本・書籍
2022/10/19 19:01

“いい夫婦”について改めて考えたくなる1冊『妻が怖くて仕方ない』

結婚したいと願う若者が減り、3組に1組が離婚する時代。これだけ便利でスマートな時代になっても、恋愛や結婚の悩みはなくならないのだな〜と痛感します。今回は、妻が読むと衝撃がいっぱいな『妻が怖くて仕方ない』(富岡悠希・著/ポプラ社・刊)を読んで、“いい夫婦”について改めて考えてみたいと思います。結婚したい人も、している人も、参考になる言葉が必ずある! そんな1冊ですよ。

 

冒頭でイラッとしてしまった(笑)『妻が怖くて仕方ない』

この本は、ジャーナリストである富岡悠希さん夫婦のエピソードがベースに展開されていくルポルタージュです。

 

ふたりは2010年に知り合い、翌年には結婚。3人の子宝に恵まれて、奥さんは公務員、旦那さんもジャーナリストとして働いている共働き夫婦です。しかし、2019年奥さんに800万円の借金が発覚。育児のストレスから買い物に走ったため「借金するくらいストレスを与えた旦那が悪い」と、奥さんの態度がガラリと変わってしまったそう。さらに2020年には、口喧嘩中に奥さんが払った手が富岡さんの腕に直撃! 左肩を脱臼する怪我を負い、警察と救急車を呼ぶ事態にまで発展しまったのです。本書では「救急車事件」としてユーモラスに描かれていますが、夫婦のよくある日常を超えた現実がありました。

 

いやはや、10年超の月日はなんとも劇的な変化をもたらしています。これだけのことがあったのだから、離婚を全く考えないわけではありません。それでも、沼地に足を取られながらも、僕はいまだ「なんとかできる」と考えています。

その根底には、妻への愛情があります。確かに救急車事件の強烈アタックからしばらくは、妻が「怖くて仕方ない」時期がありました。それでも、時間の経過と共に妻との関係修復を望む自分に気がつくのです。「不仲なままじゃイヤ!」となります。

(『妻が怖くて仕方ない』より引用)

 

本のタイトルもキャッチーなので、旦那さんが読むと「わかるよ〜」と共感できると思うのですが、私からするとイラッとした文章でした(笑)。もちろんDVや暴力は許されませんよ。でも、客観的にみると「夫婦の愛でなんとかできる」と思っている旦那さんと、「もう別れたいから、嫌いになってくれ!」と思っている奥さんの可能性もあるのでは? と考えてしまったのです。お互いが「不仲なままじゃイヤ!」と思っているのならいいのですが、そもそも奥さんの気持ちってどうなんだろう? と。

 

『妻が怖くて仕方ない』では、奥さんからのコメントがないので本心はわからないのですが、「おわりに」で「妻からすると異なる景色となることは認めざるを得ない」と書かれてあったので、ホッとしました。一方的に妻の怖いエピソードが描かれてあるわけではないので、これから読む方は安心してくださいね(笑)。

 

さまざまな専門家に聞く、夫婦像

『妻が怖くて仕方ない』では、なんとか関係を修復したいと考える富岡さんが、さまざまな専門家に話を聞いています。

 

借金をしてしまった奥さんとどう接したらよかったのかを教えてもらうために、家計再生コンサルタントの横山光昭さん。子どもの教育方針については、教育評論家の石田勝紀さん。DVなど暴力については、女性・人権センター主宰の栗原加代美さん。そして、口を聞いてくれない妻とのコミュニケーションを解決したいと、法華山示現寺住職である鈴木泰堂さんのところにも行かれています。また、メディアでなにかと話題の三浦瑠璃さんとの対談も収録されており、夫婦像についてさまざまな視点から考えるきっかけをもらえます。

 

その中でも、鈴木さんが語っていたある夫婦の『絆』についてのお話が素敵だったので引用します。

 

「このおふたりは、今生の縁を大事にする夫婦でした。『絆』の字は、糸が半分と書く。人の半分と半分を結んでいる。夫婦のかすがいと言われる子どもがいなくとも、この老人夫婦は絆を結んでいました。僕はその姿を見て、見習いたいと思いました」

(『妻が怖くて仕方ない』より引用)

 

これは老夫婦のお葬式の話だったのですが、自分の老後を想像して「こんな夫婦が“いい夫婦”なのかも〜」なんてしみじみしてしまいました。この話を受けて、富岡さんも奥さんとの老後についての夢を語っているのですが、もう半分の糸を持つ奥さんも同じように考えていてくれ〜! と、勝手ながら祈ってしまいました。

 

他にも、専門家たちのアドバイスはどれも的確。富岡さんと同じような悩みを抱えている方なら読んで損はないはずです。

 

現在、「妻が怖い」と感じているなら絶対読んでほしい!

『妻が怖くて仕方ない』は、女性目線で読んでいくと多少納得できないところもありましたが、富岡さんの「なんとかしたい!」気持ちの強さは、理解できるようになりました。ただ、家に帰ってこの本がダイニングテーブルに置いてあったら、絶対怒っちゃうな……と思います(まだまだ心の狭い人間だなぁ〜)。これから購入されて読んでみようと思っている旦那さんたちは、念のためカバーをつけて、こっそり読むことをおすすめします。

 

また読んでみたいと思った妻のみなさんも、多少イラっとすることも出てくるかもしれませんが、ぜひ最後まで読んでみてください。そして、自分の旦那さんや富岡さんを責めないでください。自分自身を顧みて、反省することがポロポロと出てくるはずです。

 

これは「妻あるある」かもしれませんが、家族だからという謎の安心感に頼って、大事なことを伝えなかったり、無視したり、思いやりをなくしちゃうことってありませんか? それが積み重なって「怖い」と感じさせているかもしれません。長い人生を楽しく過ごしたいなら、家族の安心感に頼りすぎないことも大切です。どんなことを「怖い」と感じるのか、本から学んでみましょう。

 

11月22日の『いい夫婦の日』も近づいてきましたが、一概にこれが“いい夫婦”とは言えません。けれど、お互いにもっといい夫婦になりたいと考えているのであれば、今より良い関係性を築くことはできるはずです。夫婦の関係性を見直すきっかけに、同じように怯えている人の解決のヒントに、ぜひ『妻が怖くて仕方ない』を参考にしてみてください!

 

【書籍情報】

妻が怖くて仕方ない

著者:富岡悠希
発行:ポプラ社

科学技術は発展しても、結婚技術はさほど向上していない。合コンで一目惚れ、僕の猛烈アタックでゴールイン。子宝にも恵まれた幸せな夫婦関係は、しかしいつしか大きく対立するようになった。金銭感覚、教育方針、圧倒的なコミュニケーション不全…、ジャーナリストとして自らの破綻をさらけ出し、各分野のスペシャリストに徹底取材。令和型の結婚像、夫婦像を考える渾身ルポ。

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