グルメ
2024/3/20 19:30

焼き魚はフライパンで10分!干物・切り身・一尾の間違いない焼き方を料理人が解説

魚は良質なたんぱく質源であるうえに、魚の油には体内では作ることができないDHAやEPAが含まれ、生活習慣病の予防効果も期待できます。そのためたんぱく質源は肉に偏るのではなく、積極的に魚の割合を増やすことが良いとされています。ところが調理するとなると、「煙や臭いが気になる」「後片付けが大変」などの理由で、敬遠されがち。魚を自宅でもっと気軽に、おいしく食べるにはどうしたらいいでしょうか?

 

長年日本料理店で日本料理を学び、現在はシェアダインで、プロの日本料理人として、多くの家庭に日本料理をふるまう、日本料理人・ジョージさんに、手軽に魚をおいしく食べる方法について教えていただきました。

 

手軽に焼き魚にチャレンジするにはフライパン一択!

日本人の肉の消費量は、2010年を境に魚介類の消費量を上回っています。このことからも、料理のメインが肉に偏りがちであることが窺えます。魚を上手に摂取するにはどうしたらいいでしょうか?

 

「旬の魚を、“焼き魚”で食べる方法がおすすめです。つまり、塩で焼いて食べるシンプルな料理です。魚を焼く方法は、魚焼きグリル、オーブン、フライパンなど、さまざまありますが、まずは手軽なフライパン調理がおすすめです。フライパンは魚焼きグリルなどの他の調理方法と違って、“目で見ながらの料理”ができるので、失敗しづらいのもポイントです」(日本料理人・ジョージさん、以下同)

 

魚焼きグリル、オーブン、フライパン…
調理方法はどれが正解?

「魚を加熱する方法は、全部で3つあります。魚焼きグリルなどの直火を使って焼く輻射熱、フライパンなどに熱を伝えて焼く伝導熱、煮たり、蒸したり、オーブンのように空気や水分を温めて熱を伝える対流熱です。魚焼きグリルを使えば、高温で短時間で調理ができるため、中はふっくら、皮はパリッと仕上げることができます。しかし、臭いや煙がしたり、網を洗ったりと掃除に手間がかかり、ハードルの高い調理方法でもあります。オーブンは、魚焼きグリルの高温調理に比べ、200度台と低いため、焼き上げるまでに時間がかかり、旨みや水分が抜け出やすいという心配があります。じっくりと火を通して行くため、大きな魚や、野菜などと一緒に焼く料理に適しています。フッ素加工のフライパンなら、魚焼きグリルで付ける立体的な焼き目には少々劣りますが、油を使用せずに、塩だけで、ふっくらジューシーな焼き魚を焼くことができます」

 

フライパン(伝導熱)
メリット……焦げにくい。魚の状態を見ながら、調理できるため失敗が少ない。片付けが楽。火が脂に直接当たらないため、煙が出にくい。
デメリット……両面を焼くために途中で返さなくてはならないため、返す際に皮や身が崩れる心配がある。魚焼きグリルの立体的な焼き目に比べると、鉄の板で押さえつけられたような平面的な焼き目になりやすい。

 

魚焼きグリル(輻射熱)
メリット……直火のため、高温調理が可能。短時間で表面に焼き目を付け、旨みを閉じ込める。皮がパリッと仕上がる。
デメリット……魚の脂に火がかかると煙が出るため、臭いや煙が発生しやすい。調理が見えないため、焦げやすい。

 

オーブン(輻射熱、伝導熱、対流熱の三種)
メリット……庫内の温度を高くし、じっくり火を通して行くので、大きい1尾の魚料理や、野菜などと一緒に火を通す料理に適している。
デメリット……時間をかけて調理するため、旨みや水分が抜けやすい。適度な焼き色が付きにくい。調理が見えないため、調整しにくい。

 

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焼き魚におすすめの魚や選び方のポイントは?

続いて、焼き魚にはそもそもどのような魚が適しているのでしょうか?

 

「これまでで一番感動したのは、“かます”の焼き魚です。私は宮城県出身で、さんまを昔からよく食べて来ました。もちろん、さんまもおいしいのですが、初めて関西で食べた旬のかますの焼き魚のおいしさは忘れられません。上品な味わいをとても鮮明に覚えています。また、ブリカマの焼き魚もおすすめです。焼くことで余分な脂が落ちたときのおいしさは格別。塩焼きは、魚をもっともシンプルにいただく方法なので、魚の味をしっかりと味わえます。ぜひ、鮮魚店に行って、そのときどきの旬のおいしさを試してもらいたいです」

 

 

続いて、魚の選び方について教えてください。

 

「焼き魚には、切り身より1尾を丸ごと焼くのがおすすめです。切ることで酸化しますし、加熱される表面積が増えるので水分を失う機会が増えてしまうためです。
しかし、ブリや鮭のように丸のまま焼くには大きすぎる魚は切り身を選ぶ方が多いでしょう。基本的には頭に近い部分が脂が乗っておいしいと言われています。例えばブリならば、黒い皮の背側の背身、白い皮の腹側の腹身と、部位別に売られています。背身は肉質が引き締まりさっぱりとした印象、腹身は脂が乗っていています。一方で、鰆(さわら)はしっぽ側がおいしいと言われています。魚の種類や、好みによって味は異なるので、ぜひさまざまな部位を食べてみて欲しいですね」

 

臭みの原因を取り除く!
おいしさを逃さず臭いを抑えるコツ

 

魚の臭いをおさえるコツはあるのでしょうか?

