱ面白いですよね。『キン肉マン』が自分のどルーツかもしれないです。絵も立体もボケとか笑いのことも全部。
――ちなみに絵は完全に我流ですか?
くっきー! 習ったことはないですね。もちろん絶対いろいろ好きなもんが混ざってると思いますけど。『キン肉マン』とか、あとは『北斗の拳』とか。
――あと、絵とは直接関係ないかもしれませんが、くっきー!さんのルーツのひとつに『ビー・バップ・ハイスクール』も挙げられるかなと。
くっきー! 好きですねえ。映画の1作目を小6の頃に連れの家でビデオで観たんですけど、いろいろむちゃくちゃでオモロかったです。普通に「コーマン」とか言うてるし。あの時代の『ビー・バップ』とジャッキー映画はヤバかったですね。どの映画か忘れたけどジャッキー・チェンが女の子をナンパしてて、そしたらその子の顔に痣があって、それを見て「汚ねえ」って逃げてくんですよ(笑)。えげつないことやってんなと思って。ひどいですよね(笑)。今の時代だとアウトでしょ。

――80年代はまだ、その辺が容赦ないというか。
くっきー! そうですね。『ビー・バップ』も容赦ないですし。
――今はもう基本的に容姿イジリがほぼNGですよね?
くっきー! そう言われてますね。できるだけ気にせんようにしてますけど。そこはあんま意識せず。
――その点、くっきー!さんの描かれる似顔絵などは時代の流れに抗ってるというか、基本的に容姿イジリなのでかなり攻めてるなと(笑)。その辺りも80年代スピリッツというか当時のカルチャーがさまざまな形で血肉になっているのかなと感じます。
くっきー! そういうのがすべて合わさって、マーブリングされて「乙女」にたどり着いたという。
――いや、話をだいぶ端折りすぎじゃないですか? それ(笑)。
くっきー! 端折りすぎというか、だいぶ捻じ曲がってますよね(笑)。
――捻じ曲がってると言えば、くっきー!さんがマジでやばいなと思ったのが、YouTubeの企画でオリジナルギターを作られた際、ギターのボディの裏側にそろばんを埋め込まれてたじゃないですか。
くっきー! 作りました、作りました。“Soroban”ギターね。原宿にある松下工房さんにお願いして作ってもろたヤツです。
――ちゃんとそろばん用にピックアップも付けてジャラジャラ鳴るそろばんの音も拾えるようにしたり、常人では思いもつかないアプローチというか、この人はほんとどうかしてるなって観ていてシビレました。
くっきー! あれは一応パーカッションの役割なんですけどね。ちなみにバンドをやるとき、あのギターをメインで使ってるんですよ、ちゃんと。ピックアップにグレッチとかいいパーツ入れてるし、音はすごくいいんで。ただ一切使ってません、そろばんは(きっぱり)。
――(笑)。わざわざ大枚叩いて作ったギターでそんなイカれたことをしておいて、演奏で一切役に立ってないのが酔狂の極みでサイコーだなと。
くっきー! ていうか普通に邪魔? すっごい邪魔ですわ。あれ入れたせいでちょっと重くなってるんで、外そうかなと思ってるくらいで。弾いてるとき、腹にそろばんがゴリゴリ当たるからそこだけ痩せてくんですよね、マッサージされて。だから、すっごい困ってるんですよ。1時間くらいずっと部分的にめっちゃ擦られて。あんなん絶対身体に悪いわ(笑)。
――知りませんよ!(笑)
くっきー! だから、次は邪魔にならんようにお箸箱が付いたやつにしたいですね。ひっくり返したら箸が出てきてすぐにメシが食べられるし、お箸箱もパーカッションになるんで。またピックアップを付けて今度はちゃんと使えるようにね(笑)。
――クールだなぁ。
くっきー! そう、クール……いや、何がクールですのん?(笑)
――だって面白さのためだけにこんな無駄遣いする人、他にいないと思うんですけど。
くっきー! たぶん、いないです。マジでもったいないですねえ。
――でも、そこは面白さが勝ってしまうわけでしょう?
くっきー! そうなんですよ。せっかく作るんならってね。たとえば10万円でなんか作れます。おもろいことするのにプラス5万かかりますってなったら、5万はもうええから付けてまえってなるんですよね。金よりも他にないものをって。実際、あのギターに関しては、そろばんのせいで30万くらい余計にかかってますから。大損こいてますねえ。邪魔なものを30万かけて付けただけという。ほんま愚行でした(笑)。

