ライフスタイルの変化ととともに、移り変わる消費者ニーズ。そしてそれに応えるように、年々進化を続けているアイテムのひとつが家電です。機能面の向上はもちろんのこと、リビングに馴染むデザインを取り入れたり、お店の味を楽しめるミールキットと調理家電を連携させたり。さまざまな角度から私たちのくらしをサポートするべく進化しています。
2022年、家電はどのような進化を遂げるのか? アイテム情報雑誌『GetNavi』の編集長として、そんな昨今の家電事情をウォッチしている川内一史編集長に、10個のトレンドキーワードに分けて解説していただきます。
1.高機能ほったらかし調理家電
在宅時間の増加により、食材を入れてスイッチを押すだけで本格的な料理が完成する自動調理家電が、ぐんと販売数を伸ばしています。川内さんによると、自動調理、すなわち“ほったらかし”でも料理が完成する調理家電は、第三次ブームに突入しているそうです。
「ほったらかし調理家電の第一次ブームは、2013-14年。象印マホービンの自動圧力IH鍋が市場を開拓し、シャープの『ホットクック』がそれを拡大させました。第二次ブームは、コロナ禍の在宅時間増加で市場が盛り上がった2020年です。そしてその盛り上がりを受け、いま各メーカーが改良機種を続々と発売し第三次ブームを迎えています。自動調理機能が強化されているだけでなく、小型化させたりデザイン性を高めたりと各社独自の付加価値が付いています」(GetNavi編集長・川内一史さん、以下同)
象印マホービン「STAN.自動調理なべ EL-KA23」
実勢価格3万3000円(税込)
自動調理なべのメインユーザーである30〜40代が求める「利便性」に特化させるため、加圧機能を排除することで低価格を実現。内蔵しているホーロー鍋は鍋単体で直火にかけることも可能。専用のフタをかぶせれば、料理ごと冷蔵庫に入れられます。
シャープ「水なし自動調理鍋『ヘルシオ ホットクック』」
KN-HW24G(2.4L/2人~6人用)実勢価格7万7000円(税込)
KN-HW16G(1.6Lタイプ/2人~4人用)実勢価格6万6000円(税込)
独自のかきまぜ機能の最大回転スピードが約2倍にアップ。加熱時以外でもかきまぜ機能を使えるようになり、ポテトサラダやコロッケの具を作るときのじゃがいもを茹でてから潰すまでの工程や、オープンオムレツを作るときの卵を溶いて焼き上げる工程なども自動でできるように。さらに、AIoT機能も強化。テーマごとにメニューを登録できる「クックリスト」機能や、ユーザーごとにおすすめメニューを提案する「使いこなし応援」機能が追加され、メニュー選びに悩んだときにも重宝します。容量はそのままにサイズが小さくなったのもポイント。
シロカ「おうちシェフPRO SP-2DM251」
実勢価格1万5800円(税込)
独自の「スマートプレッシャー技術」を新採用し、業界最高クラスの高圧力を実現。食材のおいしさを最大限に引き出しながらも、自動減圧により調理時間が短縮されました。圧力調理、無水調理、蒸し調理、炊飯、スロー調理、温め直しに加え、低温調理や炒め、発酵、好みの温度に設定する温度調理といった10通りの調理が可能に。「かしこい予約プログラム」を使うと、予約調理のスタート後すぐに加熱が始まり、菌の繁殖しにくい温度が維持されるので、食材が傷みやすい時期の長時間予約も安心です。
2.食材キット×調理家電
“おうちごはん”にこだわる家庭が増えるなか、プロの味を自宅で再現できる「食材キット」と「調理家電」のコラボサービスが注目を集めています。
「2021年6月にパナソニックが始めた調理家電のレンタルと食材配送サービスを掛け合わせたサブスク『Foodable』が計画比3倍のヒットを記録。シャープのヘルシオとホットクック専用の食材宅配サービス『ヘルシオデリ』もコロナ以降登録者数が大幅に増え6万人を突破しています。ユーザーとメーカーが直接つながる、新しい家電のあり方を感じますね」
パナソニック「foodable」
全コース月額3980円(税込・送料込)※画像はおうちでグランピング燻製コース
同社の新品家電をレンタルしながら食材のデリバリーを楽しめるサービス。「スモーク&ロースター」×燻製用食材、「オーブントースター ビストロ」×冷凍パン・パン生地セットなど、9種類のコースから選べます(各コース最低利用期間あり)。
シャープ「ヘルシオデリ」
