乗り物
2017/1/29 16:00

東京―大阪が2万円の超高級高速バス「ドリームスリーパー号」は新たな選択肢になり得るか?他社との比較も

こんにちは、おひとり旅大好き・少女漫画マイスターの和久井香菜子です。 和久井はこれまで、格安高速バスから高級高速バス、寝台列車と、夜を乗り物で過ごす旅をいくつもくぐり抜けてきました。そこで2017年1月18日に運行を開始したばかりの超高級高速バス「ドリームスリーパー号」に乗ってみることに。

 

全室完全個室のゴージャスバス

ドリームスリーパー号は、全11室が扉付きの完全個室というゴージャスバスです。高速バスでの移動が注目されるなか、片道20000円(現在はキャンペーン中で18000円)という他を圧倒する高額な設定で登場しました。

 

利用したのは、大阪から池袋へ向かう便です。通常、高速バスって出発時間のギリギリ5分前くらいから乗車なのですが、10分前にはアナウンスが入りました。早いなと思っていたら、なるほど。バス内は土足厳禁なので、靴を脱がなければいけません。そのため一人ひとりの乗車に時間がかかるんですね。

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おまけに、高速バスと言えば若者の移動手段というイメージですが、平成生まれが人っ子ひとりいない、バブルを満喫してそうな昭和な面々でした。こんなに年齢層の高い高速バスに乗ったのは初めてです。まあ自分も含めですが。

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さて、バスの総合評価ですが、大変難しいです。ドリームスリーパー号をどう捉えるかで、評価が分かれるのではないでしょうか。

 

完全個室や細やかな気遣いで居心地は◎

まずよかったところ。

 

完全個室は、やっぱりものすごく居心地がよかったです。いびきが聞こえません。室内ではまったくほかの人の存在を感じませんでした。

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また運転手の方たちは2人ともたいへん感じがよく、細やかに気遣いをしてくださいました。ぶっちゃけ高速バスでスタッフには「お疲れ様です」と声をかけたことくらいしかないので、これは新鮮です。しかも、乗車後にはお水とお手拭きを持ってきてくれました。

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↑個室にはアイマスクやヘッドフォンなどのアメニティも

 

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↑机も広くて使いやすいです

 

以前乗車したとあるバスでは、サービスエリアに到着したのにドアが開かず「なんだ降りられないのか?」とドア口まで降りてきた乗客とモヤモヤしたことがあります。サービスエリアでお手洗いをすませようと思っていたので、予想外に下車できず、バス内のトイレを使用しなければならなかったのはちょっとストレスでした。ドリームスリーパー号では発車前に、休憩場所や経路の予定など、細かく説明してくれたのもよかったです。

 

シートの座り心地は抜群も“寝る”となると好みはわかれる

一方で気になったこと。

 

トイレがやっぱり狭いです。便座に座ると、膝や頭がドアにつきそうなほど。車内のトイレはあまり使わない、という人は気にしないかもしれませんが、高級バスということでもう少し広いものを期待していました。

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また、行ったときには1人分どころじゃない大量のトイレットペーパーが流れずに溜まっていて、何度流しても流れず、運転手さんを呼びました。ドアを閉めると流れる水の量が増えるそうで、鍵を開ける前に流さないといけなそうです。が、何しろ狭いので、用が済んだら流す前にドアを開ける人も多いのかもしれません。水回りの清潔感は女が設備を評価する際の最大項目といっても過言ではないので、これはかなりマイナスポイント。

 

それから肝心の個室の椅子。 「寝返りがいらない寝心地の良さ」が売りですが、和久井はほとんど寝られませんでした。

 

椅子としてはものすごく座り心地がいいと思います。背もたれと座面が約90度で固定されていて、背もたれを倒すと、座面の全面、脚が持ち上がります。ル・コルビジェの寝椅子みたいなカタチです。体重が分散されるのかお尻が痛くなることもありません。だけど背もたれのリクライニングがフラットにはほど遠く、膝の部分が盛り上がっているため、横向けに寝ようと思ってもできません。仰向け固定です。

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座り心地はいいのですが、寝返りがいらないのではなく、できない感じ。うずくまってもぞもぞ寝るのが好きな和久井には、姿勢を変えられないことで眠りに誘われませんでした。せめて座面とフットレストがフラットになれば、猫みたいにうずくまって寝られるのに。

 

以上のように、よいところとそうでないところが明確にありました。ではここで、ほかの移動手段とざっくり比べてみようと思います。

 

ほかの高級高速バスや寝台列車との違いは?

高速バスでの熟睡度・寝心地というと、これまで乗車したなかでは西日本JRバスのプレミアムドリーム号がダントツよかったです。横幅があるので寝返りも自由、カーテンで仕切れるので、ある程度のプライバシーも守れます。こちらは東京大阪間10000円前後です。

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↑座席はカーテンで仕切ってあります。肝心の座席は撮影し忘れました

 

ウィラーバスのコクーンは、サイバーな車内がとにかく面白いです。途中休憩する回数が多く(ほかのバスはたいてい1回)、サービスエリアでのお買い物も楽しめます。こちらは東京大阪間9000円前後。

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↑座席の横幅が狭めなので、寝心地はちょっとマイナス

 

寝台列車も候補に入れるなら、サンライズ瀬戸・出雲は東京大阪間がB寝台で18360円。完全個室でベッドはもちろんフラット、岡山から乗車したときは、すぐさま爆睡して、静岡まで目を覚ましませんでした。別料金ですがシャワーも浴びることができます。星空や田舎の風景、富士山など窓からの眺めも◎(高速道路だと明かりや仕切りがあるためその楽しみは半減)。

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一方、今回乗車したドリームスリーパー号は、運賃9000円、座席料金11000円の合計20000円という設定です。正直、20000円(現在はキャンペーン中で18000円)出してまた乗りたいかと聞かれたら、悩みます。座席料金をサービス代と考えるなら、11000円出せばけっこういいホテルに泊まれますし、いくら高級といってもホテルの設備と比べるとやはり勝負にならないのではないでしょうか。移動手段として同じ金額なら、サンライズ瀬戸・出雲を選びます。

 

ただ、時間に追われていて、夜間も仕事をしなければならないという人にはいいかもしれません。完全個室で椅子の座り心地はよく、仕事が捗るでしょう。

 

また自宅や目的地がなんばや池袋に近かったり、アクセスが良いのなら、選択肢の上位にくると思います。池袋は新幹線のアクセスが良好とはいえません。たいていの高級バスは新宿発着ですし、サンライズ瀬戸・出雲も東京発着で、山手線の反対側の池袋からはけっこう遠いです。

 

あと、改善して欲しい点がひとつ。

 

乗車直後に、運転手さんが来て「この座席は後部で室温が低くなるかもしれない。寒くなったら追加の毛布をお申し付けください」とお知らせしてくれました。お知らせせずともあとで持ってきてくれましたが、確かに窓からの冷気がけっこう寒かったです。もしも座席の場所により条件が異なるようなら、予約時にそれがわかると助かるな、と思いました。実はどこを選ぶがけっこう迷ったんです。長時間過ごす場所なので、室温はけっこう大事です。比較的暖かい座席、寒い座席がわかっていたら、間違いなく暖かい座席を選んだと思います。まあ「寒い座席」とは情報として書きにくいと思いますが。

 

というわけで、ソフト面のサービスは満点以上、ハードと値段設定が見合っているかが微妙、というプラス面・マイナス面を併せ持つドリームスリーパー号でした。

 

なんにしろ、選択肢が増えるのはとてもよいことだと思います。利用の目的に合わせて、最適な手段が選べるようになったら便利ですよね。