タイガー魔法瓶は9月8日、同社初となるグースネック型の「蒸気レス電気ケトル PCZ-A080」の新製品発表会を開催しました。発売日は10月1日です。実売予想価格は1万6800円(税込)。

グースネック型といえば、細長く曲がった注ぎ口を備え、ハンドドリップコーヒーを淹れるのに適したケトルとしておなじみです。後発となるタイガーが今回掲げたのは、「タイガー史上最高の注ぎ心地」。重心設計とノズル設計を組み合わせた「匠(たくみ)ドリップ」によって、「狙った場所へ狙った量のお湯を注ぐ」ことを目指しました。
実際のところ、どれほど注ぎやすいのでしょうか? 発表会で体験してきました。
「狙った場所に、狙った量」を実現する2つの工夫
ハンドドリップでおいしいコーヒーを淹れるには、単に細いお湯を出せればいいわけではありません。
発表会に登壇したUCCコーヒーアカデミー講師の福田雄也氏によると、お湯がコーヒーに触れる時間や通り抜けるスピードによって、抽出される成分が変わるとのこと。「勢いよく注いで粉を暴れさせると雑味を引き出しやすく、反対に細く丁寧に注ぐことで、コーヒー本来の甘みや香りを引き出しやすくなる」と説明します。

PCZ-A080で、その注ぎを支えるのが「魔法の重心バランス」と「美流(びりゅう)ノズル」です。
まず「魔法の重心バランス」は、その名の通り重心を工夫した設計。ケトルを持ち上げると自然と注ぎやすい角度へ傾き、手首のわずかな動きで湯量をコントロールできるとしています。
ポイントは、指1本でハンドルを持ったときに自然に傾く角度と、お湯が出始める角度を近づけていること。両者に大きな差があると、注ぎ始めるために手首でさらにケトルを傾ける必要があり、余計な力が入ってしまいます。
もうひとつが「美流ノズル」。独自の整流設計によってお湯の乱れを抑え、狙った一点へきれいな一筋の流線で注げるようにしています。
発表会ではさらに、ノズル先端の形状、先端の角度、水面から先端までの高さ、重心から先端までの距離という4つの要素を調整していることも明かされました。

実際に注いでみると、本当に余計な力がいらない
では、実際の注ぎ心地はどうでしょう。
筆者もPCZ-A080を使ってお湯を注いでみました。まず印象的だったのが、ケトルを傾けるのがラクなこと。余分な力を加えなくても自然と注ぎやすい姿勢になり、そのまま狙ったところへお湯を落とせます。
そして、注いでいる途中も水流がブレにくい。一定量のお湯を出し続けやすく、余計な力を入れてケトルを支えなくても湯量が乱れにくいと感じました。これなら、少量をポタポタと落とすところから、細い水流、さらにたっぷりとした水流までコントロールできます。

実は、この「細くも太くも注げる」ことには理由があります。
開発担当の赤穂 緑氏によると、コーヒードリップだけを考えるなら、細く出ることだけを重視すればいい。しかし、それでは例えばカップ麺に使いたいときにお湯が出にくくなってしまいます。

そこでPCZ-A080では、コーヒードリップがきれいにできることはもちろん、普段使いでもストレスなく注げるバランスを狙ってノズルを設計したそう。つまり、コーヒー専用の道具に振り切るのではなく、毎日の湯沸かしにも使いやすいグースネックを目指したわけです。