同社のウォーターオーブン「ヘルシオ」と自動調理鍋「水なし自動調理鍋『ホットクック』」専用の料理キット宅配サービス。届いた食材と調味料のセットを対応家電に入れてボタンを押すだけで、本格的な料理が完成する手軽さで人気です。名店監修のメニューも多数。
※販売メニューは随時変わるため、写真のメニューの取り扱いが終了している場合もあります。
3.部屋なじみホットプレート
家族で食卓を囲んで調理から食事まで楽しめる、いわば“団らん家電”とも呼べるホットプレート。2020年には、「ホットプレートごはん」がクックパッドの「食トレンド大賞」を受賞するなど、ここ数年人気を集めています。利用頻度の増加とともに、使ったあと見える場所に置いたままにしても気にならないデザインのものが増えています。
「昨年登場しクラウドファンディングで話題になったアビエンの『マジックグリル』は、3mmというプレートの薄さや油がほとんどいらない、丸洗いできるなどの機能性が注目されていましたが、ホットプレートに見えないスタイリッシュなデザインも話題でした。使用頻度が増えれば、使うたびに戸棚の奥にしまうのは面倒くさいと感じるのは当然ですよね。ホットプレート料理のブームを受け、見える場所に置いても気にならない、おしゃれなデザインの製品が増えています」
エレコム「HOT DISH」
2万1780円(税込)
耐久性と熱伝導性に優れた焼きプレートと、プレートを均一に加熱できるIHクッキングヒーター、フタがセットになったお皿のような佇まいのIHホットプレート。プレートに適度な深さがあり、焼き・炒め調理だけでなく茹で・煮込み・蒸し調理にも対応します。
4.お手軽本格ティータイム家電
自宅で仕事をする人が増えたことで、コーヒーマシンを導入する人が増えるなど、仕事中や休憩タイムのお供として、飲み物にこだわる人が増えています。それを受け、コーヒー以外の飲料用家電にも面白い製品が登場しているそうです。
「自宅で淹れるのが難しい本格的な抹茶を手軽に楽しめるマシンや、湯沸かしとお茶の抽出の両方ができる電気ケトルなど、ティータイムを気軽に楽しめるアイテムが登場しています。これまで飲料用家電市場はコーヒーを淹れるための商品か炭酸メーカーが主でしたが、多様化を迎えている気がしますね」
World Matcha「Cuzen Matcha」
3万3000円(税込)
本体に専用の茶葉をセットしてボタンを押すだけで、挽き立て&淹れ立ての抹茶が完成。ストレートだけでなく抹茶ラテや抹茶トニックなども楽しめます。茶葉を本体内で粉砕するため、粉が飛び散らず片付けも楽チン。専用リーフは有機JAS認証を受けた100%オーガニックの茶葉のみを使用しています。
ティファール「テイエール 1.5L」
実勢価格1万4100円(税込)
取り外し可能な茶漉しに緑茶や紅茶などの茶葉を入れて、ティーポットとしても使える電気ケトル。沸かしたお湯をティーポットに移すという手間を省けます。紅茶を淹れたあとにフルーツを加えて煮出し、フルーツティーを作ることも可能。飲み物に合わせて温度を7段階に設定できるのもポイントです。
5.マイスペック調理家電
多機能な家電が増える一方で、結局使いこなせていないという声も少なくないそう。それを受け注目を集めているのが、機能をしぼったシンプルな家電です。
「最近は、家電の高性能化と並行して、単機能モデルに回帰する動きも感じられます。その流れを汲み、基本機能のみを搭載し、購入後にアプリなどから必要な機能だけを追加できる調理家電が登場しています。“フルスペックよりもマイスペック”がコンセプトで、この流れは調理家電以外にも広がっていきそうです」
パナソニック「IoT対応オーブンレンジ『ビストロ』NE-UBS5A」
実勢価格6万5000円(税込)
レンジとオーブンの基本機能を搭載し、付属品は角皿(オーブン皿)のみ。必要に応じて焼き物や揚げ物ができる「グリル皿」や蒸し料理ができる「スチームポット」を買い足し、専用アプリから機能をアップデートすると、対応できる調理法を増やせます。アプリで興味のあるキーワードを選択すると、自分に合ったメニューを提案してもらうことも可能です。
パナソニック「IoT対応IHジャー炊飯器『ライス&クッカー』SR-UNX101」
実勢価格4万5000円
スープや煮込み料理などを作れる、自動調理鍋にもなる炊飯器。強力な泡の熱対流でふっくらおいしいご飯を炊く「おどり炊き」にも対応。
6.インテリア家電
