Vol.164-2
本連載では、ジャーナリスト・西田宗千佳氏がデジタル業界の最新動向をレポートする。今回は、メモリー価格高騰の影響を受けたPCやスマートフォンの値上げや新製品の開発中止の話題。今後しばらくこの状態は続くのだろうか。
今月の注目アイテム
アップル
MacBook Air
22万4800円(13インチモデル)~

メモリーやストレージ(SSDやハードディスク)の価格高騰は、PCの増設用製品の高騰だけでなく、スマートフォンやPC自体の価格高騰にもつながっている。実際に価格が上がるのはPCやスマホだけではない。あらゆるIT機器が価格上昇に直面しているというのが正確だろう。
なぜメモリーやストレージの価格が上昇したのか? 簡単に言えば、AIデータセンター向けの需要が拡大したからである。
特にGPU(※1)で使うメモリーは、PCやスマホで使われるものとは異なる。同じパーツがそのままAI向けに流れている量は少ない。
※1: グラフィックス・プロセッシング・ユニット。高精細な映像表現や、巨大なデータを一瞬で描画・処理することに特化した画像処理の専門プロセッサー。
だが、GPU向けに使われるメモリーである「HBM(※2)」は、PCやスマホ向けの「DDR(※3)」と同じ半導体プロセスで製造されるが、単価はより高い。メモリーメーカーはAI関連企業からHBMの増産と大量一括調達を求められ、HBMはDDRとは別の生産ラインで作られる。
※2: 一度に大量のデータを送れるAI・プロ向けの超広帯域メモリー。
※3: PCやスマホで広く使われている標準的な汎用メモリー。
もともとメモリーメーカーのメモリーチップ生産量と、メモリーという部品の最終組み立てラインの能力には限界があり、簡単には増やせない。結果としてDDR向けの生産ラインがHBM向けに割かれ、DDRメモリーの生産量が減っていくことになる。
完全に消費者向け製品が割を食っていることになるが、その理由は、HBMをはじめとしたAIデータセンター向けのパーツは、PCやスマホなどの一般消費財向けに比べ、単価が高いためだ。そのためメーカーも、ある種のビジネス判断として、まずAIデータセンター向けを優先するようになった。
一般消費者としてはたまらない……と思いたくなるが、メモリーメーカーにとっては重要な収益拡大の機会である。部品調達で、メモリーメーカーの立場は強くない。大手スマホメーカーから、部品としてのメモリーの単価を安くするよう圧力がかかり続けてきた。今回の件はメモリーメーカーから見れば、単価を上げる格好のチャンスでもある。
もちろん、メモリーメーカーとしても需要に応えたくないわけではない。メモリーの生産ラインを増やしていくことは考えている。だがそのラインも、まだまだニーズが大きいHBM向けとDDR向けを取り合う関係だ。将来的にDDR向けのラインが増え、増産されていくとしても、メモリーメーカーはそれなりに強気に出て、価格を前のように下げていくことはなさそうだ。
だとすると、メモリーの価格は落ち着くことはあっても、短期的に過去のような水準にまで下がるとは考えづらい。少なくとも2027年中は、メモリーの価格水準が劇的に下がることはない……というのが、業界関係者に共通する予測だ。
では、その結果として製品の価格はどうなるのだろうか? どんな製品にどう影響が出るのだろうか? そこは次回解説する。
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