 

「魚の臭みの原因のひとつは、魚に含まれるトリメチルアミンという成分です。水溶性のため、あて塩をすることで、水分とともに臭みを引き出し取り除くことができます。また、血も臭みの原因になります。魚をさばいた後は、えらや内臓、血をよく取り除きましょう。切り身の魚は、洗うと旨みが落ちるので、洗わず血などがついている場合は、軽くふきとるなど、事前の処理が肝心です。熱湯をかけて余分な臭みや脂を流すことを“霜降り”と言いますが、気になる方は焼く前にこれをするだけで、グッと臭いを軽減できます」

 

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フッ素加工タイプなら油も不要!
フライパンで焼き魚をおいしく焼くコツ

魚をフライパンで焼くなら、フッ素加工などのくっつきにくいフライパンがおすすめです。フッ素加工のフライパンを使えば、油も酒も一切不要。塩のみで焼き魚を調理できます。1尾なら約10分ほどで、切り身なら10分かからずに焼くことができます。

 

・余熱調理でふっくら「干物」の焼き方

「干物は、水分が抜け旨みが凝縮されているとともに、臭いが気になりやすい魚でもあります。焦げ付きは臭いの原因となるので、焼きあげる最後は、蓋をして水分を逃がさないように、余熱調理するとよいでしょう」

 

【材料(1人分)】

・干物……1枚

 

【焼き方】
1.フライパンを中火で熱し、盛り付ける側を下に、4~5分焼く。

「初めに、フライパンに焼かれる側の方がきれいに焼き目がつくので、盛り付ける表側を下にして焼きます」

 

2.腹側の身の薄い部分が、半分ほど白くなってきたら、裏返し3~4分焼く。

「皮の下から段々と白くなるのが見えます。身の薄い部分、全体の5割程度が白くなったら、裏返してOKのサインです」

 

3.9割ほど火が通ったら、アルミホイルや蓋で蓋をして、火を消し1分ほどおく。

「干物は、既に水分が抜けているので、火を入れすぎてしまうと固くなってしまいます。最後の火入れで、水分が抜きすぎてしまわないよう蓋をし、余熱調理で仕上げます」

 

4.皿に盛り付け、好みであしらいを添える。

「皮側を初めに焼いているので、皮もパリッとおいしく召し上がれます。そのまま、皮も食べると良いでしょう。花のような形をしたふきのとうの天ぷらは、黄緑色がとても鮮やか。独特な香りと苦みが特徴で、春の訪れを感じさせてくれます」

 

・触らず、ほうっておくだけ「切り身」の焼き方

「切り身は、切り口の面積が多いため、そこから水分や旨みが抜けでてしまいやすいです。しっかりと焼けているか気になって、動かしたり裏返したり、触ってしまいがちですが、裏返すタイミングが来るまで、触らずにほうっておくのがベストです」

 

【材料(1人分)】

・鯖……1枚
・塩……1g

 

【下ごしらえ】
半身を買って来た場合は、骨の近くに包丁を入れ、背骨と中骨を取り除き、魚の切り口が見えるよう斜めに包丁を入れ、切り分ける。

 

「魚を半身のまま購入した場合、切り分ける時のコツは、盛り付けたときに切り口が綺麗に見えるよう、皮に対して斜めに切りましょう。料理は目でも味わうため、盛り付けたときの見栄えも意識することが大切です」

 

【焼き方】
1.裏表にまんべんなく塩をし、10分置く。

「あて塩をすることで、余分な水分とともに魚の臭みを表面に浮き出させます。塩は、精製塩よりも自然塩がおすすめ。塩以外のにがり成分にも、臭みを吸着する効果があるためです」

 

2.キッチンペーパーで、しっかり水分を押さえる。

「滲み出た水分をしっかりふき取ることで、臭みの原因を除去します」

 

3.フライパンを中火で熱し、盛り付けたときに表となる側を下に置き、3~4分焼く。

「切り身は、骨が無いものが多く崩れやすいので、触らないことが鉄則です。フライパンは、中火であれば焦げ付くことはほとんどないため、火が通るのを慌てず待ちましょう」

 

4.フライパンに当たっている身の部分の約半分ほどが白くなったらうら返す。

「火が通ってくると赤い身の部分にも脂が浮き、テカテカしてきます」

 

5.2~3分ほど焼いたら、アルミホイルや蓋でふたをし、火を止めて1分ほど余熱調理をする。

「最後は干物と同じく、熱の入れすぎで余計に水分を奪ってしまわないよう、余熱調理でじんわり火を通します」

 