家で過ごす時間が増えたことで、以前よりも部屋の居心地の良さを大切にする人が増えました。ソファの座り心地や照明の明るさ、室温や湿度など、居心地を左右する要素は数多ありますが、目に入る風景をどうコーディネートするかも大切な要素です。家具や家電の使い心地はもちろん、“目に入る風景”も居心地の良さを極める要素のひとつ。それにより、“部屋になじむかどうか”を家電選びの基準の一つにする人が増えています。
「家具を選ぶときと同じように、家電にもデザイン性を求める人が増え、家電然とした製品よりも部屋になじむ見た目の家電が人気を集めています。なかにはパッと見ただけでは家電には見えないものも。家電込みで部屋の見た目をコーディネートする時代が来ていると言えそうです。また、コーディネートという点では、テレビの“定位置=壁際”という定説を崩し、室内コーディネートの自由度を高めてくれるテレビも注目ですよ」
日立「Chiiil」
7万6780円(税込)※GREENFUNDINGにて3月27日までクラウドファンディング中
キッチン以外の部屋に置いたり複数台を組み合わせたりと好みに合わせて自在に使える小型冷蔵庫。インテリアショップACTUSとコラボレーションし、あらゆるテイストの部屋に合うようカラバリを10色も揃えます。3段階に調整できる冷蔵温度に加え、セラー温度(約8℃、約12℃、約16℃)にも対応。
ブルーエア「Blueair DustMagnet」
実勢価格6万2700円(税込)~
ボディにファブリックをあしらった空気清浄機。同社初の「DustMagnetテクノロジー」を採用し、独自の気流と帯電されたプレフィルター、2か所の吸引口の組み合わせにより、空気中の汚れを効率的に除去できます。天面が小物を置くサイドテーブルとして使えるのもポイント。家具のような丸脚を備えています。
パナソニック「レイアウトフリーテレビ ビエラ TH-43LF1」
実勢価格24万4200円
キャスター付きスタンドを備えたモニター部と、2TB HDD内蔵のチューナー部を分離させることで、設置の自由度を高めた43V型液晶テレビ。“テレビを置く位置から決める”“テレビは壁際に置く”という、リビングの家具レイアウトを考える際の大前提を覆したことに注目です。チューナー部からモニター部への映像伝送は無線ながらも安定しており、4K映像にも対応。
7.自動ゴミ収集ドック搭載ロボット掃除機
掃除に割く時間を減らしてくれる、室内を自動できれいに保ってくれるという点で人気のロボット掃除機。もはや現代の三種の神器のひとつともいえる普及ぶりですが、構造上ダストボックスが小さく、スティック掃除機やキャニスター掃除機に比べてゴミ捨て頻度が高いという弱点がありました。しかし最近では、そんな弱点を覆すタイプが主流になってきているそう。
「掃除が終わったあとに本体に溜まったゴミを、自動で回収するゴミ収集ドックを備えたモデルが主流になっています。これにより、大半のモデルはゴミ捨て頻度が2か月に1回で済むようになりました。面白いのは、スティック掃除機でも本体とは別にダストボックスを備えたモデルが登場していること。自動ゴミ収集ドックが掃除機市場全体の常識になる日が来るかもしれません」
アイロボット「ルンバ i3+」
実勢価格7万9800円(税込)
掃除終了後に本体内のゴミをクリーンベース(自動ゴミ収集機)内の紙パックに自動で排出。間取り学習機能をカットするなどして、8万円切りという価格を実現しています。独自のゴム性のデュアルアクションブラシとパワーリフト吸引で、大きなゴミからハウスダスト、ペットの毛まで逃さずキャッチ。
エコバックス「DEEBOT T9+」
実勢価格12万9800円
最大60日ぶんのゴミを収集可能な自動ゴミ収集機を搭載。3000Paのパワフル吸引と振動式水拭きを同時に行えます。業界で初めて芳香剤を内蔵し、掃除をしながら部屋全体を贅沢な香りで包み込める機能を搭載しました。
ロボロック「Roborock S7+」
実勢価格12万9800円(税込)※ヤマダデンキ独占販売
世界有数のロボット掃除機メーカー「ロボロック」の吸引&水拭き対応モデル。最大毎分3000回の高速振動モップと従来機の2倍の加重で、こびりついた汚れも力強く拭き取ります。自動ゴミ収集が紙パック式とサイクロン式の2通りから選べるのも特徴。
パナソニック「セパレート型コードレススティック掃除機 パワーコードレス MC-NS10K」
実勢価格6万5000円
ダストボックスを本体からセパレートさせた新発想のスティック掃除機。掃除後のゴミがクリーンドックに収集されるので、スティック本体のゴミ捨てが不要になりました。ダストボックスがないぶん、本体は軽くてスリム。掃除機がけをよりスムーズに行えます。
8.換気機能付きエアコン
