2021年2月25日から28日にかけて、日本最大の一般向けカメラ、映像機器の見本市である「CP+2021」が、コロナ禍の影響から初のオンラインで開催されました。昨年は同様の理由から中止となってしまったイベントだけに開催を喜ぶファンの声や期待が大きかった一方で、オンラインではカメラやレンズの実機に触れることができないなど、大きな制約がある中での開催となり、出展者であるメーカーがどのような工夫をしてくるかといったことにも注目が集まっていたイベントです。
本稿では、4日間に渡ったオンラインイベントの様子や主要出展各社の特徴、主だった新製品、全体としてのトレンドなどについて前後編の2回に分けてリポート。前編となる今回は、CP+公式サイトと主要カメラメーカーについてです。
CP+公式サイトはカメラメーカー特設ページのポータル的役割に
まず、CP+2021の公式サイトでは、主催者(一般社団法人カメラ映像機器工業会・CIPA)イベントとして、会期初日に「キーノートスピーチ」「CIPAデジタルマーケット・セミナー」「上級エンジニアによるパネルディスカッション」の3つを実施。フォトアワード「ZOOMS JAPAN 2021」の受賞作品発表なども行われました。
主催者イベントについては、主に現在のカメラ市況の分析やトレンドについて解説するもので、業界関係者やプレス向けの色合いが濃いイベントです。とはいえ、今回はオンラインとなったことで一般の方の視聴も行いやすくなったので、来年も視聴したいと思った人もいたのではないでし

それでは、今回参加したカメラメーカーについて、それぞれ見て行きましょう。
【カメラメーカー1】OMデジタルソリューションズ(オリンパス)
オリンパスの映像事業部門が独立する形で2021年1月に誕生した新会社で、OM-Dシリーズをはじめとした、マイクロフォーサーズのミラーレスカメラなどを展開。CP+2021では、目立った新製品の発表などはなかったものの、同社のYouTubeチャンネル「OLYMPUS LIVE」を活用して、新会社の決意などを表明しました。カメラ機材や交換レンズを活用している写真家のトークや、撮影テクニックを解説するセミナーなども多数配信。既存の「OLYMPUS LIVE」のコンテンツも充実しているため、同社製品のユーザーだけでなく、これからカメラを購入しよういうユーザーにも役立つものになっていました。

【カメラメーカー2】キヤノン
TOKYO FMとタイアップした番組形式の映像配信、「CP+2021 ONLINE Canon Imaging Channel」を実施。ラジオ・パーソナリティーによるトークを交えつつ、写真家やタレントのトーク、製品の活用テクニックなどを配信。同社のフルサイズ・ミラーレスカメラ、EOS Rシリーズや新コンセプトカメラであるiNSPiC REC、PowerShot ZOOMなどのコンセプトやデザインワークについてのトーク、開発者による解説なども行われました。イベントに合わせた製品発表などはなかったようですが、フルサイズミラーレスのEOS R5、R6、交換レンズのRF50mm F1.8 STMなど、比較的最近発表・発売された製品の展示が多く、ユーザーの注目度も高かったのではないかと思います。ライブ配信ではリアルタイムのアンケートなども実施し、インタラクティブ性が高く参加者も十分楽しめたのではないでしょうか。


【カメラメーカー3】ソニー
α7/9シリーズや各種交換レンズについてのコンテンツもありましたが、やはり2021年1月に発表されたフルサイズミラーレスカメラ「α1」、同年2月に発表されたフルサイズセンサー採用の映像制作用カメラである「FX3」、2つの注目機種に関連したコンテンツが多かった印象。この2製品を軸に写真家や映像作家による、機材紹介や使いこなしについてのセミナーやトークが数多く実施されました。今回は特に映像関連のコンテンツが多くなっている印象で、FX3などの専用機はもちろん、α7シリーズなどの動画撮影機能も含め、同社のカメラとレンズが動画撮影にも適している点や、そのための機能が理解できる内容になっていました。




