Vol.165-3
本連載では、ジャーナリスト・西田宗千佳氏がデジタル業界の最新動向をレポートする。今回はサムスンが発売した「Galaxy」の2つ折りスマートフォンの話題。開いたときの縦横比が4:3のモデルを登場させた狙いは何か。
今月の注目アイテム
サムスン
Galaxy Z Fold8
26万9880円(256GB/12GB)~

折りたたみスマートフォンの課題は価格だ。ディスプレイやヒンジをはじめとした高価な部材を使う複雑な機構を持つ製品なので、どうしても価格は高くなる。
価格が高いということは売れにくいということだ。日本の調査会社であるMM総研によれば、2025年に全世界で出荷されたスマホ(12億台以上)のうち、折りたたみスマホはわずか1.4%だった。日本においても、2025年の販売台数は33.4万台にすぎず、全体に占める割合は1.1%にとどまる。
MM総研は、「2026年に折りたたみスマホの出荷台数は倍増し、2030年代には国内で153万台まで拡大する」としている。しかしそれでも、年間3000万台規模の国内市場において、ようやく5%に到達するかどうか、という水準なのである。
以前、若年層向けにYouTubeなどでコンテンツを作っているクリエイターに聞いたことがあるが、彼は「折りたたみスマホは絶対に扱わない」と言っていた。なぜなら高すぎるために、10代・20代にとっては「縁遠く、自分たちには関係のない存在」だと思われているからだ。「自分たちには関係がない」と思われると動画を見てもらえず、実際「離脱率は非常に高い」という。そのため、動画では扱わないのだという。
今後、折りたたみスマホを普及させるには、「これはほしい」と思ってもらうことが重要だ。高価な製品でも「価値がある」「使ってみたい」と思う人がいれば、相応に売れていく。「持ちたくない」「価値がわからない」と思われないように意識を変えていくことが欠かせない。多くのメーカーが折りたたみスマホ市場への参入機会を狙うのも、アップルやサムスンによる本格的なプロモーションで、折りたたみスマホに対する注目度や印象が変わると見込まれるためだ。
同時に、やはり価格は大事だ。価格を下げるのは簡単なことではないが、いろいろな販売上のテクニックを活用し、消費者にとっての負担を減らす流れがある。
まず、携帯電話事業者との連携だ。
例えば、モトローラの「motorola razr fold」は本来29万9800円と高価だ。しかし、仮想移動体通信事業者(MVNO)大手の「IIJmio」では、ほかの携帯電話事業者から乗り換えることで、最大10万円の値引きを行う。別売りの純正スタイラスペン(1万2000円相当)もセットになるので、実質11万円を超える値引きになる。
このような「契約に基づく大幅な値引き」は、大手携帯電話事業者(NTTドコモ・KDDI・ソフトバンク・楽天モバイル)に対しては認められていない。しかし、回線を借り受けてビジネスをするMVNOの場合には、大手4社との競争上、値引きに対する規制がない。そのため、こうした大胆な値引きも可能になる。MVNOは大手4社に比べて資金力で不利なため、ここまで大胆な値引きが展開される例は少ないのだが、今回は「折りたたみフィーバー」に乗っかる形で攻めてきたと言えそうだ。
サムスンも日本での販売価格の決定に際し、できる限り価格を下げる施策を講じた。ドルから円への換算レートをかなり有利に設定し、「1ドルあたり142円程度」としている。実勢レート(1ドル=160円)より低く、実質的に3万円近く値引きされていることになる。これに分割払いや古いスマホの買い取りなどを組み合わせ、購入者の初期負担や月々の支払額を抑えていくのが、現状の価格対策と言っていい。折りたたみ型独特のものというよりは、ハイエンドスマホの実質購入額を下げる一般的な施策というべきだろう。
では、折りたたみスマホはニッチなままなのだろうか。この状態が続くことを、サムスンなどはどう見ているのか。その点は次回解説する。
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