新型コロナウイルスの感染拡大により、定期的な換気の重要性は多くの人が知ることとなりました。そんな換気作業をエアコンが担えるようになってきています。
「エアコンの2022年モデルは、換気機能を備えた製品が豊富です。元々換気機能付きモデルを出していたダイキンにおいては、上位モデルまで登場しています。これらの製品により、窓を開けて外気を取り込まなくても室内の空気が入れ替わるようになるので、冬の換気で寒い思いをする必要がなくなりますよ」
ダイキン「うるさらX( Rシリーズ)」
実勢価格26万1800円(6畳程度用・税込)
従来の給気換気に加え、排気換気機能を新搭載。新鮮な空気を取り込みながら冷暖房できるだけでなく、夏は熱気を排出しながら冷房したり、部屋干しの湿気を排出したりできます。室内機には抗ウイルス作用のある集塵フィルターを採用。
パナソニック「Eolia LXシリーズ」
実勢価格34万1000円(6畳用・税込)
室外機に「換気・除加湿」ユニットを新搭載。冷暖房しながらの換気が可能なほか、外気水分で加湿する「吸水レス加湿」も行えます。冷暖房を行わずに換気だけを行うモードも搭載。新「ナノイーX」で室内空気の清潔さも維持できます。
9.骨伝導ヘッドセット
オンライン会議が一般化し、マイク付きのイヤホンやヘッドセットを使う機会が増えた人は多いでしょう。しかし、オフィスなど人がいる場所で耳を塞ぐタイプのイヤホンやヘッドセットを使うと、周りの音が聞こえず周囲の状況を把握しにくくなるのが難点です。その悩みを克服できるアイテムとして、骨伝導ヘッドセットが今後注目を集めると川内さんは言います。
「骨伝導イヤホンは骨を通して脳に音を届けるため、耳を塞がずに使えるタイプが主流で、周囲の音がシャットダウンされません。また、数年前の出始めのころよりも格段に音が良くなっているので、オンライン会議での相手の声もしっかり聞き取れます。これなら社内で装着しているときに、上司や同僚に声をかけられたり電話が鳴ったりしても気が付けます」
Shokz「OpenComm」
1万9998円(税込)
Qualcomm 3024チップと第7世代の骨伝導技術で、人間の声に最適な中高域の周波数をクリアに聞き取れるようにしたオープンイヤー型のヘッドセット。フルチタン製なので、軽量ながらもしっかりとした装着感です。DSPノイズキャンセリング機能付きのブームマイクは、口元から6cmの巨Rで声をしっかりキャッチ。
10.メタバース用デバイス
昨年のFacebookの「Meta(メタ)」への社名変更により一躍注目ワードに躍り出た「メタバース」。自分のアバター(分身)を作って自由に活動できる仮想空間のことで、ウェブに続く新しいインターネットの世界を生み出す試みとして注目されています。
「メタバースは開発と基盤の整備に長い時間がかかるので、いきなり大きく盛り上がるかわけではなく、5年、10年とかけて進化していくものです。ただ、ゲームや3Dでのチャット、オンライン会議などを通じて体験できるようになってきています。実際にそれらのサービスを利用できるVR用の機器が続々と登場しているので、せっかくならいまから少しずつ触れていき、メタバースが作り上げられていく過程を楽しむのがオススメです」
Meta「Meta Quest2」(256G)
4万9280円(税込)
世界トップシェアの完全ワイヤレスのオールインワン型VRヘッドセット。Facebook改めMetaが本気で資金と技術者を投入し、機能も日々アップデートしています。従来機から処理速度は2倍、解像度は1.5倍に向上。
HTC NIPPON「VIVE Flow」
5万9990円
マインドフルネスな生活のために作られた超軽量小型VRグラス。VR機器としては一際軽く、メガネのようにかけられます。映像視聴やゲーム、リラクゼーションに対応。ブルーライトフィルターを搭載し、就寝前にも使いやすい点が魅力です。スマホがコントローラー代わり。
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【プロフィール】
雑誌『GetNavi』編集長 / 川内一史
アイテム情報雑誌「GetNavi」の編集長。2012年より同誌の編集に携わり、2020年より編集長に就任。専門はオーディオ・ビジュアルだが、各編集部員が持ち寄るネタを全てチェックしているため、オールジャンルのトレンドにも精通。最近は「家事ヤロウ」(テレビ朝日)、「ラヴィット」(TBS)など地上波テレビの情報番組にも出演多数。