高画質な大画面テレビを、手に取りやすい価格で提供することで存在感を高めているTCL。2025年末にはエアコンを発売するなど白物家電も展開していますが、実は本国である中国やグローバル市場ではこのエアコンでも大きなシェアを獲得しています。
今回、エアコンを製造する拠点として、広州に開設された「スマート工場」の内部を見せてもらうことができたので、その様子をレポートします。
目次
7秒に1台のペースで生産する拠点
日本で発売されたエアコンは「AI節電シリーズ」と呼ばれるエントリーモデルです。AIが温度変化を先読みして運転を自動で最適化する「AI節電」機能を搭載し、過度な除湿や温度ムラを防ぎ、快適さを保ちながら無理なく節電につなげられます。
本体が吹き出す強い冷風を和らげる「優しい風フラップ」の搭載も特徴のひとつ。フラップを通ることで、そよ風のような心地よい風が届きます。

ラインアップは下記にまとめます。このうち6畳用モデルは「2027年度目標省エネ基準達成率」が100%と、新基準をクリアした省エネモデルになっています。
6畳用「TAC-P2225I-W」(実売で税込約70,000~85,000円)
8畳用「TAC-P2525I-W」(実売で税込約80,000~89,000円)
10畳用「TAC-P2825I-W」(実売で税込約99,000円)
14畳用「TAC-P40252I-W」(実売で税込約119,000円)
取材したスマート工場は2026年に運用を開始したばかりの拠点です。日本で販売されているAI節電シリーズを含め、年間で800万台を生産できる能力を持っています。また、無人で運用している「ダークファクトリー」と呼ばれるエリアが3棟あるほか、15の研究所も敷地内にあります。


生産ラインでは複数のロボットとAIを活用。多数の軸で稼働するロボットや2000以上のAIエージェントによって、7秒に1台のペースでエアコンを生産できます。
AIで睡眠環境をよくしたり、音声制御できたりするTCLのエアコン
工場内ではTCLが展開しているエアコン製品の展示エリアから、部品の製造エリア、ダークファクトリー、室内機と室外機の組み立てラインまでを見学しました。




展示エリアを抜けると、製品の品質テストを一部公開するゾーンが続きます。


ほとんど人がいない製造エリアに、まったく無人のダークファクトリー
部品の製造エリアでは多軸で動く複数のアームロボットが部品を供給し、別のアームロボットは部品を加工していました。また、廊下を素早く動くロボットも稼働。できあがった部品を別の場所へ運ぶ役割を担っているそうです。



奥へ進むと24時間稼働している無人のダークファクトリーに続きます。ここでは、プラスチックを溶かして金型に流し込んだあとに冷却して固める射出成形機が10台あり、室内機のベースや中間フレーム、パネル、ルーバーなどを製造。原材料の投入から組み立てラインの最終工程まですべてのプロセスを自動化しています。


AIが管理し、ロボットが稼働する組み立てライン
フロアをひとつ上がり、次に見たのは室内機と室外機の組み立てラインです。





ダークファクトリーだけでなく、見学したエリア全体を通して人が少なかったのは印象的です。見学の途中、AIが工場の状態を分析している巨大なスクリーンを見ることもできました。そこでは製造プロセスの制御状況、サプライチェーンの状態や工場の稼働効率、在庫状況と出荷に関するデータ、リアルタイムで分析する現場の稼働状況などが表示。生産工程の全体をAIが管理していることがわかり、人の少なさにも納得できます。

日本市場向けのエアコンは「開発を続ける」
ここまでAIとロボットに製造を任せられるのは、高い技術力の表れといっていいでしょう。またその工場で作られた製品も含め、TCLのエアコンは世界のエアコン輸出量で第2位と、大きなシェアを獲得しています。たとえばフランスのパリでは熱波によって、特徴的な機能を持っているとしてTCLのエアコンに人気が集まったそうです。
ただ、日本においてはそうした技術力や製品力の一部が展開されるにとどまっています。そこで最後に、TCLにおけるエアコンの位置付けと日本での今後の展開を見ていきましょう。
TCLのブランドマネージメントセンターに所属するマタさんによると、現時点でメインのブランドはやはりテレビになるとのこと。ですが、テレビの次に挙げられるのはエアコンだそうです。

スマート工場の中核を担うAI管理や、エアコン自体に採用されたAIなどが技術の革新を担っており、TCL内部でも「スターになる」要素を含んでいると期待をにじませます。
日本への展開については、TCL実業ホールディングスの左波さんと張国栄さんが回答。やはりいまのメインはテレビとしつつも、エアコンなどの多様な家電を展開して、「一体化したソリューションを提案。より良い成績を残せることを期待している」としています。


また「エアコンについては(ユーザーが)爽やかな風を体感できるよう、より良い空気を提供するために製品を投入し続けている。ほかのカテゴリも含めて、これから日本市場にはこれまでの原則に基づいて開発を続ける」とのこと。
これまでの原則というのは、テレビを日本に投入し続けてきた結果、世界と日本では市場環境に違いがあり、そこを理解したうえで製品を展開する必要があることを指しています。エアコンにおいても、日本のユーザーが求めていることを把握したうえで製品を開発していく、と捉えていいでしょう。