やりたい放題で爆裂する狂咲きくっきーロード
――ギターといえば、反町隆史さんの「POISON 〜言いたい事も言えないこんな世の中は〜」のリフを、YouTubeのギター動画の試奏とか、いろんな場面でことあるごとに弾かれるじゃないですか。
くっきー! そうですね。「POISON」リフは世界で一番弾いてるんちゃいます?(笑)
――なぜに「POISON」? というのも含めて面白くてしょうがないんですけど、実際のところなんで「POISON」なんですか?
くっきー! なんか面白いですよね、あの曲。ドラマの『GTO』(「POISON」が主題歌)は観てましたし、イントロのギターリフがかっこええなと思ってて。ジャージャジャジャーンから「いつまでも〜」ってボーカルが低く入る感じが当時も面白くてかっこよかったんで、やっぱりどっか惹かれてたんでしょうね。すごく弾きやすいし、いろいろアレンジしやすいんで、リスペクトを込めて触らせていただきました(笑)。
――あれってもう28年前のドラマ主題歌なので、くっきー!さんの動画で知ったけど原曲は知らないみたいな層も一定数いると思うんですよ。そしたら今年の夏クールの連ドラで『GTO』の新作が放送され、その主題歌に当時と同じく「POISON」が使用されることに……。
くっきー! 最高ですねえ。少し前に復活したとき(『GTO リバイバル』2024年4月1日放送)は、若い子(BLUE ENCOUNT)とコラボしたちょっと違う「POISON」だったんで少し寂しさを覚えたんですよ。だからよかったですね、今回はオリジナルの「POISON」で。ただ、どうせなら僕も入れてほしかったです。ギターを重ねたかったですね。まだ想いが届いてないみたいで残念です(笑)。
――まさか、令和の世の中に新作の主題歌として「POISON」が鳴り響くことになるとは思ってなかったですが、それまで繋ぎの役目を果たし「POISON」の火を絶やさなかったくっきー!さんの貢献は少なからず評価されていいんじゃないかなと(笑)。
くっきー! ほんまですわ。常に鮮度あるものにしたかったんですよね。誰かの耳に定期的に入れていかな古いもんってなるじゃないですか、忘れた頃に帰ってくる音楽って。それをやめたかったんですよ。だから、『GTO』のドラマが復活したのも完全に僕のおかげですね。僕が頑なに「POISON」を弾き続けたおかげです。これで『GTO』の鬼塚みたいなヤンチャな先生がいいってなって、教育界や学校の感じが変わったら、僕が時代も変えることになりますから。僕のおかげですよね、日本が変わるとしたら。これは世の中へのすごい貢献じゃないですか? だからよかったです、ほんま。あとは反町さんが僕のところへ来て、「ありがとう」って一言いただければ、もう何も言うことはありません(笑)。
――今後の活動でやってみたいことは?
くっきー! 今までずっと自分をキャラにしてきたというか、たとえば「乙女展」の絵にしても顔面は全部僕の顔なんですよ。それで周りがかわいいみたいな。だから、僕以外をプロデュースっていうんですか? 僕以外の何かをやりたいですね。僕が人をイジくるというか。そういう意味では反町さんが一番いいんですけどね。反町隆史乙女化計画。ギャップが生まれて、乙女にハマりやすいと思うんで。反町さんを乙女化して『下妻物語』を男バージョンで復活させたいです。

――むちゃくちゃですね(笑)。
くっきー! はい、むちゃくちゃです(笑)。
――お話を伺ってあらためて実感しましたが、くっきー!さんの信条は基本的に言いたい放題のやりたい放題なんだなと。
くっきー! そうですね。あれやりたいとか、これ欲しいとか思ったら絶対なんとかしてきたんで。おねえちゃんくらいじゃないですか、なんとかならんのは。難しいですねえ……おねえちゃんは(しみじみ)。

構成・撮影/丸山剛史 取材・文/サマンサ五郎












