三菱鉛筆がドイツの老舗筆記具メーカーLAMYを創業家から買収し、完全子会社化したのは2年前のことだ。世界中の文房具好きが驚いた一大トピックだったが、それによって何かネガティブな影響があったかというと、少なくとも外から見える範囲では、いまのところそうしたものは見受けられない。LAMYも安定して事業を継続できているようだ。
それを象徴するように、2025年には、LAMYのアイコン的な筆記具シリーズ「LAMY safari」のボディに、三菱鉛筆の油性ボールペン「ジェットストリーム」を搭載した「LAMY safari JETSTREAM inside」が登場した。
40年以上にわたって愛され続けているLAMYの傑作デザインに、最強クラスのなめらかインクを組み合わせたこのモデルは、ファンの間で「まさに夢の筆記具!」として話題になった。
そして2026年は、その第2弾となる「LAMY safari KURUTOGA inside」が発売され、あらためて注目を集めている。

LAMY safariにクルトガを載せる意味
まず大前提として、LAMYのデザインは非常に人気が高い。だが、その中身や性能は、素直に言えば、かなり古い。 そもそも日本の文房具の進化スピードは、世界的に見ても異常なほど速い。だが、その進化の一端を担う三菱鉛筆が親会社になったことで、結果的に世界的なデザインと最先端の書き味が融合した……というのが、この買収劇における最大の眼目と言えるだろう。

今回取り上げる「LAMY safari KURUTOGA inside」(以下、LAMYクルトガ)は、その名の通り、三菱鉛筆の大人気シャープペンシル「クルトガ」のユニットを「LAMY safari」に搭載したモデルだ。
従来のLAMY safariのシャープは、1980年の発売以降、特に進化していない、いわばごく普通のシャープペンシルだ。対して、クルトガは発売から18年が経ったいまもなおブラッシュアップされ続けている、いわばシャープペンシル界のトップランナーである。性能面での差はかなり大きい。

三角グリップと芯回転機構のシナジー
クルトガといえば、書くたびに芯が9度ずつ自動回転することで偏摩耗を抑え、常に芯先を尖らせる機能が最大の特徴だ。芯先が鋭いまま保たれるため、筆跡の太さを一定に保つことができ、結果としてシャープで読みやすい文字が書ける。
そして、実はこの機能がLAMY safariのボディと非常に相性がよいのである。

LAMY safariのグリップは三角柱形状なので、指の置き位置が安定し、非常に握りやすい。その一方、偏摩耗を防ぐために自分で少しずつ軸を回す動作には向いていない。なにせ丸軸や六角軸と違って、三角グリップは一度回すだけで一気に120度も回ってしまう。これでは、偏摩耗しないように微調整するのが非常に難しい。
ところが、クルトガの機能なら、手の中で軸を回さなくても、芯だけが回転して自動的に尖ってくれる。

つまり、LAMY safariの握りやすさとクルトガの芯回転機構のいいところ取りなのだ。単に両者の人気モデルを合体させただけでなく、この組み合わせならではのシナジーがある。これは好相性と言って間違いないだろう。
KSタイプ採用で改善された筆記時のブレ
機構部分をもう少し詳しく解説しておこう。
LAMYクルトガに搭載されているクルトガエンジン(クルトガの回転機構)は「KSタイプ」と呼ばれるもので、近年では「クルトガメタル」「クルトガウッド」といったシリーズ上位機種にも搭載されている最新機構だ。

クルトガは、芯にかかる筆圧を回転する力に変換しているのだが、古いクルトガエンジンはこの動きが大きすぎて、書くたびに芯がカチャカチャとブレてしまっていた。このクルトガ独自のブレが苦手だという人も多く、実は筆者もその1人だった。
ところが、KSタイプの新しいクルトガエンジンは、芯の上下動をかなり抑制できており、ブレが以前よりも明らかに感じにくくなっている。

デザイン・握りやすさ・利便性の高い完成度
もちろん、じっくり確かめながら書くと、まだ微細なブレはある。それでも現時点では、ほぼ普通のシャープペンシルと変わらないレベルだ。それでいて、クルトガならではの芯の自動回転というメリットは享受できるわけで、使う価値はかなり高いように思う。

LAMYクルトガの全体的な印象としては、まずLAMY safariのビジュアルのよさと握りやすさ、そしてクルトガとしての利便性がうまくまとまっている、という感じだ。価格は従来のLAMY safari シャープより少し高めだが、クルトガ機構が搭載されていることを考えれば、むしろ安いくらいだろう。LAMY safariのデザインありきで購入するなら、現時点では従来モデルよりこちらのほうが圧倒的におすすめできる。