キーワードからEVの現在、そしてこれからを見通す「EV事典」。今回はEVを電源として使う「V2H」や「V2L」の話題。EVはモーターを駆動するために大容量のバッテリーを搭載するが、そのバッテリーを蓄電池として使うことができるのだ。今回はその点を解説しよう。
野外や非常時でも家電が使えるEVが増えている
EVの魅力の1つにバッテリーから自宅や野外での電源として電力を供給できる機能がある。V2HやV2Lというものがそれだ。
V2Hは「ビークルtoホーム」の略。すべてのEVが対応しているわけではないが、車両のバッテリーに蓄えられた電気を充放電設備を使うことで、直接家庭用電源として使える。言わばクルマが家庭用の蓄電池になるのだ。

蓄電池は家庭用の大容量タイプでもおよそ10kWh程度。その点EVはモデルにもよるが、20〜70kWhが多く、中には100kWh以上のものもある。すなわち固定の蓄電池よりも多くの電力確保が可能。また仲介する充放電器は名前の通り、クルマへの充電機能も備わっている。
一般的な家庭の1日あたりの電力使用量は12kWh/日。クルマのバッテリーが満充電ならば、1日から4日間くらいは電力供給が可能とされる。群馬県前橋市の医療機関では、昨年のゲリラ豪雨による落雷でクリニック内の電源がダウン。重要な医療用機器は別電源だったものの、数時間は施設内のエアコンや電子カルテ、PCが復旧するまでそのまま使用できたという。まさにV2Hは災害時などに心強い。

加えてV2Hは太陽光発電と組み合わせるとエコ感がさらに増すのもポイント。太陽光で発電された余剰電力をクルマに充電し、夜間はそれを家屋に給電することでエネルギーの循環、つまりはエネルギーの自給自足につながる。
あるいは料金の安い深夜電力で車両を充電し、その電力を昼間に給電すれば、電気代の節約にも一役買うことは間違いない。V2Hに必要な充放電器は、自宅や職場など導入にあたり補助のある自治体もあるので、要チェックだ。
EVの電気は移動式電源としても使える!
もうひとつのV2Lは「ビークルtoロード」の略で、家電製品に給電を行うこと。移動式電源としても使えるのはEVならではだろう。一般家庭用の電源としては、100VのACコンセントが思いつくはず。最近のEVは車内にコンセントが装備されているモデルも多く、これもV2Lの1つだ。
100Vのコンセントを持たないクルマや一部の対応車種には、車両の外部充電ポートに専用機器を繋ぐことで電気を取り出すことも可能。これはクルマの直流電流を交流電流へ変換し、多くの電気を供給できる方法だ。
V2Lはアウトドアでの調理家電や照明だけでなく、災害時の緊急電源としても有効。2019年の台風15号による千葉県の大規模停電の際、各メーカーが被災地にEVを派遣し給電している様子は、ニュースなどでも報道され、記憶にある方も多いはずだ。
近年ではV2G(ビークルtoグリッド)、V2B(ビークルtoビルディング)も実証実験が進む。いずれもEVを蓄電池として、電力の平準化を図るというもので、エネルギー効率が高められると期待されている。

「V2H」と「V2L」に適したEVはこのモデル
総電力量最大91kWhを生かして家庭に電力を供給

日産
アリア
667万5900円〜951万600円
日産BEVシリーズのフラッグシップであるアリアは2021年にデビュー。2025年末にマイナーチェンジし、フロントまわりのデザインの変更や新色が追加された。日本仕様のサスペンションは乗り心地を重視している。
SPEC【B9】●全長×全幅×全高:4595×1850×1655mm●車両重量:2060kg●パワーユニット:電気モーター×1●総電力量:91kWh●最高出力:178kW/6600~7200rpm●最大トルク:300Nm/0~4392rpm●一充電走行距離:640km(WLTCモード)


外部給電装置の給電コネクタでV2Lに対応

三菱
ek X EV
256万8500円~313万1700円
日産と三菱の合弁会社NMKVが手がけた、ekシリーズのEVモデルで、2022年にデビュー。サクラとは兄弟車であるが、SUV色を強く打ち出しているのが特徴。一充電走行距離は180kmで、普通充電と急速充電に対応。
SPEC【P】●全長×全幅×全高:3395×1475×1655mm●車両重量:1080kg●パワーユニット:電気モーター×1●総電力量:20kWh●最高出力:47kW/2302~10455rpm●最大トルク:195Nm/0~2302rpm●一充電走行距離:180km(WLTCモード)

2024年のアップデートでV2H対応に進化

メルセデス・ベンツ
EQA
777万円
EQAはメルセデスブランドのEVラインナップのエントリーモデルとして、2021年に登場。2024年にはデザインの意匠変更、クルマとしての基本性能の向上が図られたほか、V2HやV2Lへの対応もなされた。
SPEC【250+】●全長×全幅×全高:4465×1835×1610mm●車両重量:1980kg●パワーユニット:電気モーター×1●総電力量:70.5kWh●最高出力:140kW/3550~7000rpm●最大トルク:385Nm/0~3550rpm●一充電走行距離:591km(WLTCモード)

※「GetNavi」2026年5月号に掲載された記事を再編集したものです。