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2023/7/3 19:45

フロアシートでフローリングを模様替え! 賃貸住宅でも現状復帰できる “床の張り替え” アイデア

インテリアにこだわる人の間で、 “床の張り替え” がトレンドになっています。といっても、フローリングを剥がしてリフォームするような大がかりな工事ではなく、フロアシートなどを使って床を傷つけず、原状回復も容易で初心者でも挑戦しやすい、床の “DIY”。

 

フローリングに飽きてしまった、部屋の面積の多くを占める床から雰囲気を一変させたい。そんなニーズに応える床の模様替え方法を、一級建築士の小野寺郷さんに教えていただきました。

 

床の張り替えには具体的にどんな方法がある?

現状復帰ができるよう床にダメージを与えず張り替える方法には、「貼る」「敷く」「置く」の3タイプがあります。

 

「柔らかい素材のフロアクッションを両面テープで貼る方法、木製やコルクのカーペットを畳やじゅうたんに敷く方法、パーツが分かれている耐久性の高いフロアタイルを置く方法です」(一級建築士・小野寺郷さん、以下同)

 

それぞれ詳しく見ていきましょう。

 

■「貼る」

「貼るタイプの一般的なフロア素材として、塩化ビニル製のクッションフロアがあります。フロアシートやフロアマット、CFシートとも呼ばれています。このクッションフロアはデザインのバリエーションが豊富で、手頃な価格で購入できます。さらに、水を弾く性質があり、水に濡れてもさっと拭き取れて、傷んだりシミになったりしづらい特徴があります。クッションフロアの中には空気層が含まれていて、断熱効果も期待できます。厚み1.8mmの住宅用が一般的ですが、はさみで簡単にカットできるので、施工は比較的容易です」

 

■「敷く」

↑写真提供=アジア工房

 

「敷くタイプの一般的なフロア素材として、ウッドカーペットがあります。畳やじゅうたんの部屋に簡単に敷くことができ、洋室風の雰囲気を手軽に演出できます。専門業者による工事と比較しても、はるかに費用を抑えられるのが魅力です。また、ウッドカーペットの裏面にはコットン布や不織布が貼られていて、床や畳を傷つける心配がありません。重い家具を置いても凹まない丈夫な素材です。敷くだけなので、元の状態に戻すことも簡単です」

 

■「置く」

↑写真提供=アジア工房

 

「置くタイプで多いのが、塩化ビニル製のフロアタイルです。これらのタイルはパーツが分かれていて、パズルのように組み合わせて施工できます。裏面が吸着式のものを選べば、本当に置くだけです。また、木目調や石目調など、デザインのバリエーションも豊富で、凹凸のあるリアルな質感を楽しめます。これらのタイルは耐久性も高く、メンテナンスも容易です。さらに引っ越しの際は簡単に外すことができ、再利用が可能です」

 

床材別にチェックする、貼り替えできるもの、できないもの

賃貸の床の素材には、おもに「クッションフロア」「合板フローリング」「カーペット」「畳」の4種類があります。どの素材でも貼り替えは可能なのでしょうか?

 

「だいたい可能ですが、一部、向かないもの、できないものがあります。例えば、フロアタイルの場合、裏面が滑り止め加工されているものは平滑な床でないと吸着しないため、カーペットの上で使用することはできません。畳敷きの部屋では、下地処理としてベニヤ板を敷くなどの対策が必要です。また、床暖房機能のある部屋では一部の素材が適さないこともあります。同じ種類の素材でも製品によって異なる場合があるので、購入前に必ず確認しましょう」

貼り替える前に知っておきたい注意点とは?

床の貼り替えにはメリットも多いですが、注意点やデメリットもあります。

 

「どの賃貸物件でも貼り替えができるとは限りません。たとえ原状回復できるとしても、一切のリフォームを禁止している場合もあるため、必ず賃貸契約書を確認しましょう。分からない場合、大家さんや管理会社に確認をとると安心です」

 

他にも、こんな注意点があるそう。

 

【施工時】

「賃貸物件は原状回復が原則のため、現在のフローリングを傷つけないことが重要です。たとえば強力な両面テープで貼ってしまうと、糊が残って原状回復が難しくなるため、養生テープの上から貼ったり、貼って剥がせるテープを使用しましょう。カッターで傷つけないようにすることも大切です。もちろん釘やビスで留めるのはNGです」

 