その考え方は0.8Lという容量にも表れています。
体験会で山﨑氏に聞いたところ、グースネックケトルの用途は「圧倒的にコーヒードリップが多い」としながらも、4人分のコーヒーをまとめて淹れたり、家族2人分のカップ麺を作ったりすることを考えると、0.8L程度がちょうどいい容量になるとのこと。
ドリップのしやすさを追求しながら、家族分のお湯も一度に沸かせる。PCZ-A080が日常の電気ケトルとしての使い勝手も重視していることがわかります。
UCCのプロが実演。注ぎ方だけでもコーヒーの味は変わる
発表会では、福田氏によるハンドドリップの実演も行われました。
ポイントのひとつが、最初の「蒸らし」。まずは最初に少量のお湯を粉全体へ均一にかけます。その後の抽出では、なるべく低い位置から中心の1円玉大ほどの範囲を目安に注ぎ、水流を一定に保つことが重要だといいます。これにより、ドリッパー内部の豆の層の厚さが一定になり、均一な味が引き出せるとのこと。

興味深かったのが、PCZ-A080の商品企画を担当した山﨑氏自身も、この淹れ方による味の違いに驚いたということです。

山﨑氏は、これまでは細口のケトルを使わず、普通のケトルで「バーっと」淹れていたそう。豆の量や蒸らしも、それほど意識していなかったといいます。
ところが、福田氏から教わった方法で淹れてみると、「味が全然変わったのでびっくりしました。注ぎ方でこんなに味が変わるんだなと、感動しましたね!」と話していました。
福田氏によると、「注ぐ勢いや場所が毎回変われば、出来上がるコーヒーの味も変わります。反対に、注ぎを安定させれば、味も再現しやすくなる」とのこと。また、細く注いだり、太く早めに注いだりと調整できれば、自分の好みに合わせた味も狙いやすくなります。
PCZ-A080の「匠ドリップ」は、上手に注ぐための操作をケトルの設計側からサポートする仕組み、と考えるとわかりやすいでしょう。
1人分なら約45秒。速さの秘密は「プリントヒーター」
もうひとつ、筆者がかなり魅力を感じたのが沸とうの速さです。
カップ1杯分となる約140mLなら、沸とう時間は約45秒。タイガーによれば、2026年9月8日時点の国内家庭用電気ケトルにおいて業界最速としています。
この速さを支えているのが、タイガー独自の「プリントヒーター」です。
一般的なシーズヒーターでは、ヒーター線の熱が鋳造アルミ、ステンレス底板を経て水へ伝わります。一方のプリントヒーターは、ステンレス底板に発熱体を直接設けることで、熱を効率よく水へ伝える仕組みです。

グースネック型では初の「蒸気レス」
さらにPCZ-A080は、タイガー調べで家庭用グースネック型電気ケトルとして初となる「蒸気レス」も実現しています。
これもプリントヒーターの採用と大きな関係があります。PCZ-A080では、発生した蒸気を分岐させず検知部へ導くことで素早く沸とうを検知。さらにプリントヒーターは蓄熱する部分が少ないため、電源が切れると沸とうも速やかに止まり、余熱による蒸気の発生を抑えられるといいます。
蒸気によるやけどのリスクを抑えられるほか、家具が濡れるのを気にしないでいいので、棚の下などにも置きやすくなるのがメリット。このほか、転倒お湯もれ防止構造、通電自動オフ、カラだき防止なども備えています。

毎日のドリップをもっと気軽にしてくれそう
筆者は普段から自宅でドリップコーヒーを淹れています。ただ、お湯はガスコンロで鍋を使って沸かし、それをコーヒー専用のドリップポットへ移してから注いでいます。
大した作業ではないのですが、毎回となると、このひと手間が地味に面倒です。PCZ-A080なら、お湯を沸かして、そのままドリップできる。しかも1人分のお湯なら約45秒で沸かせます。
そして実際に試してみると、「魔法の重心バランス」と「美流ノズル」は単なるネーミングではなく、余計な力を使わず、狙った場所へ安定した水流で注ぐための工夫であることが実感できました。
コーヒーを淹れようと思ってから実際に飲むまでの手間を減らしながら、ドリップそのものはきちんと楽しめる。蒸気レスで置き場所の自由度も上がるとあって、ドリップコーヒーを楽しむユーザーにとっては、大きなメリットだと感じました。
