なぜ画面を汚さないのか? 液晶と紙をそのまま行き来する不思議な新型ペン

ink_pen 2026/9/1
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なぜ画面を汚さないのか? 液晶と紙をそのまま行き来する不思議な新型ペン
きだてたく
きだてたく
きだてたく

1973年京都生まれ、東京都内在住。フリーライター/デザイナー。 小学生の頃、勉強も運動も見た目も普通の子がクラスでちやほやされるにはどうすれば良いかを考え抜いた結果「面白い文房具を持ち込んで自慢すればいい」という結論に辿り着き、そのまま数十年、何一つ変わることなく現在に至る。自称世界一の色物文具コレクション(3000点以上)に囲まれながらニヤニヤと笑って暮らす日々。ウェブサイト「デイリーポータルZ」では火曜担当ライターとして活躍中。

10年ぐらい前のこと、文具業界では「デジアナ文具」というテーマが大注目されていた。

当時は20代のスマホ保有率が90%を超えたあたりだった。まだ経済産業省が「DX推進ガイドライン」を発表する前ではあったが、それでも業務上のペーパーレス化はかなりのスピードで進みつつあった。

つまり当時のアナログ文具には、急速に進むデジタル化の流れにどう向き合うかという課題があり、各社がさまざまな形でデジタルとの接点を模索していたのである。

ただ、当時のデジアナ文具は「スマホでスキャンしやすいノート」とか、「手書きした文字がボタンひとつでデータ化されてスマホに転送されるノートパッド」とか、いま思うと「面白いけど、そんなに仕事を便利にしないのでは……?」というものがほとんどだった。

正直な話、アナログ文具とデジタルは基本的に相性が悪いので、無理に融合させる意味は意外と薄いのである。

その点、令和の最新デジアナ文具であるゼブラ「スタイラス2Way」は、ボールペンとスタイラスが一体化したシンプルきわまりないものだが、「それぐらいがちょうどいい」と思うアイテムだ。

デジアナ文具の「ちょうどいい」着地点

筆者は、iPadでいろいろ検索しながら手書きでメモを取ることをたまにする。その際、無意識のうちに手に持ったボールペンで液晶画面をタップしかけたことが何度かあるのだ。

そのときはハッと気付いてペンを置き、指で改めてタップするのだけど、正直それもなにか面倒くさい。

スタイラス兼用ボールペンというのもいくつか出ているが、軸後端に太いファイバーメッシュのタッチポイントが付いているものがほとんどだ。結局のところ、画面をタップするにはペンの前後を持ち替える手間があった。

ゼブラ/エレコム

スタイラス2Way ボール径0.5mm

1万6500円(オープン価格・税込)

対して、ゼブラ/エレコムが共同開発した「スタイラス2Way」はそういった面倒がなく、普通にメモ書きしていたボールペンのペン先を画面に当てるだけで、そのままタップ操作や画面への手書きが可能である。

液晶でインクが出ない特殊なリフィル

というのも、専用のリフィルは「紙の上ではインクが出て、液晶画面ではインクが出ない」という独自の仕様。つまり持ち替えたりノックを切り替えたりする必要がなく、完全にシームレスに画面と紙を行き来できるのだ。

使う際は、クリップノックを押し下げるとスイッチがオン(LED緑点灯)になり、ペン先が露出する。準備は本当にこれだけだ。あとはBluetoothのペアリングなども必要なく、そのまま紙に書けるし、画面の操作もできる。

↑電源はクリップノックでオン/オフ。
↑軸後部にUSB-Cポートがあり、充電はここで行う。30分のフル充電で最大連続7時間まで使用可能。

さすがに最初は「えっ、大丈夫? 画面にインクついたりしない?」とおっかなびっくりだったが、確かにインクは出ていないし、タップやドラッグ操作も問題ない。

10分ほど使っているとむしろもうペン先で画面を操作するのが普通の感覚になってしまった。

↑ボールペンでそのまま画面に書き込めて、確かにインクも出ていない。

「紙の上ではインクが出て、液晶画面ではインクが出ない」という仕組みはわりとシンプルだ。紙面は細かな繊維の凹凸があるため摩擦が強く、ペン先のボールが回ってインクを引き出すことができる。しかし、iPadの液晶画面(ガラス)は摩擦が小さいためボールが空回りしてインクが出ない。

仕組みはシンプルとはいえ、紙と画面でインクのオン/オフが確実に切り替わるようにするのは地味に難しい。

ゼブラでは、既存のインクとペン先をあらゆる組み合わせで試し、うまく「紙で書けて画面で書けない」リフィルを完成させたそうだ(実際には、ゲルインクと油性用ペン先の組み合わせになっている)。

書き味とiPad専用というハードル

純粋にボールペンとして評価した場合、次の3点が気になった。

  • やはりボールとインクの組み合わせが書き味優先ではない。
  • それゆえに、やや重めのタッチでサラサラ感が薄い。
  • 内側にメカが入っているため、重心がかなり高い。
↑紙への書き味は、正直なところあまりよいとは言えない。紙と画面に両対応するのはそれだけ難しいということか。

ところで、使う上で重要なのが、このペンがアップルのiPad専用である、ということだ。しかも対応機種が意外と少ない。基本的に対応するのは2019年発売以降のモデルで、さらにiPad Airには非対応である。

対応表は公式サイトの最後に掲載されているので、要確認である。

↑軸にはマグネットを内蔵し、iPadの側面にくっ付けておくこともできる。ただし磁気吸着しにくいモデルもあるので、対応表を確認したい。

1万6500円の手間削減は「買い」か?

デジアナ文具というカテゴリにおいては、スタイラス2Wayにできることはとても少ない。単にペン先を出したままでiPadの画面と紙を行き来できるというだけだ。

しかし、実際に使ってみると「デジアナ文具って、これぐらいでよかったんだな」という感覚がとても強い。

手書きをスキャンしてデジタルデータにしやすいとか、手書きしたページにインデックスを付けて検索しやすいとかは、これまで「できないことに不満を感じたことがない」ので、できたところであまり喜びがない。

↑iPadを操作しつつメモを取る作業には、これ以上ないほどに便利。

対して、iPadの操作とメモ書きを同時に行うことは十分にありえるシーンだし、そこでいちいちペンを持ち替える手間が減らせるのはシンプルにありがたく、スマートだと思う。

もちろん1万6500円(オープン価格)という費用と、このちょっとした手間が減ることが釣り合うかどうかは考える余地がありそうなのだが……。

↑思い付く実用シーンが少ないため、正直なところ評価は難しい。でも便利なのも間違いない。

iPad限定・対応機種が少ない・あまり安くない価格という条件のため、ぶっちゃけて言うと「なかなか複雑な製品だな」という感じだ。なにより、「iPadと紙のメモを両対応させたいシーンというのが、そんなにあるかな?」という疑問が大きい。

それでも、あれこれできることを詰め込んだ従来のデジアナ文具よりはスマートだし、なにより実際に使ってみると、なかなかに効率がよくて便利なのだ。

なので、今後は対応機種を増やしたり、iPhoneに対応してくれたりするとうれしい。ついでに、価格が少し下がってくれると個人的にも購入を検討したい。それぐらい気になるペンである。

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