【カビの発生】

「耐水性が高く、水回りにも適したクッションフロアですが、通気性が良くないため、床とクッションフロアの間に湿気がこもり、カビが発生するリスクがあります。元の床をきれいに掃除してから貼り替える、湿気の少ない日に施工する、水回りに敷く時は、防カビ加工付きのものを選ぶなど対策しましょう。
ウッドカーペットを畳の上に敷く場合もカビが生えるリスクがあります。定期的に換気をする、設置する前に防カビスプレーを散布する、もしくは防カビシートを敷くようにしましょう。フロアタイルには継ぎ目があり、その継ぎ目の隙間が大きいと水が入り込んでしまう可能性があります。隙間を出さず丁寧に貼ることでリスクを抑えることができます」

 

【処分方法】

「ウッドカーペットは一枚あたりのサイズが大きいため、処分に手間がかかります。たとえば6畳タイプは、長さが約2.5m、重さは約30kgになることも。粗大ゴミでも回収料金がかかりますし、切断し、自治体が指定する方法で処分するにしても手間がかかります。処分方法もあらかじめ想定した上での購入をおすすめします」

 

購入するなら? 床材の選び方が知りたい

↑写真提供=アジア工房

 

クッションフロア、ウッドカーペット、フロアタイルのメリットやデメリットについて紹介しましたが、どんな基準で選んだら良いでしょうか?

 

「原状回復のしやすさはもちろん、施工のしやすさ、機能、用途、好きなインテリアのスタイル等で考えると良いと思います。施工のしやすさは、一般的にクッションフロアが初心者向けだと言われています。また、クッションフロアの場合、幅182cmが一般的ですが、女性でも取り扱いやすい、90cmのものが販売されているのでおすすめです。
床材によって、水に強い、掃除がしやすい、メンテナンスが容易、土足OKといった特徴もあるので用途に応じて優先順位をつけましょう。厚みもポイントです。ドアの開閉や敷居などに干渉しない薄さかどうかも確認してください」

 

床の雰囲気は、部屋の雰囲気に大きく関わるといいます。

 

「まずは目指すお部屋の雰囲気を考えてみましょう。ナチュラル系であれば、木目調。アンティーク系を目指すなら、同じ木目調でもヘリンボーンがいいかもしれません。モダン系であれば、コンクリート調も合うでしょう。ほとんどのショップでサンプルの取り寄せが可能なので、試してみることをおすすめします。
購入前にお部屋の寸法を測ることも大切です。そこから購入する量を計算しましょう。分からない場合、お店に直接聞いてみても良いと思います。失敗してもいいように、少し余分に購入しておくと安心です」

 

初心者でも大丈夫! 床の張り替え方法

ここからは、実際に床を貼り替えていきます。

まずは、道具の準備から。左上から時計回りに、地ベラ、両面テープ、養生テープ、撫でハケ、はさみ、カッター、メジャーです。

 

あらかじめ採寸を済ませ、クッションフロアを購入しておきます。ロール状で届くので、施工前に巻き皺を伸ばしておきましょう。寒い時期は伸びるのに時間がかかるので余裕を持って準備します。

 

【基本的な手順】

1.床を掃除する

まずは掃除から。汚れが残っていると接着不良やカビ発生の原因となります。念入りに行いましょう。

 

2.養生テープを貼る

養生テープを四隅に貼ります。面積の広い場所やしっかり貼りたい場合は、40〜50cm程度の間隔で格子状に貼ると良いでしょう。フロアクッションを複数枚使う場合、継ぎ目部分にも貼ります。養生テープを貼らずに施工すると、両面テープをはがす際、床に跡が残る可能性があるので注意してください。

 

3.両面テープを貼る

養生テープの上に両面テープを貼っていきます。両面テープは養生テープからはみ出さないサイズを選ぶのがおすすめです。今回はサイズが同じだったため、養生テープを二列に貼りました。

 

4.クッションフロアを敷く

フロアクッションを敷き込みます。片方は部屋の端にぴったりと合わせます。逆側の壁際は5〜10cm残し、余った分ははさみでカットします。

 

5.クッションフロアを貼る

両面テープの剥離紙をはがして、クッションフロアを貼っていきます。空気が入らないように、撫でハケで空気を抜きながら少しずつゆっくり貼るのがポイントです。

 

6.余分な部分をカットする

次に壁にそって地ヘラでぐっと抑えながら型をつけ、余ったクッションフロアをカットしていきます。CFカッターという、フロアクッション専用のカッターを使うと、よりきれいに隙間なく仕上げられます。

 

【ポイント】

2枚のクッションフロアを貼り合わせる場合、とくに難しいのは継ぎ目の部分です。

↑2枚のフロアクッションが重なるところに養生テープと両面テープを貼ります

 

↑2枚のシートの真ん中にテープがくるように合わせます

 

↑両面テープの剥離紙をはがし、1枚目、2枚目と貼っていきます

 

↑慌てずゆっくり貼りましょう

 