【カメラメーカー4】ニコン
2020年後半に発売されたフルサイズミラーレスカメラ、NIKON Z 7II、Z IIとNIKKOR Zレンズの機能や特徴を中心に、写真家や映像作家などによるセミナーやトークを展開。Zシリーズの使い勝手の良さやレンズの写りの良さが伝わってくるコンテンツが豊富に用意されていました。今回は、写真だけでなく、映像制作の現場でZシリーズのカメラやレンズが適していることにも重点が置かれ、写真用にZシリーズを購入したユーザーにも、気軽に質の高い動画撮影を楽しんでもらおうといった方向性のコンテンツも用意。写真と動画の両方が高いレベルで楽しめるカメラとしてのZシリーズの魅力が伝わる内容になっていました。


【カメラメーカー5】パナソニック
動画・映像制作Tipsサイト「Vook」とコラボし、ライブ配信プログラム「Creators Live! with LUMIX」を実施。2月26日は写真、27・28日は映像制作に主要テーマを分け、写真家や映像作家によるセミナーなどを配信しました。製品の紹介はもちろんですが、LUMIXを用いた写真や映像の作品制作の基本や、プロでも役立つ表現テクニックやTipsなども紹介。配信によるコンテンツは、ほとんどの内容がリアルタイム配信で、ためになる内容だけでなく適度に笑いありハプニングありの関西風味も加わって、長時間のコンテンツでも飽きずに見ていられる内容でした。


【カメラメーカー6】富士フイルム
会期中のライブ配信によるコンテンツは用意されていなかったものの、発売になったばかりの新製品、FUJIFILM GFX100SをはじめとしたラージフォーマットカメラのGFXシリーズ、APS-CサイズカメラのXシリーズ、人気のインスタントカメラ“チェキ”など、製品タイプごとの動画コンテンツが用意され、特に同社の製品に興味のあるユーザーには、大変参考になる内容になっていました。また、同社の伝統ともいえるプリントサービスについても紹介され、プリントのお試しサービスも展開(2021年3月31日まで実施)。撮影からプリントまでを完結できる同社の総合力を実感できる内容になっていました。




【カメラメーカー7】リコー
動画配信としては、近日中の正式発表や発売が見込まれているAPS-Cサイズフラッグシップ一眼レフ「PENTAX K-3 MarkIII」や、シリーズ30周年を迎えた高級コンデジのGR、360度全天球カメラのTHETAに関連したコンテンツや写真家のセミナーが中心。このほか、ライブ配信を駆使して、PENTAX K-3 MarkIIIのオンライン・タッチ&トライ(予約制)が行われていたのは特徴的でした。また、新製品として2月25日発表の「HD PENTAX-FA31mm F1.8Limited」など3本のレンズや「J limited」と称されたPENTAX K-1markIIのカスタムモデル、開発発表が行われた「HD PENTAX-DA★16-50mm F2.8ED PLM AW」(仮称)についても紹介されていました。



↑左から「HD PENTAX- FA43mmF1.9 Limited」「HD PENTAX-FA31mmF1.8 Limited」「HD PENTAX-FA 77mmF1.8 Limited」。アルミ削り出しの外観やシャープな写りと美しく柔らかいボケ味を両立した写りなどが特徴の高品質な交換レンズ。カラーは画像のシルバーのほか、ブラックも用意。4mm F1.9が8万7000円、77mm F1.8が12万円、31mm F1.8が15万6000円(各メーカー希望小売価格・税別)、2021年4月下旬発売予定
各カメラメーカーのオンライン発表を見て…
今回のカメラメーカーの出展内容は、写真撮影だけでなく、動画撮影に力を入れたものが多かったのが特徴的でした。これは、質の高い動画撮影が可能なフルサイズミラーレスカメラが普及し始めたこと、プロを含む映像作家がフルサイズミラーレスカメラを積極的に使い始めたことなどがあると思います。特にパナソニックは、イベントを行った3日中、2日を動画向けのコンテンツとしていたのは特徴的で、内容的にも動画撮影の初心者からプロの作家まで満足のできるものになっていて、勝負をかけてきたな……という印象。今回の出展社では、リコーだけが現行のミラーレスカメラを持っていない状況ですが、同社は一眼レフの新製品を出すことで、一眼レフや同社のファンの心を掴む方向で勝負をしていて、そちらも魅力的に感じられる内容でした。
後編ではカメラメーカーより、さらに配信でのアプローチが気になるレンズメーカーの出展状況からトレンドを見ていきたいと思います。
【フォトギャラリー】※画像をタップすると閲覧できます。一部SNSからは閲覧できません。
●GetNavi web本サイトでフォトギャラリーをみる