三菱自動車を象徴する「パジェロ」が、ついに新たな一歩を踏み出しました。2026年9月2日、4代目の登場から実に20年を経て、フルモデルチェンジした新型パジェロが世界初披露されたのです。
発表会場に足を踏み入れて、まず驚かされたのはその熱気でした。国内メディアはもちろんのこと、海外からも多数の報道関係者が集まり、会場はちょっとしたモーターショーを思わせるほどの賑わい。単なるニューモデルの発表ではなく、「PAJERO」という世界的なブランドが新しい時代を迎える瞬間に立ち会おうという期待感が、会場全体を包んでいたのです。


パジェロは名前の復活ではなく、三菱の新たなフラッグシップとなる
パジェロが初めて登場したのは1982年。本格的な悪路走破性と高い信頼性を持ちながら、乗用車としての快適性を融合したクロスカントリー4WDとして誕生しました。日本では1990年代のRVブームを牽引し、初代から4代目までの累計生産台数は329万台以上。170を超える国と地域で販売された、文字通り三菱自動車を代表するモデルです。
そして、パジェロを語るうえで欠かせないのがダカールラリーです。発表会でも7連覇を含む通算12勝という戦績が改めて紹介されました。極限状態のラリーで技術を鍛え、それを市販車へフィードバックしてきた歴史こそ、パジェロそのものを物語っているのです。
だからこそ今回の新型は、単なる懐かしい車名の「復活」ではありません。
三菱自動車が掲げる中長期ビジョンでは、「尖った商品・ブランドの強化により、お客様満足と企業価値の向上」をテーマに掲げています。その第一弾となるのが新型パジェロであり、岸浦恵介社長兼COOは発表会で「三菱自動車ブランドを牽引するフラッグシップモデル」と明確に位置付けました。

見逃せないのは、新型パジェロを頂点にコンパクトSUVやスモールSUVを加えた「パジェロシリーズ」へ展開する構想も明らかにされたことです。つまり新型パジェロは1台の新型車という以上に、これからの三菱自動車の方向性を示す存在としてデビューしたというわけです。

「上質さ」を加えて生まれ変わった新型パジェロ
新型で興味深かったのが、歴代パジェロが築いてきた価値を、明確に整理したことも興味深いポイントです。
悪路走破性と信頼性を意味する「Confidence」、快適性と扱いやすさを示す「Comfort」を継承し、そこへ新たにフラッグシップにふさわしい上質さ「Prestige」の3つ価値を掲げたのです。
その考え方は、実車を前にするとよくわかります。
デザインコンセプトは「グランドカリスマ」。初代から受け継いできた水平基調のスクエアなフォルムを基本としながら、張り出したフェンダーや立体的なボディによって力強さを表現。初代パジェロのロールバーをモチーフにしたCピラーなど、歴代モデルへのオマージュも随所に盛り込まれています。


一方で、特徴的なT字型ランプなどによって先進性も強調されました。発表会では「単なる復活ではない」という言葉が繰り返され、「独創進化」という考え方がデザイン開発の核にあったことも説明されました。
インテリアも大きく進化しています。水平基調のインストルメントパネルに、2枚の14.3インチ大型ディスプレイで構成するモノリスディスプレイを配置。歴代パジェロで親しまれた3連メーターも、高度計や方位計、温度計、車体の傾きなどを表示する現代的なマルチメーターとしてよみがえりました。



これまでのパジェロが「どこへでも行ける道具」だとすれば、新型はそこへ「所有する満足感」を加えたクルマといっていいでしょう。




ラダーフレーム+SS4-IIに、ついにS-AWCを採用
もちろん、パジェロの本質である4WD性能に妥協はありません。
基本骨格には高剛性ラダーフレームを採用。フロントはダブルウィッシュボーン式独立懸架、リアには新開発の5リンク式リジッドサスペンションを組み合わせました。



さらに今回、開発陣が強調していたのが「悪路快適性」です。単に悪路を走破できるだけでなく、荒れた路面を長時間走っても乗員が快適でいられることを開発指標として設定したといいます。この走りはぜひ体験してみたいですね。
パワートレインには専用開発の2.4Lクリーンディーゼルを搭載し、新開発のスポーツモード付き8速ATを組み合わせます。最高出力は150kW(204PS)/3,500rpm、最大トルクは480Nm(一部仕様470Nm)です。

そして注目したいのが4WDシステムです。
歴代パジェロの大きな特徴だった「スーパーセレクト4WD-II(SS4-II)」を継承。2H、4H、4HLc、4LLcの駆動モードをドライバーが任意に選択できます。そこへ新たに車両運動統合制御「S-AWC」を採用しました。AYC(アクティブ・ヨー・コントロール)やASTC(アクティブ・スタビリティ&トラクションコントロール)、ABSなどを統合制御することで、悪路に加えて舗装路や雨、雪といった幅広い環境で4輪の能力を引き出すことを可能としました。

つまり、昔ながらの「頑丈な本格4WD」に、先進的な車両制御を組み合わせたのが新型パジェロなのです。
タイ仕様と豪州仕様から見えた「世界のPAJERO」
今回のワールドプレミアで印象的だったのが、単一仕様を展示していただけではなかったことです。
会場にはタイ仕様に加えて、アクセサリーを装着した豪州仕様も展示されました。なかでも豪州仕様はフロントガードを装備した姿が圧巻。都会的なプレミアムSUVが増えるなか、「パジェロはやはりオフロードが似合う」と改めて感じさせる仕立てでした。

新型は2026年度に生産拠点であるタイを皮切りに日本、オーストラリアへ投入し、次年度以降はASEAN、中南米、中東など世界約100か国へ順次展開する計画です。
その意味でもタイ仕様と豪州仕様を並べた展示は、最初から世界を見据えて開発された「グローバル・パジェロ」であることを象徴していたように思えます。
歴代パジェロからAXCRマシンまでそろった“パジェロ祭り”
イベントの見どころは屋内に留まりませんでした。
会場の外には初代から4代目までの歴代パジェロが勢揃い。20年ぶりの新型を前に歴代モデルを振り返ることができる演出は、長年のパジェロファンにはたまらないものでした。

さらにAXCR(アジアクロスカントリーラリー)仕様の新型パジェロとトライトンも展示。市販車としてのパジェロと、モータースポーツを通じて技術を磨いていく三菱自動車の姿勢を同時に見せる構成となっていました。

加えて、新型パジェロの4WD性能を体験できる登坂デモンストレーションも実施。専用キットの急勾配を登っていく体験コーナーが用意され、会場は終始活気にあふれていました。単なる車両展示ではなく、歴史、モータースポーツ、4WD性能をひとつのストーリーとして体感させる――まさに「パジェロの帰還」を祝うイベントだったといえるでしょう。


三菱自動車が再び「パジェロ」という名前を掲げて、世界の本格クロスカントリーSUV市場へ挑む。その新しい物語が、この日のワールドプレミアから始まったのです。