↑撫でハケをあてながらしっかり接着します。継ぎ目部分をローラーで圧着させるとさらに効果的です。継ぎ目部分にはクッションフロア用の継ぎ目処理剤(シームシーラー)を注入すると、継ぎ目のはがれや水の染み込みを防ぐことができます

 

7.完成

 

「凹凸が多いお部屋は、たとえ狭くても手間がかかります。初めて挑戦する場合は、できれば凹凸が少ない四角い部屋から取り掛かると良いと思います。引越しのタイミングであれば、家具を置く前に施工するのが理想的です。
慣れないとカッターで切るのは難しいかもしれませんが、カッターが必要なところは部屋の端っこです。家具を置く可能性も高いと思います。多少のガタつきは家具を置いて隠せますので気軽にチャレンジしてみてください」

 

ナチュラル系から北欧系まで、おすすめの床材

クッションフロア、ウッドカーペット、フロアタイルの中から、編集部が選んだおすすめの床材を紹介します。

サンゲツ ヘリンボーン HM11023
5740円 / m  3150円 / m2(税抜)
白太入りのオークを使用した、ナチュラルな色合いとクラシカルで上品な雰囲気のヘリンボーン柄のクッションフロアは、北欧インテリアとも相性が良く、床や壁材で特に人気のデザインです。クッションフロアは他の床材に比べて程よいクッション性があるので足腰の負担を和らげてくれます。
・サイズ:182cm
・厚み:1.8mm
・素材:ポリ塩化ビニル(表)不織布貼(裏)
・機能:耐次亜塩素酸、抗菌、さらっと仕上げ

 

サンゲツ フレンチアンティークタイル HM11142
5740円 / m  3150円 / m2(税抜)

あえて色ムラやぼかしを入れることで、ヨーロッパにあるアパートの一室のような、アンティークの風合いを演出したタイル柄のクッションフロアです。柄物は一気に空間の印象を変えてくれます。好みの柄でかわいくイメチェンしたいという方におすすめです。
・サイズ:182cm
・厚み:1.8mm
・素材:ポリ塩化ビニル(表)不織布貼(裏)
・機能:耐次亜塩素酸、抗菌、さらっと仕上げ

 

アジア工房 敷くだけウッドカーペット 板幅ワイド[GA-70シリーズ]
2万2800円(税込) / 団地間6畳用

畳やじゅうたんのお部屋が敷くだけで大変身! 見た目も手触りも本物のフローリングのようなウッドカーペットです。接着剤などの特別な道具は不要で誰でも簡単に施工できます。カラーはアイボリー、ライトナチュラル、オーク、ウォームブラウンの4色。好きなテイストに合わせて選ぶことができます。サイズも3畳から8畳まで揃っています。
・サイズ:縦幅:約243cm / 横幅:約343cm / 厚み:約0.5cm / 板幅:約7cm
・重さ:約22kg(梱包あり)
・素材:プリント化粧板(表)合板(中)不織布(裏)

 

アジア工房 SOLUM
3万4980円(税込) / 約6畳

置くだけで簡単!賃貸OKのフロアタイル「SOLUM ソルム」。まるで本物の石材のようなリアルな質感と、細やかな凹凸加工で、高級感のあるお部屋を作ってくれます。撥水加工で水や食べ物をこぼしてもサッと拭くだけできれいに。2畳タイプも選べます。
・サイズ:1枚あたり 約W609×D304×H4mm ※多少サイズは前後します
・素材:PVC(グラスファイバー入り)
・入数:1ケースあたり54枚(約6畳分)
・備考:撥水加工、土足OK

 

toolbox 無垢床タイル ヒノキ
9075円 / m2(税込)
木の本来の香りと温もりが感じられる、国産無垢のヒノキ材で作られた床材。50cm角のパネル状にカットされており、釘やボンドを使うことなく、敷くだけで設置が可能です。退去の際は床を外すだけ。次の入居先でも再利用でき、無垢材ならではの経年変化も楽しめます。
・サイズ:W500×H500×T13.5mm
・素材:ヒノキ節あり(間伐材)
・仕上げ:無塗装
・入数:1ケースあたり2 m2 (8枚入り)
・備考:床暖房不可

床を貼り替えるだけで、部屋の印象も気分もきっと変わるはず。自分に合った方法と、ときめく床材を見つけて、DIYライフにチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

 

プロフィール

一級建築士 / 小野寺郷

株式会社天然住宅所属。「森を守って健康長持ち」をコンセプトに、建築設計を行っている。手掛ける建築は戸建て住宅の新築をはじめ、マンションや施設のリノベーション、ホールやギャラリーなど、多岐にわたる。
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