6.皿に盛り付け、好みであしらいを添える。

「大根おろしと、細かくきざんだ金環を和えたおろし和えを山高に盛り付け、切り身をのせることで立体的に盛り付けました。おろし和えに味付けはしていません。みょうがは、そのままでは苦いので、軽く茹でてだし酢に漬けています」

 

丸のままも、約10分で焼ける!「一尾」の焼き方

「鯵の旬は夏ですが、一年中出回る魚です。丸のまま焼くのに適したサイズのため、ぜひ一尾で焼いてみましょう。フッ素加工が施されたフライパンを使えば、油も必要ありません。調味料も塩のみで手軽に焼くことができます。魚屋には、旬の魚が一尾のまま売られています。ぜひ旬の魚の丸焼きにも挑戦してみましょう」

 

【材料・1人分】

・鯵……1尾
・塩……3g

 

【下ごしらえ】
内臓とぜいごを取り除きます。血が臭みの原因となるため、よく洗い流します。

 

【焼き方】
1.裏表にまんべんなく塩をし、10分おく。

「鯖と同様に、魚の臭みをとるため、しっかりとあて塩をします」

 

2.キッチンペーパーで、しっかり水分を押さえる

 

3.魚の内臓にも、塩をします。

「味付けのための塩をします」

 

4.フライパンを中火で熱し、盛り付けたときに表となる側を下に置き、5~6分焼く。

「表面にあるたんぱく質を焼いて固めることで、旨みや水分を守ります。フライパンがしっかり温まったかを確認してから、魚を入れましょう。フライパンの上に、手をあて温かさを感じればOKです」

 

5.魚を立てて、フライパン側の魚の目が白くなっていたら裏返し、さらに3~4分焼く。

「一尾は身が見えないため、魚の目を見ることで火が通っているかを判断するとよいでしょう。その他、焼き始めは、水分が多いためジュ―ッと水分が蒸発した音が聞こえるのですが、焼きを進めていくと、そういった音も静かになります。音に注目するのもひとつの手です」

 

6.アルミホイルやふたなどで蓋をし、火を止めて、1分ほど余熱調理をする

「中火のまま焼き上げてしまうと、水分が抜けすぎて、固くなってしまう場合があります。そのため、9割ぐらい火が通ったら、残りの1割は余熱調理に切り替えます。じんわり火を通すことで、しっとり仕上げられます」

 

7.皿に盛り付け、好みであしらいを添える

「魚は、頭を左に向くように盛り付けるのが一般的です。その他のあしらいは、どのように添えれば、メインである魚が引き立つかを考えて盛り付けるとよいでしょう。おろし合えは山高に盛り付けると、高低差が出て品よく見えます」

 

煙やニオイ、後片付けも悩みナシ! フライパンで調理する「サンマ」レシピ 4品

 

見た目にも華やか、消化を助け栄養価もアップする
“あしらい”とは?

「焼き魚を焼いたら、ぜひ添えて欲しいのが“あしらい”です。焼き魚だけだと、全体が茶色っぽく、地味に見えてしまいますが、旬の野菜を使った“あしらい”一つで、料理の味や香り、見た目がグッと引き立ちます。特におすすめなのが、酸味のあるトマトや柑橘に、大根おろしを和えたもの。味付けの必要はありません。大根には消化酵素が含まれており、魚の消化を助けてくれる役割があります。また、臭みは酸によって中和されるため、魚の臭みを消す効果も。焼いて凝縮された魚の旨みに、大根おろしのさっぱり感と柑橘の酸味が加われば、より箸が進むことでしょう」

 

調理中の煙や臭いを除去!
煙や臭いを抑える「マルチロースター」

象印マホービン
『マルチロースター』(EF-WA30)

 

煙や臭いを抑える「高性能触媒フィルター」を搭載した象印の「マルチロースター」は、魚はもちろんのこと、肉や野菜など、多彩なグリル料理を楽しめる商品です。
ワイドな庫内では、35cmのサンマを3尾丸ごと焼くことができ、上下に設置されたヒーターで熱を加えることができるため、裏返す手間も不要。誰でも簡単に、皮はパリッと、中はふんわりとした焼き魚に焼き上げます。蓋や網などの取り外しも簡単で、部品の丸洗いも可能。臭いや煙を気にせず調理したい人におすすめの家電です。

 

 

旬の魚は脂が乗り、シンプルに塩焼きにするだけで絶品だというジョージさん。さらに、あしらいを添えれば、焼いただけとは思えないほど、華やかな食卓を演出してくれるとお話ししてくれました。魚屋さんに足を運んで、旬の魚を選ぶのも楽しいものです。手軽なフライパン調理で、ぜひ焼き魚のシンプルなおいしさを味わってみてください。

 

 

Profile

日本料理人 / ジョージ

日本最大級の出張シェフサービス「シェアダイン」で、日本料理を提供する日本料理のシェフ。お客様から約1000もの高評価をいただく人気シェフでもある。懐石料理、割烹、ミシュラン星付き店にて、技術を研鑽。日本料理を継承し、おいしさを広める活動を行っている。得意料理は、日本料理、あんこ料理。
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